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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

ユーザーの声

アンタッチャブルだった存在が今ではよきアイボウに
―iPhoneと触れ合う毎日

品川博之

私がiPhoneを使い始めたのは2009年9月からである。それまでは音声読み上げ機能付きのフィーチャーフォンを使っていたのだが、高齢者を対象にした携帯電話は、私にとって面白みのないものになっていった。

当時、世間の注目を浴びていたiPhone 3GSだが、全盲ユーザーも使える工夫がされているという話が伝わってきた。どれだけ使えるのか、疑問だらけであったが、好奇心が勝って、今はiPhone5と触れ合っている。

不安だらけで画面を触っていたものの、外出先で世界中のラジオが聴けた時の喜び、ビデオ通話により自分の目の前の情報を相手から教えてもらえる安心感、電子書籍を読めた時の幸せ感などたくさんの感動は、タッチパネルを操作するという恐怖感を払拭していってくれた。光の明暗チェック、色識別、紙幣の識別、デイジー図書の再生などのアプリを利用すれば、たちまち日常生活の支援用具に早変わりだ。

以前から、視覚障害者たちが夢見ている携帯型の装置が二つある。カメラで捉えた文字情報を認識して読み上げてくれるOCRデバイス。周辺情報や目的地までの道案内をしてくれる徒歩ナビゲーション。実はiPhoneはそんな夢の装置になるかもしれない。

目が見えていないと、カメラ機能は必要なさそうに思えるが、実は必須な機能である。郵便物の内容を確認したい時、気軽にポケットから取り出したiPhoneで印刷物を撮影し、OCRアプリで文字認識させることができる。また、宅配便の不在通知が届いていると、QRコードを読み取って再配達の手続きまでできてしまう。目の前の物体の名前を教えてくれるアプリは、想像もしていなかった便利さを実感させてくれる。

一人歩きを助けてくれるアプリもいくつかある。目的地までの距離や方向を確認できて、歩いている時にガイド音声がナビしてくれる。

一人旅に出かけた時などは、周囲を散策した後で無事にホテルまで帰れるかが大きな課題だったが、ゴールを見失うという不安から解放されて、歩くという楽しみを再発見させてくれた。

コミュニケーションを円滑にしてくれるiPhoneだが、これからは人とのやり取りだけではなく、周辺機器との仲介役としても大いに期待している。血圧計やガイガーカウンターなど、一般に流通している製品をアクセシブルにしてくれるからだ。

(しながわひろゆき マッサージ師、44歳、視覚障害(全盲))