音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

ユーザーの声

盲ろう者のスマートフォン活用と今後の展望

九曜弘次郎

1 はじめに

私は全盲難聴の盲ろう者である。目は全く見えず、耳は言葉を聞き取ることが難しい。仕事や日常生活では、点字ディスプレイを接続したパソコンを活用している。

2 iPhoneとの出合い

2012年11月に、iPhone5を購入した。それまではらくらくホンを活用していたが、らくらくホンは点字ディスプレイ出力機能が搭載されていないので、音声を聞くことが難しい私はほとんど使っていなかった。

それに対し、iPhoneにはVoiceOverというスクリーンリーダーが内蔵されている。VoiceOverを利用するとiPhoneに点字ディスプレイを接続することで、画面の表示内容を点字出力することが可能である。また、点字キーボード内蔵の点字ディスプレイを使用すれば、点字による文字入力が可能になる。これを活用することで、盲ろう者でもiPhoneの操作が可能なのである。

3 課題

残念なことに、この点字ディスプレイは、日本語への対応が不十分である。点字はかな文字であるため、それを読みやすくするためのルールが定められている。しかし、iPhoneから出力される点字はそのルールに従っておらず、非常に読みにくい点字が出力されるのである。また、点字ディスプレイ上のキーボードからの文字入力も、漢字が書けないなどの問題がある。さらに、視覚障害者向けに開発されたアプリの中には、独自に音声読み上げを行なっているため、点字ディスプレイに出力されないものがあるという問題がある。昨年末に、財務省が視覚障害者向けにお札識別アプリを開発し、私も早速入手して使用してみたが、残念ながら、独自に音声読み上げを行なっているため、識別結果を点字ディスプレイに出力できなかった。このようにアプリの側でも対応が必要で、開発関係者の方々には盲ろう者の存在を知っていただきたいと感じた次第である。

4 展望

現時点で、盲ろう者がスマートフォンを活用するには課題も多い。しかし海外では、iPhoneと点字ディスプレイを接続して、健常者がiPhoneで入力した文字を点字ディスプレイに出力したり、逆に点字ディスプレイで入力した文字をiPhoneの画面に表示することによって、フェイス・トゥ・フェイスの会話を行うアプリが開発されている。このように、スマートフォンは盲ろう者の強力なコミュニケーションツールになりうる可能性を秘めている。今後の改良に期待しているところである。

(くようこうじろう 富山盲ろう者友の会)