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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年5月号

列島縦断ネットワーキング【兵庫】

商店街を活気づかせたい!マブイ六甲の取り組み

佐々木勝也

マブイ六甲との出合い

2010年11月、学校の介護実習先が障がい者施設の「マブイ六甲」でした。これまで障がいのある人たちと接することがなかった私は、初めて身近に知的障がい者の利用者さんと触れ合い、なんて純粋でピュアな人たちなんだろうと感じました。それまで私は、どちらかというと、企業戦士として最前線で働いてきました。人間関係の疲れもあり仕事を辞め、次に選択したのが福祉業界でした。

「福祉」といえば老人介護が頭に浮かび、当初は、高齢者介護に関わって役立ちたいと思っていました。しかし、マブイ六甲で10日間の実習を行い、利用者さんと触れ合い過ごす中で、自分の価値観は大きく変化していきました。そして、この人たちの役に立ちたいと思ったのですが、当時、職員募集はありませんでした。

しかし、2011年1月の終わりにマブイ六甲から電話があり、職員募集があるので面接を受けてみませんか?と言われ、2か月の研修期間を経て、4月から本採用となりました。

当時、マブイ六甲で行なっていた仕事は、マンション清掃、ポスティング、新聞の折り込み作業、パンの配達、クリーニング集配業務、エコポット(授産品)の販売、年間5回の出店行事の参加などでした。私は、マンションの清掃やポスティング、折り込み業務を中心とする支援活動の担当でした。

マンションの清掃は、共有部分や玄関周りに水をまいて拭き掃除をする。ポスティングは決められた地域にリビングの新聞を入れていく。施設外で仕事をすることで社会性が培われると当時の施設長は考えていました。共感する部分はたくさんありましたが、正直なところ、当時していた支援とのギャップを感じていました。

工賃実績と出勤率

2010年度から13年度の実績は次のとおりです。

2010年度 利用者17人、年間平均工賃17,005円、利用者出勤率88.5%

2011年度 利用者18人、年間平均工賃17,992円、利用者出勤率92.6%

2012年度 利用者21人、年間平均工賃19,460円、利用者出勤率98.2%

2013年度 利用者24人、年間平均工賃28,167円、利用者出勤率98.6%

働く意識を変えた年間カレンダー

2010年から2011年にかけては、仕事量はほとんど増えておらず、利用者さんの出勤率も90%弱でした。そこで、2011年12月にマブイ六甲の年間カレンダーを作成して、月ごとに利用者さんの出勤希望日を出してもらうことにしました。自由の選択と仕事の役割の両面を利用者さんたちが考えて選択できるような環境づくりをしました。

2012年は、まず利用者さん一人ひとりに、メンバーが一人でも仕事を休むと仕事がうまく進まないこと、仕事に対して自分が必要とされていること、全員で楽しく仕事をこなしていくことを目標にして、仕事に対する意欲と責任を持って、一日でも多く出勤してもらうことを考えていきました。その結果、利用者さんたちの仕事に対する態度が変わっていき、2012年度は98%の出勤率向上につながり、売り上げも伸びて、工賃も増えました。

クリーニング店のオープン

障がいのある人の地域活動拠点をつくりたいと、2011年の10月に、灘中央筋商店街にクリーニング店「クリナーズ・マブイ六甲」をオープンしました。このお店は、兵庫県「商店街の空き店舗を障がい者支援施設の出張所(分場)として活用するモデル事業」に選ばれました。クリーニング店のオープンにより、月曜日から日曜日まで利用者さんの仕事の希望受け入れが可能になりました。

業務内容は、利用者さんのできることに応じて、取次の業務や集配作業などを分担しています。お客様へのサービスでは、障がいのある方や70歳以上の方がいる世帯への集配無料サービスや、それ以外の事務所・会社でも2000円以上で集配無料としています。

100円均一ショップ「まぶ家」のオープン

2013年度は、マブイ六甲の改革の年でした。4月には、利用者さんの仕事に対する得手不得手を考慮し、仕事の内容ごとに班を分け、より利用者さんが働きやすい環境を考えました。

2011年10月にオープンしたクリーニング店は、実際に業務をはじめると、商売の難しさに悩まされました。利用者さんができる仕事は何だろうか、800点以上あるクリーニングの種類に対応ができない、顧客が思うようにできない、お客様が少なければ利用者さんの仕事が少ない等、頭を悩ませながら、対応してきました。

具体的には、週2回の限定イベントや年2回のセールの充実、地域の人たちに自分たちでチラシのポスティング、あいさつの強化、毎日の商品対応へのスキルアップなど、お客様に来ていただくための話し合いを進めてきました。

そんな時に、クリーニング店の向かいの店舗が不況の煽りを受けて撤退しました。障がい者が働く姿をもっと地域の人たちに知ってもらいたいという思いもあり、そこにマブイ六甲の2号店をオープンすることにしました。何を扱う店にするのか、いろいろ考えた末に、100円均一ショップを出店しようということになりました。

クリーニング店を展開している中央筋商店街は、メイン商店街である水道筋商店街の縦筋に位置する商店街ですが、メイン通りに比べ人通りが少なく、寂しい感じの商店街です。文具店や電気屋さん、雑貨屋さんはメイン商店街に足を運ばないと買い物ができずに不便でした。また、2011年10月からクリーニング店を開いていたこともあり、次の展開もしやすいということがありました。

〈100円均一ショップのメリット〉

1.利用者さんにできることが多い:均一料金なのでワンレジで済む。発注した在庫の管理(棚卸し・運搬)。商品の陳列。接客業務等

2.障がい者に対する地域の理解度が高い:クリーニング店をオープンしたことで、障がいのある人への理解度が高くなり、地域での見守り・協力が強化できている。ポスティング等で常に近所と交流があり、住民の理解が得やすい。

3.100円ショップへの需要が高い:シャッターを開ける店が一軒でも多くあれば商店街にも喜んでもらえる。

そして、2013年11月1日のオープンを迎えました。現在は、オープンから5か月が過ぎ、仕事にも慣れてきました。利用者さんたちは、商品の陳列のほか、お店のことを知ってもらうために商店街に出て声掛けやティッシュ配りなどを行なっています。これも利用者さんたちの大事な仕事です。おかげで商店街や地域の人たちに顔を知ってもらういい機会にもなっています。

お互いに尊重し協力し合う

私は、支援していることを通して利用者さんと上下の関係になってしまってはいけないと考えています。職員も利用者さんも共に協力し合い、お互いに尊重しながら目標に向かって進んでいくことが重要だと思っています。

自分のしたいことが必ずしも他の人がしたいことであるとは限りません。ですから、お互いに尊重して話し合っていく中で理解をして、納得し、行動に変化が出てくるのだと思います。時間をかけて話し合い、信頼を深めていくことが大事だと思い取り組んでいます。地域と共に育っていく中で自分たちのできることを確立していき、働く楽しみと地域に役立てる喜びを実感して、地域の一部として生きていける居場所を作ることを目指して事業所展開をしていきたいと思います。

今後の展開

クリーニング店は今年で3年目を迎えました。売り上げも徐々に伸びて、利用者さんの仕事も充実してきています。また、100円均一ショップ「まぶ家」も順調に営業できています。今後は、この2店舗の充実を図り、商店街を中心にして、さらなる飛躍を利用者さんと一緒に考えていくつもりです。有言実行の信念を持ちこれからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。

(ささきかつや 特定非営利活動法人 マブイ六甲代表、理事長)