「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年10月号
障害当事者からの意見
障害への理解がコミュニケーション支援を進める
伊地山悠子
高次脳機能障害者になった
私は、20歳の時にスキューバダイビングに誘われ「行ったら何が見えるのだろうか?今まで見た風景がどんなに違って見えるのだろうか?」と思い、天にも昇る気持ちで参加しました。講習は、ものすごく暑い夏の日でした。が、それ以上に失った物もすごかったです。周りにいた人々のお蔭で生き返りましたが、重い後遺症が残りました。
記憶力と発動性の低下
私の場合、記憶力が低下し、言葉を発したり、自分から行動を起こすという発動性が低下しました。言葉を発するには、「想起すること」が大切だと言いますが、私はこれが難しいようです。何を話せばいいか、わからない時は困ります。私はもともとは話し好きで、聞くのもしゃべるのも得意な方でした。今は時々、自分から質問もできるようになりました。質問されたことには、すぐ答えられる時と非常に時間がかかる時がありますが、想起するのに時間がかかるためかもしれません。
コミュニケーション支援を進めるには
私が話しやすいのはどういう時か、考えてみました。以下は、以前に私が書いた文章です。
「悔しいと思ったのは、私が一生懸命考えているのに、私のことはスルーして次の人にふられるときです。自分では、考えながら行動しているのですけれど、周りの人から見ると、トロイ感じ。せかされると、カチンとくるので、ゆっくり見守ってほしいと思います」(沈黙の時間は怖くはないのです)
赤ちゃん言葉で話しかけられるのが嫌です。早口で話されると理解できないことが多くなります。ゆっくり話してください。
それから、家族や親友など、私の記憶を共有してくれる人が傍らにいてくれると助かります。安心して話せるのがいいんです。困った時の私を理解してもらうのに、母が通所先への橋渡し役になってくれています。母が年をとった時に備えて、知的障害児・者親の会が作成している「個人用生活あんしん引き継ぎノート」を母も作り始めました。
回答の引き出し方も大事です。たとえば、「1か月にどれくらい外出しますか?」と聞かれてもどう答えていいのか、記憶するのと、想起するのが難しい私は、答えられません。でも「月曜日は何をしていますか?火曜日は何をしていますか?」と具体的に聞かれると答えられます。記憶を引き出し想起しやすい質問にしてもらえると、答えやすくなります。(この文章は母と協力して書きました)
(いちやまゆうこ 杜のハーモニー♪)