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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年9月号

1000字提言

ハンドバイク&自転車 始めましょう!

巴雅人

最近「ハンドバイク」を楽しんでいます。そもそものきっかけは自分の肥満対策で、毎年きつくなるウエストをなんとかしなければと、車椅子でランニングを行なっていました。ちょうどその頃にハンドバイクを試す機会があり、すぐにその魅力を感じることができました。

私が使っているのは、アダプタータイプといって、自前の車椅子に装置を付けて、自転車のようなペダルを手で回すもので、車椅子を駆動するよりは2~4倍位のスピードで進むことができ、同じ距離移動でも車椅子より労力を使いません。また、よりスピードを出せる一体型もあり、こちらでの競技はパラリンピック種目にもなっています。

ハンドバイクの魅力は何か、主にアダプタータイプの話になりますが、少し考えてみたいと思います。

最初にハード面では、16~20インチ位の駆動と操舵を担う前輪部を車椅子前方に取り付け、キャスターを浮かせて走行します。そのため、進行方向に対する路面の傾き(横断勾配)や細かな凸凹の影響を受けず、直進性が確保されスピードを出すことができ、その結果、行動範囲が広がります。また、前輪部は簡単に着脱でき、通常の車椅子としても使用できるので、店舗での買い物や食事、トイレの使用も問題がありません。

次にその運動効果ですが、自転車のクランクペダルと異なり、左右のペダルが同じ方向に取り付けてあるので、左右の腕は同じ運動になります。そのため姿勢の矯正や体幹の強化に役立ちます。また、車輪の直接駆動ではなく、クランク・ギア・フリーホイールを介して運動するので、走行効率が良く、車椅子駆動では避けられない車輪の回転に合わせた腕や手首の運動を回避し、自分のペースに合わせることができるのでけがの予防にもなります。

最後にはメンタル面ですが、車椅子で走っている時は、声をかけてくる人はほとんどいなかったのですが、このハンドバイクで走っていると、いろんな方に声をかけられます。車椅子使用者への定番である「頑張って!」よりは「カッコイイ!」のほうが多いのがうれしいですし、車椅子ではない“自転車”ならではのコミュニケーションの広がりもあり、一緒にサイクリングすることもできます。

ハンドバイク&自転車でのスピード感は、車やバイクならついつい通過してしまいそうなところでも、ふらりと気軽に止まって立ち寄ることができ、流れる景色や街並みもはっきりと目に映り、同じ行程でも格段に得られる情報量が多くなります。さらには、風や季節、町や生活の匂いも感じ取れます。これがハンドバイク&自転車の魅力かもしれません。

ポタリングには最適の季節をこれから迎えます。ペダルをプッシュして外へ出かけてみませんか。


【プロフィール】

ともえまさと。1954年生まれ。福祉用具関係の(有)車座社長。20歳で交通事故により脊髄損傷となり、以来、車いすを味方にする。チェアスキー普及や地域活性化のボランティアや、バリアフリー啓蒙のため講演なども行なっている。