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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年6月号

障害者権利条約「言葉」考

「障害者を代表する団体」

藤井克徳

ここでの「障害者を代表する団体」とは、一般論としての団体の規模や機能を言っているのではない。障害者の権利に関する条約(以下、権利条約)の制定過程や批准後の実施に当たり、障害当事者の参加の実質度を高めていくための方法や形態の在り方との関係でとらえるべきである。「代表する団体」には、個々の障害当事者の意思が束ねられているという意味が込められ、団体とすることで決定過程での存在感や客観性が高められることが期待できよう。

権利条約の制定過程で有名になった「Nothing About Us Without Us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)」は、国際障害同盟(IDA)のメンバーを中心とする障害関連NGOの代表が繰り返し唱えたものである。

国際条約の制定は、政府間交渉のみで進められるのが通常であるが、権利条約については節々でNGOの代表が議論に参加した。むろん形の上だけではなく、内容面の成果につながったことは言うまでもない。

権利条約に関連しての「障害者を代表する団体」は、この条約制定過程における障害関連NGOの存在と重ねてイメージすべきであろう。

権利条約の中での具体的な記述がどうなっているかであるが、直接的には3か所で登場する。

その代表格は、第4条(一般的義務)3項である。締約国に対して、政策の作成や実施はもちろんのこと、障害者に関する問題の意思決定過程で、障害者を代表する団体と緊密に連携かつ積極的に関与すべきとしている。

第33条(国内における実施及び監視)3項には、「市民社会(特に、障害者及び障害者を代表する団体)は、監視の過程に十分に関与し、かつ、参加する。」が、さらには、第35条(締約国による報告)4項には、「…中略…締約国は、委員会に対する報告を作成するに当たり、公開され、かつ、透明性のある過程において作成することを検討し、及び第4条3の規定に十分な考慮を払うよう要請される。」とある。要するに、障害分野全般の意思決定過程での当事者参加を強調しているのである。

なお、日本での権利条約の批准要件を満たすための基幹的な審議体となった内閣府所管の「障がい者制度改革推進会議」(2012年5月より障害者政策委員会に継承)は、構成員のうち過半数が障害当事者もしくは家族の団体の代表で占められた。

また、この考え方は日常的にも問われることになる。障害者が属している団体や法人、事業体にあって丁寧な個に対する意思決定支援や意思疎通支援(合理的配慮の視点とも関連しながら)と合わせて追及されなければならない。さらには、「障害者を代表する団体」を尊重する一方で、団体に属していない障害者の意向をも配慮する視点も怠ってはならない。

(ふじいかつのり 日本障害フォーラム幹事会議長)