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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年6月号

列島縦断ネットワーキング【福島】

『明日の夢をカバンにつめて』
ふたば製作所「つながりのかばん28」の取り組み

富永美保

「ふたば製作所」を立ち上げた経緯

JDF被災地障がい者支援センターふくしまでは、2011年10月から被災障がい者の交流を目的に「交流サロンしんせい」をオープンさせました。2012年1月からは、福島県障がい者自立支援拠点整備事業の委託を受け、引き続き、被災障がい者の交流の場としてイベントや茶話会などのサロン活動を行なってきました。

東日本大震災後から2年が経った頃から、交流サロンの利用者から「就労につながるような活動に取り組みたい」との強い要望があり、2013年4月にふたば製作所を立ち上げました。ふたば製作所は、就労の意欲のある方と一緒に使用済み封筒でかばん等を作っています。

震災から3年後の現在では、月曜日、水曜日、金曜日は就労を中心とする「ふたば製作所」、火曜日、木曜日は交流を中心とした「サロン活動」として、双葉郡から郡山市に避難している障がい者等30人が利用しています。

【双葉郡とは】

双葉郡(ふたばぐん)は、福島県浜通りの郡。人口67,398人、面積865.12平方キロメートル、人口密度77.9人/平方キロメートル。(2012年12月1日、推計人口) 。 広野町(ひろのまち) 楢葉町(ならはまち) 富岡町(とみおかまち) 川内村(かわうちむら) 大熊町(おおくままち) 双葉町(ふたばまち) 浪江町(なみえまち) 葛尾村(かつらおむら)の6町2村。東日本大震災に誘発された福島第一原子力発電所事故に伴い、大半の地域が警戒区域・計画的避難区域に指定されている。(ウィキペディアより)

「つながりのかばん28」の由来

かばんに描かれた「28」。この数字の意味は「2ふた、8ば(双葉)」を表しています。ふるさと双葉郡への想いを「28」という数字に込めました。これまで支えあっていた地域のつながりは、避難生活により途絶えがちになっていますが、28という数字を使ったかばんを作りながら、双葉の一員であることを忘れずに頑張っています。

かばん作りの作業

ふたば製作所の作る「つながりのかばん28」は、使用済みの封筒から作られています。商品開発にあたり、私たちは捨てられる「資源」を大切にしたいとの想いがあったからです。また、資源のリサイクルには分別などいくつもの作業工程があり、多様な障がい者が関わる仕事づくりには適しているということもありました。

作業工程は大まかに10の工程に分かれています。1.使用済みの封筒から個人情報、切手、郵便番号の枠を切り取る作業、2.型紙に合わせて紙をカットする作業、3.張り合わせる作業、4.かばんにミシンをかける作業、5.かばんにアイロンでロウソクを塗る作業、6.持ち手の紐を金具で付ける作業、7.おまけのおみくじを作る作業、8.パッケージする作業、9.インターネットの注文を管理する作業、10.売上の集計をする作業、このすべての工程をふたば製作所の仲間が担当しています。

ふたば製作所が立ち上がった当時は、月産100枚しかできなかったつながりのかばんは、今では月産400枚のペースで生産・販売ができるようになりました。みなさん、自分の担当作業に工夫を凝らし、誇りを持って作業にあたっています。

かばん作りに込めた思い

『明日の夢をカバンにつめて』

住み慣れたふるさとを離れて、2年が経ちました。

帰れるのか、帰れないのか・・

この先、どこでどんな風に暮らしていくのだろう・・

いつもそんな事ばかりを考えてました。

だけど。

私たちもそろそろ明日の夢を持ってみようと思います。

双葉のみんなで力を合わせてがんばると決めました。

ふたば製作所は使用済みの封筒でカバンを作ります。

そのカバンに明日の夢をいっぱい詰めます。

未来はきっと笑顔でありますように!

ふたば製作所一同

「つながりのかばん」でつながる

ふたば製作所は、「つながりのかばん」を通して全国のたくさんの方々とつながることができました。

地域のボランティアさんが使用済みの封筒やロウソクを回収してくださいます。作業、販売に協力してくださる方もいます。今では、全国からも使用済みの封筒やロウソクが届くようになりました。かばんの販売や活動を伝えてくださる方もいらっしゃいます。何よりもたくさんの方が「つながりのかばん」を購入して応援してくださいます。このように、たくさんのみなさんの温かいお気持ちに支えられて、ふたば製作所は頑張っています。

【インターネットショップ】

「つながりのかばん28」インターネットショップ

「つながりのかばん28」で検索してください。

http://futaba28.shop-pro.jp/?mode=cate&cbid=1569914&csid=0

【店舗販売】

JDF被災地障がい者支援センターふくしま 交流サロンしんせい

〒963-8022 郡山市西の内1丁目25―2

TEL/FAX 024―983―8138

・マスキングテープラインが入ったものと無地の2種類(約30×34センチ)

・マチ有りマチ無しどちらでも。頒価1000円、送料一律300円

避難の続く福祉事業所の現状と課題

大震災・原発事故以後、避難先で再開、もしくは立ち上げた福祉事業所は8か所あります。この8つの事業所は、障がい者が関わる仕事を得るために日々苦労をしてきました。バラバラになった仲間を遠方の仮設や借り上げ住宅まで送迎に行き、作業時間は短縮されました。作業スペースも極端に小さくなりました。

慣れない土地では、これまでと同等の工賃を稼ぐための仕事を得ることは容易ではありません。何よりも将来的に元の村や町に戻るのか、戻らないのかの選択もできない状況が続く中では、大きく設備投資をして新しい仕事をつくるわけにもいきません。このような背景の中、JDF被災地障がい者支援センターふくしまが事務局を務め、8つの福祉事業所が何とか工賃を工面するために協働で一つの商品を作る体制がはじまりました。

現在では、つながりのかばん以外にも2商品を作り上げるにまでに至っています。しかし、この連携した仕事づくりの体制はまだまだ脆弱なものです。帰村・帰町、帰宅困難による移住などによりこれから作業の過渡期を迎えることが予想され、8つの福祉事業所は、この仕事の継続に不安を抱えながら避難生活を送っています。

避難の続く福祉事業所の今後の展開

大震災・原発事故以後、私たちは一事業所だけでは解決できない大きな課題も連携することで乗り越えてきました。そこで生まれたいくつかの福祉事業所が協同で取り組む仕事づくりは、福島ならではのスタイルなのかもしれません。これは、私たちが誇りを持って福島で暮らしていくためのプロジェクトです。大震災・原発事故の影響を色濃く受ける8つの福祉事業所が、これからどのように環境が変化しようとも(帰村、帰町、帰宅困難など)、安定した仕事が持てるよう、私たちは力を合わせてより強い体制づくりを頑張っています。そして、その事務局を担いながら、JDF被災地障がい者支援センターふくしまも福島の復興の一助を担っていきたいと思います。

(とみながみほ JDF被災地障がい者支援センターふくしま 交流サロンしんせい)