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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

患者・家族の立場から

新たな制度に望むこと

宮脇雅子

今回の改正により小児慢性特定疾病の対象が拡大され、より多くの方々が医療費助成を受けられるようになったことは、大変よかったと思う。しかし、いくつかの課題も残されていると思われる。

一つは、認定を受けるために必要な申請手続きを今後、もう少し簡略化できないかという点である。指定医を受診し診断書を交付してもらうには、そのたびに文書料がかかり、その後、必要書類をそろえて改めて役所に申請しなくてはならない。小さい子どもを抱えながら仕事を持つ親も増えており、その作業はとても負担になるため、小慢の申請をせずに各自治体による子ども医療費助成制度を使っている人も多い。指定医の診断を受けた時点で登録できるような仕組みがあればよいと思う。また指定医療機関が遠方にあるため、病気の子どもを連れて電車やバスを乗り継いで受診するのは、時間的にも経済的にも大変という声も聞かれる。

もう一つの問題は、小慢は対象年齢が決められており、それを過ぎると医療費助成を受けられなくなってしまう点である。

若年性特発性関節炎(JIA)は、その病態から全身型と関節型に大きく分けられる。全身型JIAについては指定難病として認定され、医療費助成制度の対象となったが、関節型JIAについては、指定難病の条件を満たしているものの、いまだ認定されておらず、小慢の医療費助成対象の20歳を過ぎると高額な医療費がかかってしまう。

最近は、生物学的製剤による治療を行うケースが多く、その治療により患児のQOLは著しく向上した。以前では関節の変形や拘縮がみられたり、車いすや杖などの補助器具を使用しながら日常生活を送る患児も多くみられたが、近年では、見た目では疾病をもつことが分からないほどになっている。しかし、それは薬によって維持されているものであり、治療を受けなければ学業や就労に支障を来し、社会生活を送る上での不安が大きくなってしまう。生物学的製剤を使用するには高額な治療費がかかり、その支払いが困難なために治療を中断してしまい、その結果、病状が悪化して日常生活が送れなくなってしまうケースも出ている。

小児期に発症した子どもも、やがて大人になっていくが、大人になったからといって病気が治るわけではなく、引き続き治療が必要である。成人へと移行しても安心して治療を受け、社会生活が送れるような切れ目のない制度であり、患児の生きる力、自立する力につながるものであってほしいと思う。

(みやわきまさこ 若年性特発性関節炎の子どもをもつ親の会)