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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

ユーザーの声

血糖値コントロールとスマートフォン

西田えみ子

スマートフォンを使い始めた頃は、インターネットショッピングくらいしか便利さを感じなかったが「スマートeSMBG」というアプリに出合い、手放せない存在となった。

私は1型糖尿病をもって約40年になる。村上龍の『心はあなたのもとに』1)では、1型糖尿病について「インスリンを体内で作れないので、食後や就寝前に注射するか、インスリンポンプと呼ばれる注入器をつけて血糖値をコントロールしなければならない。」と説明されているが、まさにこのとおりだ。インスリンを作るβ細胞が無くなる病気で、いわゆる生活習慣病ではないが、365日、さまざまな要因に合わせて血糖値をコントロールする。

インスリンは効き過ぎると低血糖になり、血糖値を上げる要因は食事、特に炭水化物含量が影響する。また、皮下吸収の状態、アドレナリンなどの血糖値を上げるホルモンの影響、気温、運動量など多岐に渡る。調整のための数値は個人で異なり、主治医に指示をもらうため、日々の生活は受診の度に報告する。スマホに「スマートeSMBG」を入れて登録すれば、血糖測定の結果がBluetoothで転送される。食事関連の項目はもちろん、カニューレの交換、シックデイ(発熱など)、月経などをボタン1つで記録できる。データはeSMBGクラウドで共有され、閲覧用のIDも登録できる。主治医への報告はIDを登録して見てもらうか、結果をプリントアウトすればよいのでとても簡便だ。

たとえば今日、起床時の血糖値は300mg/dlで、カニューレを交換して追加ボーラスを打ち、2時間後に60まで下がり過ぎたので捕食をとり、2時間後も58だったので炭水化物34グラムの総菜パンを食べて休み、3時間後に115まで上がって意識がハッキリしてきた…そんな生活を記憶できるわけもなく、これはeSMBGを確認しながら書いている。

今の治療環境は患者の声が反映された結果であり、生活を医師へ報告することは更なる改善につながる。在宅透析や痛みの管理など、他の病気でも日々の数値や薬剤を記録している人がいる。自分で管理することが記録の目的だが、主治医とのコミュニケーションにも欠かせないものとなっている。ただし体調の悪い時はペンをもつことさえ難しい。横になったままスマホで、ボタンや音声で入力できたら楽になるだろう。治らない病気をもちながらの生活が少しでも楽になるよう、療養の記録用アプリの開発や簡単に入力できる方法の開発を望む。

(にしだえみこ 障害者の生活保障を要求する連絡会議事務局長)


1)村上龍『心はあなたのもとに』ISBN978-4-16-330000-9