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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

患者・家族の立場から

1型糖尿病を抱えながら生きるということは
~患者として、MSWとして、医療費問題に挑む~

田澤貴至

私は、4歳の時に1型糖尿病1)を発症した。以来、健常者には想像もつかない経験と社会的不利を今も受けながら、生活をしている。1型糖尿病はインスリンがなければ生命維持できない疾患である。血糖測定とインスリン注射を(頻回)して、生命維持・血糖コントロールしながら生きている。加えて、病歴が重なるにつれて、少なくない合併症も治療しながら生活しているため治療費が高額となり、経済的問題を抱えている。

小児までは公費負担制度があるが、20歳を過ぎると、生活保護や無料低額診療事業以外2)では公費負担制度がなくなり、健康保険3割負担になれば、1型糖尿病患者の1か月1回の治療や指導の自己負担は、1万5千円から多い方で約2万~3万5千円近くになる(小児慢性特定疾患トランジション問題)。20歳と言えば、就職している方はいるが多くは学生であり収入が少なく、支払いに困るのだ。成人になってからの方が複雑で、制度がない・少ない、制度に守られていないのだ。アンケートや患者の声3)では約70%の患者が「医療費の負担が重い」と感じており、「治療継続が困難」「相談したい」「制度がほしい」と訴えている。

患者として、MSWとして、これから挑まなければならないことは制度構築である。疾患特性は指定難病の定義にあてはまる要素は多くある。小児慢性特定疾患のトランジションの話も進まず、指定難病にも選ばれず、このまま何もせずに終われない。1型糖尿病を内部障害に加えていただき、障害医療助成や特定疾病(人工透析やHIVと同じく、月額1万円以内)の対象疾患に加えてもらうべくソーシャルアクションを展開していくしか方法がない。せめて、命綱であるインスリンだけでも助成してほしい。これはある意味、生存権の保障と同じものと考える。患者一人ひとりは必死になって生きているのだ。この思い、望み、厚労省に伝われ!!

(たざわたかし 済生会野江病院MSW)


【注釈】

1)1型糖尿病は原因が未解明で、主な症状は高血糖に伴い、口渇、多飲、多尿、体重減少、さらにインスリンを用いた治療をしなければ、意識障害を来たし、死に至る。

2)無料低額診療事業とは、生活に困っている人のために、無料または低額な料金で診療を受けられる制度。

3)1993年に日本小児内分泌学会・小児糖尿病委員会が18歳以上の1型糖尿病患者を対象にした社会的適応・生活実態についての調査『ヤング糖尿病の現状とヤングたちの声』や2009年に糖尿病ネットワークによって行われた糖尿病の医療費の調査(http://www.dm-net.co.jp/enq/0903-01/index.html