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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

患者・家族の立場から

これからの制度に期待

朱之宇

子どもの頃から慢性的な疾病にかかり、学校生活での教育や社会性の涵養(かんよう)に遅れが見られ、自立を阻害されている方は少なくありません。私もその一人であり、長期入院により学校教育も受けられないまま大人になり、社会に出て6年目、さまざまな困難と向き合いながら、日々乗り越えています。

私は、14歳の時に小児ガンの一つである「悪性リンパ腫」を発症し、長期にわたる治療を行いました。一度は寛解に入るも、16歳で再発、化学療法に加え、放射線治療、最終的に造血幹細胞移植を行い、退院したのは18歳になる頃でした。

入院中は、小児慢性特定疾患(以下、小慢)制度を利用していたため、金銭的な面では、負担なく治療に専念することができましたが、小慢の制度が20歳までしか利用できないことを知り、成人後の不安もありました。

退院後も定期通院が必要で、化学療法の副作用により、免疫力が低下していたため、点滴による治療、採血、画像検査など、1度の通院費が万単位で請求され、金銭面での負担が一気に重くのしかかりました。成人してからも、通院治療は継続していたため、当時はアルバイトをしながら、通院治療を行なっていました。小慢の制度が利用できなくなってから、病院に行くのを止めてしまおうとも考えていました。

私のように、小慢の制度が利用できなくなり、成人後も治療を継続されている方はたくさんいます。学校教育が受けられないまま大人になり、身体面や金銭面以外にも負担が多くなります。私の場合は成人してから、高校を卒業し、就職をして、働きながら、介護福祉士の国家資格を取得しました。進学も考えましたが、通院費に加え学費を払うのが困難だったため、働く道を選びました。通院治療が落ち着いて、金銭的な負担が軽減できたら、いつか進学したいと考えています。

小慢の病気は成人してからも付き合っていかなければなりません。成人後も治療を有する状態であれば、医療費の割引支援や、入院中に学校教育が受けられなかった人への資格取得支援などの制度があれば、治療をしながら少しでも夢や希望を持って、普通の生活が送れる環境になっていくと思います。また、私のようにさまざまな負担を抱えながら、治療を継続している方々の困難が一人でも軽減できる制度になってほしいと願います。

(しゅしう 若年性がん患者団体「STAND UP!!」)