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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●海外でのお金の管理に一工夫、他●

提案者:小山恵美子 イラスト:はんだみちこ

小山恵美子(こやまえみこ)さん

生まれつきの全盲で大学卒業後、米国へ留学。帰国後は大学で英語講師を務め、現在は外資系の生命保険会社に勤務。社員の多様性を活かす取り組みに従事し、社員研修、プロジェクト企画などを手掛ける。大学時代からアイメイト(盲導犬)と生活をともにし、現在のパートナーとは通勤を中心に趣味の活動などで国内外に出かけている。


海外でのお金の管理に一工夫

普段お札の識別には気を使いますが、海外旅行をする時はなおさらです。たとえばアメリカに行く時、私は日本円と米ドルの財布を完全に分けて使っています。米ドル札は大きさも形も変わらないので手で触って識別することは私にはできませんので、5ドル札はここ、20ドル札はここ、というように入れる場所を決めておいて、買い物をしてお釣りをもらう時も、その場で店員さんにお札の種類を聞いて決まった場所にしまうようにしています。そうすることで、次に支払いをする時にスムーズなお金のやり取りができます。

また、銀行で両替をする必要がある時は、大きい単位のお札はもらわないようにしています。もしもらってしまった場合には、なるべく早く使ってくずすようにします。扱うお札の種類が少なければ間違う可能性も少なくなります。


通勤時間は情報収集に

私は職場まで片道2時間かけて通勤しています。往復4時間、週5日間で1日近くを移動に要することになります。その時間をできるだけ有効利用しようと、仕事のための情報収集をすることにしました。そのために携帯電話をiPhoneに代え、慣れないタッピングに戸惑いながら何とか使っています。

私が情報収集のツールとして主に使っているのは、日経新聞の電子版、電子書籍のアプリ、そしてツイッターです。日経新聞はキーワードを登録しておくと関連情報へのリンクを朝夕メールで送ってくれるので、これはと思った記事にアクセスして読んでいます。また、最近のビジネス書は電子書籍になっているものもだいぶ増えているので、すぐに読みたいと思ったものは購入し、ダウンロードして読みます。

ツイッターも仕事に関連する情報を提供してくれそうな人をフォローしていると、時々思わぬ良い拾い物をすることがあります。ついでに、コンビニや気になるスイーツの話題もしっかりフォローしています。

電車で座席に座れなくても、iPhoneにイヤホンをつなげて片手だけで操作できますし、私は全盲でスクリーンを見る必要もないので、電話をコートのポケットやカバンに入れたままで聴くことができて便利です。


名刺交換の緊張感を和らげるちょっとしたこと

名刺交換はビジネスシーンではごく当たり前の光景ですが、私にとってはちょっとした緊張の瞬間です。きちんと相手に向けて、上下や表裏を間違えないように渡すという、誰でも普通にしていることに気を配るからです。間違えたからといって、その後の相手との関係に響くことはないのかもしれませんが、間違えないにこしたことはないでしょう。そのために、私がしてきたことをいくつかご紹介すると、

  • 名刺入れに入れる向きを決めておく
  • 点字を書いておく
  • 1か所角を小さく切り落とす
  • 一定の場所にシールを貼る

などがあります。

けれども、仮に渡す時に何かの拍子に向きが分からなくなってしまったとしても、それを会話のネタにして、こちらのことを知ってもらうきっかけにすることもできるでしょう。いずれにせよ、杓子定規に考えずコミュニケーションを楽しんでいきたいと思っています。