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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年6月号

ほんの森

糸賀一雄生誕100年記念論文集
生きることが光になる

糸賀一雄生誕100年記念事業実行委員会研究事業部会 編

評者 高谷清

この本は、滋賀県で「近江学園」(1946年。戦災孤児の施設、のちに知的障害児施設)、「びわこ学園」(1963年。重症心身障害児施設)などを創設し、「この子らを世の光に」の言葉で有名な糸賀一雄の「生誕100年」を記念して、2014年に「滋賀県実行委員会」で取り組まれた「記念事業」の一環として、出版された「論文集」である。

糸賀は、1914年、鳥取市で生誕し、第二次世界大戦後、親を失った戦災孤児が街をうろつきゴミ箱をあさる姿に、放置できなく「近江学園」を創設した。その子らを通して人間の本質を考え、多くの文章を書いた。単行本としては、『この子らを世の光に』(柏樹社、1965)、『福祉の思想』(NHKブックス、1968)、『福祉の道行』(中川書店、2013)がある。

ここに収められている論文は、糸賀一雄の業績を顕彰する内容ではなく、今日の社会でのさまざまな問題を、糸賀の思想を活(い)かしながら考察、発展させた内容である。

本書には、その目的で論文募集がなされて選ばれた4編の論文、それと今日までに糸賀に関する論文を書かれた人に依頼し、執筆された13編の論文、さらに編集などに携わった、「糸賀一雄生誕100年記念事業・研究事業部」部会員の小論7編も収録されている。今日の日本で存在しているさまざまな問題についての考察であり、これからの日本の建設、各分野での取り組みに役立つ内容になっている。

応募入選論文は「憲法学からみた糸賀一雄の現代的意義」(山崎将文)、「横(横軸)の発達に込められた願いを未来へ読み解く」(垂髪あかり)、「糸賀一雄の福祉思想の形成と近江学園保母の生活と実践」(黒川真友)、「時代と施設に翻弄されたIさんの人生から見る糸賀思想の先駆的実践と福祉のこころ」(川本幸一)である。

依頼論文のテーマはさまざまであるが、発達保障論、重症心身障害児のこと、糸賀思想の今日的意義、ケアの問題、生活と教育に関すること、共感に関することなどである。

また最後には、今日までに書かれた糸賀一雄に関する103編の「文献リスト」が掲載されており役立つと思われる。350ページ、頒価1500円。

購入は下記に注文をお願いします。部数に限りがありますので、無くなりましたらご容赦願います。

(たかやきよし びわこ学園医療福祉センター草津、医師)

申し込み先:〒520-3111 滋賀県湖南市東寺四丁目1-1 糸賀一雄記念財団
電話:0748-77-0357
FAX:0748-77-0358
メール:itoga@itogazaidan.jp