音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年9月号

1000字提言

車いすで広げよう!!(3)
~あなたは何を広げますか?~

杉本昌子

このイベントを通じて忘れられない出会いがいくつかある。一つは、中途障害で車椅子を使うようになってまだ1年の若い女性。イベント当日は自分ができない現実を目の当たりにして、悔しくて悲しくて涙を流しながらもトレーニングへ。その彼女と約1年後再会。その時の表情は今でも忘れられない。自信に満ち、夢を持ったとっても素敵な笑顔だった。

彼女は「イベントに参加した時は、まだ車椅子を使う生活に慣れていなくて、情緒不安定になっていた。泣きながらもその時、自分に出せる精一杯の勇気を出してトレーニングに参加していた。お陰で、今では車を運転して大学に行き、たくさんの友達ができて毎日本当に楽しい生活を送っている。サークルに入ったり旅行にも行けるようになった。これからはほかのサークルにも入りたい。夢は海外旅行。ヨーロッパに行ってみたい。やりたいことがいっぱい。今の生活は本当に楽しいし、これからももっともっといろいろなことに挑戦したい」そう口にした。

イベント自体は数時間の関わりでしかないが、彼女にとってこのイベントは将来を大きく変える大切なキッカケになったのだと私は信じている。ほかにも、「イベント参加以降、自宅室内用として使用していたこぎやすい車椅子を、外出用と入れ替えた。スーパーやデパート、病院等のバリアフリーの所では、言葉通りあたかも“水を得た魚”のように、スイスイとうれしそうに楽しそうに自走している。そんな娘の姿を見て、(ブリックスは軽量過ぎて後ろに荷物を掛けることができないので、介助者の私が外出時に困る…)と思って今まで室内用として使用していたが、それはあくまでも私個人のことであり、娘の幸せを第一に考えていなかったことに気付き、反省した。ブリックスは軽量だからこそ、力の弱い娘も自走が可能で、『自分の力で、自分の行きたいところに行ける』という幸せを得て、介助する私も荷物の多い時には片手でも介助できるので、外出にはあまり困っていない。お陰で今では毎日、親子一緒に楽しく外出できるようになった」

「よりこぎやすい車椅子に乗るようになって、やりたかったことは、一人でのお出かけ。しかし、段差の部分や電車の乗り降りには不安を感じていて、親に付いて来てもらうことがほとんどだった。イベントに参加できて、キャスタの上げ下げが自分でできるようになり、自信もついて、今では一人で出かけるし、電車にも乗れるようになった。今後は、友達を誘っていろんなところに出かけてみたい」

このように車椅子を使い、できないと思っていたことができるようになり、たくさんの経験をし、将来の夢を持って、イキイキと社会の中で生きていく。障害があるとかないとか関係なく、みんながそう思える地域に社会になるのが、私の夢です。


【プロフィール】

すぎもとまさこ。パシフィックサプライ(株)事業開発本部。川村義肢(株)に入社して10数年、地域のお客さまに対して義肢装具や福祉機器のご相談・ご提供を行う。グループ会社のパシフィックサプライ(株)に移籍して5年。現在は『シーティングエンジニア』として、車椅子・姿勢保持製品を全国のお客さまへ提供できる環境作りを行なっている。