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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年7月号

お知らせ

第3回アジア太平洋CBR会議の見どころを紹介します

第3回アジア太平洋CBR会議(9月1日―3日)

テーマ:コミュニティベースのインクルーシブ開発(CBID)を通しての貧困削減と持続可能な開発目標(SDGs)

会場:京王プラザホテル(東京都新宿区)

第3回アジア太平洋CBR会議開催まであと2か月と迫ってきました。今回は本会議の見どころのひとつとそこでの主なスピーカーを紹介します。

1日目のサブテーマは、インクルーシブネスと貧困です。

1人目の基調講演者は、東南アジア諸国連合(ASEAN)で障害分野に取り組まれる社会文化共同体事務局次長のアリシア・バラさん(フィリピン)。もう一人は、世界盲ろう者連盟事務局長の福田暁子さんです。福田さんご自身盲ろう者で、国際的に活躍する一方、住んでいる地域の人とのつながりを大事にした活動をしています。

2日目は強靭なコミュニティをサブテーマに、今回の会議全体の中核をなすプログラムが朝から夕方まで続きます。午前中の全体会は二つです。一つは、CBRに関する全般的な活動紹介で、スピーカーは、1.バングラデシュのCDD(開発における障害センター)所長のノーマン・カーンさん。カーンさんは、バングラデシュ国内で開発組織を対象とする研修や支援についてお話しされます。2.JICA人間開発部社会保障課課長の合澤栄美さんは、CBR支援を含む障害と開発の活動に関して、日本の政府間開発援助の立場からお話しいただきます。3.CBM(クリストーフル・ブラインデン・ミッション)のリージョナル・コーディネターのバーニィ・マググレードさん(フィリピン)は、長年にわたりアジア太平洋のCBRを支援してきた国際NGOの立場から発表します。

強靱なコミュニティとは、災害リスク削減や災害後の復興で言われる、レジリエンスに相当する意味を持ちます。災害に強いコミュニティを実現するには、普段のコミュニティのあり方が問われます。本会議では、コミュニティでの障害のある人たちのつながりについて掘り下げて議論します。

CBRアジア太平洋ネットワークは、今回の会議で発表することを目的に、この地域のCBIDの好事例集を作成することになり、日本財団のご支援を得て、日本での国内事例集を作成しました。全国から推せんされた10の事例を紹介しています。会議参加者には、アジア太平洋と日本の2冊の事例集を配布する予定です。

また事例収集に当たり、CBIDの事例を見る視点を開発しました。障害のある人が地域社会でインクルーシブネスが達成されているかどうかを見る視点で、事例を基に作成したものです。制度やサービスにまず目を向ける福祉事業の視点と異なり、CBIDでは、地域の課題とその課題解決に対してどのようなアプローチが取られてきたのか、そして、どのような変化が障害のある人と地域社会に起きたのかの両方を見ていきます。

日本の10の事例から、一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトが代表に選ばれました。そして最終的に、アジア太平洋の事例に選定されたのは、カンボジア、ネパール、インド、フィリピン、そして日本でした。草の根ささえあいプロジェクトは、名古屋市で社会的孤立に陥る人への支援をアウトリーチにより実施しています(ノーマライゼーション2014年3月号参照)。

2日目の二つめの全体会では、事例集に選ばれた日本を含む5か国の実践発表があります。事例集の編集を担当した、マヤ・トーマスさん(CBR専門家、インド)がこのセッションのコーディネーターを務めます。

日本の残る9事例は分科会で発表する予定です。そのうちのひとつ、チャイルドケアほわわは、社会福祉法人むそう(愛知県半田市、理事長は戸枝陽基氏)が医療と看護に福祉の立場から連携して、東京都内の医療依存度の高い障害のある子どものケアを行うために2013年に立ち上げました。

むそうは半田市で、コミュニティでの暮らしや働くことを含めた必要な支援を包括的に提供するためのサービスを創りだしてきました。その経験を基に、東京で医療依存度の高い子どもの支援を開始しました。CBIDとしての特徴のひとつは、多職種の人たちとの連携を実現していることです。その結果、医療従事者だけの支援では難しかったこと、たとえば子ども同士友達を作ることが可能になっています。

草の根ささえあいプロジェクトもチャイルドケアほわわも、本人を中心として取り組まれている活動です。その他の8事例も地域課題を出発点として、その解決と障害のある個人への支援を組み合わせて、インクルーシブネスを目指して取り組んでいます。

超高齢化を目前に控える今の日本の地域社会において、本当に必要なことのために壁を突破して行われてきた実践は、今後の地域社会での取り組みの具体的な方向を示す機会になると考えられます。第3回アジア太平洋CBR会議では、アジア太平洋と日本を含む先進国とでアプローチの共通点と特徴を学び合うことができるでしょう。

HP:http://www.apcbr2015.jp/jp/

FB:3rd Asia Pacific CBR Congress, September 1 to 3, 2015, Tokyo

(上野悦子(うえのえつこ) 日本障害者リハビリテーション協会国際課)

CBIDとは?

Community-0based Inclusive Development=地域に根ざした共生社会の実現

2010年に発表されたCBRガイドライン(WHO、ILO、UNESCOなど)では、CBRの目的はCBIDであることが明記された。その意味するところは、排除される人を出さないインクルーシブな社会の実現で、障害のある人、家族、その他の困難を抱えた人が生きやすくなる社会を目指すことである。障害のある人、家族、困難を抱える人にとって、団体の活動や地域社会がインクルーシブかどうかは、包括的に活動がカバーされているCBRマトリックスを使って見てみることができる。