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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年7月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●片手でトラックボールマウス、他●

提案者:鎮西雄太 イラスト:はんだみちこ

鎮西雄太(ちんぜいゆうた)さん

2006年、高校1年生の時にプールの事故で第4、第5頸椎を損傷し、車いすでの生活を始める。受傷後、復学に向けいくつかの病院に入院して1年半の間リハビリを行う。そして学校側の積極的な受け入れ態勢や市のサポートもあり、2008年に高専に復学する。2013年、5年間の課程を修了し高専を卒業。現在は一般企業に勤務している。


片手でトラックボールマウス

いまやパソコンは障害者に限らず生活や仕事の必需品になりつつあります。しかし、自由に指を動かせない私にとって、通常のマウス操作を片手で行うのは難しいです。私の場合、片手でマウスを動かないように押さえ、もう片方の手でクリックするという動作になるので、非常に疲れやすいものでした。しかしトラックボールマウスは、本体の上面に取り付けられたボールを回転させてポインタを操作するので、クリック時にポインタが動いてしまうことがなく、片手でもスムーズに操作できます。また、トラックボールマウスは、ボタンがたくさん付いている製品も多いので、操作しにくいドラッグの操作などをボタンに割り当てることができる点でも便利で使いやすいです。私は職場でも自宅でもトラックボールマウスを愛用し、生活になくてはならないものになりました。


ファスナーにはループ

私の手は、手首の屈曲ができるので指が動いているように見えますが、実際には、指の筋肉が動かないので握力は全くなく、生活するうえで基本的な動作である「つまむ」という動作ができません。でも、この「つまむ」という動作は日常的に多くの場面にあります。

代表的なものを一つ挙げると、カバンやズボンなどのファスナーです。受傷して間もない頃、カバンのファスナーの開け閉めに苦戦していると、ループをつけると良いというアドバイスをいただきました。ループを付けると、指を引っ掛けて引っ張るだけなので「つまむ」動作がなくなり、それまで頭を悩ませていたファスナーの開け閉めの問題を解決することができました。

ループは他にもさまざまなことに活用できます。リモコンなどにはループを通す穴がありませんが、ループを作ってテープなどで固定することで、物を落としてしまうことも減り、日々の生活がよりストレスのないものになりました。


ズボンやパンツのリフォーム

私は排泄の際には、カテーテルを使用して導尿を行います。当然ながら、導尿を行うにはズボンとパンツを下ろすのですが、私の障害では、ベッド上ではなんとか可能でも、車いす上ではほぼ不可能な動作でした。そこで理学療法士さん指導のもと、下ろさなくても導尿できるズボンとパンツを作りました。

リフォームの仕方を簡単に紹介すると、ズボンの前面におへそから股の方へ適度な長さに切り込みを入れ、左右に切った部分にマジックテープを縫い付けます。マジックテープの縫い付け部に布を足すことによりウエストを縮めてしまうこともなく、違和感の少ないクオリティの高いものが出来上がります。導尿時はマジックテープを外すだけで、ズボンやパンツを下ろすことがなくなりスムーズに行えるようになりました。また、このリフォームにより、マジックテープを外せば口が大きく広がるので、着脱も楽になりました。

今では、ジャージやスウェットなどの部屋着はすべてこのリフォームをしています。