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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年7月号

時代を読む69

当たり前になった放課後活動の新たな課題

障害のある子どもの放課後活動事業所「ゆうやけ子どもクラブ」(東京・小平市)は37年前(1978年)、ボランティア団体として発足した。私は当時、大学1年生。先輩の学生に、「障害児のボランティア活動をしないか」と誘われた。

私は活動で、光彦(養護学校小1。自閉症)を担当することが多かった。彼は、屋外を走り続ける。道に落ちているビンを拾っては、表面を撫でる…。私はひたすら、彼と行動をともにした。

そのことに、光彦の母親は、とても感謝してくれた。「息子は、家から抜け出して、何度も行方不明になった。でも、活動があった日は満足して、家で落ち着いている」と。私たちは、放課後活動の必要性に手応えを感じていた。

だが、年配の保護者には、「子どもを預かって、若い親を甘やかすのはダメだ」と苦情を言われた。ボランティアだけでは長続きしないため、行政に「補助金を出してほしい」と訴えたときは、「学校に通っているのだから、二重に公費は出せない」と即座に返された。世間では、放課後活動は“白い目”で見られる状況があった。

ところで2012年「放課後等デイサービス」という、国の制度が創設された。現在、事業所数は5500か所。8万人もの子どもが利用している。これは、全国放課後連(障害のある子どもの放課後保障全国連絡会)が行なった、放課後活動の制度化を求める国会請願が11万8000筆もの署名を伴って、衆議院・参議院ともに採択される(2008年)など、全国の関係者の願いが実ったものだ。

ただし、民間レベルでは、「低リスク、高リターン」「起業3年で年商3億円」などと、儲けをあおる宣伝がなされている。「子どもにビデオを見せているだけ」「子どもがストレスを抱えて、帰宅後に暴れる」などという、保護者の声も聞こえてくる。

こうした「活動の質の問題」の背景には、私たちの仕事の価値を金銭的な価値に置き換える、制度の仕組みがあろう。つまり、子どもがお客さんのように、何人来たかで事業所の収入が決まる。細かい“サービス”をするたびに「加算」がつく。営利を目的にした団体も事業者になれる…。

かつては、少数派だった放課後活動は、今や、あって当たり前になりつつある。だが、新しい課題も立ち現われている。「放課後活動にふさわしい実践を創りだす」「制度を、放課後活動にふさわしいものに変えていく」この二つを掲げて、志高く運動していきたい。

(村岡真治(むらおかしんじ) ゆうやけ子どもクラブ代表)