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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年4月号

期待と夢

視覚障害者のIT技術の向上と展望(夢)

本田武

今年2015年は、Windows95が世に出てパソコンマニアでなくてもコンピュータに触れる機会が増えてからちょうど20年になる。

通信も電話回線からADSL、そして光になり、デスクトップパソコンからノートパソコン、ネットブックパソコン、タブレットパソコンへと進化してきた。それに伴い、1メガバイトのフロッピーディスクから大容量のハードディスクやブルーレイ、クラウドサービスなどに進化し続けている。

携帯電話も3時間くらいしか使えなかったショルダーフォンや自動車電話からスマートフォンへと進化し、スマートフォンさえあれば、ほとんどのことをパソコンを開かずに情報を得られる時代になってきた。

それ以前は、パソコン好きの方やエンジニアでしか使っていなかったコンピュータも画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)の進化により、視覚障害者でも容易にパソコンに触れ、自分で文章を作成して印刷するというパソコンでの自己表現ができてきたと感じている。

私がパソコンをやろうと思ったのは、ホームページを自分の力で作ってみたいと思い、何も分からずWindows98を購入したのが初めだった。

最初はパソコンに詳しい友人にアドバイスを受けながら、独学でHTML言語を覚えて、メモ帳(エディター)に手打ちでタグを書いていたことが思い出される。

今では、街で販売されている普通のスマートフォンやタブレットのアクセシビリティ機能を使って、電車情報など下調べしたり、ナビを使って単独で初めてのお店に行ったり、カフェで原稿を書いたり、映画を観たり、健常者と同じく街(社会)に出て、作業や調べ物、買い物などを行なっている。

今では、WindowsからMacintoshまで操作をしたり、パソコンの改造を自分で行なったり、オペレーティングシステム(OS)を自分でインストールしたりしている。

ハード面でも、最初は購入してきて箱から出してもスクリーンリーダーをインストールするまでサポートを必要としていたが、今では一部のメーカーでは購入してきて箱から出して、自力でもスクリーンリーダーの設定を自力で行えるうれしい時代になったといえる。

スマートフォンでも、一部の機種では音声ガイドを自力で設定できるものも出てきて、操作したり、カスタマイズしたりして楽しんでいる。

ともすれば、資料作成や動画、音楽の編集などをしない限り、自宅ではパソコンを開いている時間が減り、スマートフォンでブログの更新や電車の乗り換え情報、ネットでの買い物や銀行での取引、GPSでの位置確認、ショップでの電子マネーやクレジット決済、ポイント取得、割引券入手、なども行えるようになり、前記のように、単独で街に出てスマートフォンやタブレットをフルに使っている。

今では地元の障害者向けパソコンボランティアに所属して、各障害者のパソコンやタブレットのサポートやボランティアの育成を行うまでになった。

周りに目を転じてみると、いろいろな家電製品や街中の装置も音声化が進んでいる。

人の気持ちも視覚障害者に理解をみせ、欧米並みまでは遠いが、一定の理解を示してきたと思う。

さて、10年、20年後は、ITやマンパワーはどう変わっているだろうか。視覚障害者にとってはITの進歩だけでなく、日本人の考え方の革命が必要不可欠だと思う。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、2027年にはリニアモーターカーが走り、都心の大開発で渋谷なども今の街並みは残っていないだろう。

人にもICチップが埋め込まれ、本人確認や鍵の施錠解錠ができ、今よりも管理型の社会になると思われる。すでに一部の地域ではICチップを手に埋め込んで、本人確認や建物の出入りの管理がなされている。とても興味を持つ。

今後の展望として、腕時計式端末やペンダント式端末などウェアブル端末の普及により、スマホと連携した安全な視覚障害者のナビゲーションが発達することを希望したい。

また、何らかの安全対策は必要だが、自動車の自動運転でドライブを行いたいと思う。

私が理事を務める認定NPO法人「ことばの道案内」では、Webサイトでのウォーキングナビという、最寄り駅から施設までの案内を言葉で紹介するサイトや言葉で案内する駅情報を運用している。

法人では、ICタグを埋め込んだ点字ブロックと携帯端末での誘導システムの研究や、高齢者・他の障害者でも使える画像や動画を含めた道案内を研究中である。

また今後は、スマホアプリやウェアブル端末などとビーコンを使った誘導システムにも着手できるようになりたいと思う。その研究が生かされ、多くの方が家から一歩外に出られ、社会参加できることを願って、今回の私の話を終わりにする。この原稿の下書きもタブレットで行なったことが自信につながっている。

(ほんだたけし 認定NPO法人「ことばの道案内」理事、NPO法人「練馬ぱそぼらん」)


【参考URL】

●認定NPO法人ことばの道案内
http://www.kotonavi.jp/

●NPO法人練馬ぱそぼらん
http://www.pasovolun.or.jp/