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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年10月号

障害当事者からの意見

コミュニケーション支援はどうあるべきか

山本深雪

精神障害者とひとくくりにして語ることは難しい。年齢層も幼い人からお年寄りまで幅がある。病名も不安神経症から認知症まで幅が広い。最も入院者数が多いのは統合失調症である。

そういう中、精神病の薬を服薬していると相手に告げると、手の平を返したような対応の変化がある。黙っている時とは、大きく違ってくる。

たとえば、私と友人らが町内会から理由も告げられず立ち退きを迫られ相談しようとした時、家族会の方から「あなたの言うことが正しいという証拠を持ってきてから何か言いなさい」と発言を止められた。自分が発言しようとする時、こうした対応が取られたら、あなたでもきっと疲れることだろう。私は、こうした事態を何とかできないものかと弁護士会に相談した。「そういう会話をする折は、第三者の立ち合いを付けて、会話内容を録音しておけば必要な折に使えますね。特に私たちに相談に来るような場合には」

この助言は、後の私の人生にとって力になった。必要なやりとりは録音できるという安心感が持てた。実行もした。そして、大和川病院の退院患者さんたちが語る体験談を録音しながら聞き、陳述書として行政や裁判所に証拠採用された。みなで悔しい体験をおろそかにしなかった。

普段の会話でも発言内容が真実でないという思い込み、決めつけた上で必要以上の負担を求められる経験を私たちは繰り返し味わってきた。話そうという意欲が萎えていく。その方が楽だと思って。それは病状ではなく、周囲の応対に誤りがあるからだと感じる。こうした中、普段の会話からも置いてきぼりを食らう関係へとなりがちである。病院でも地域の暮らしでもこういう関係が続くと自分の意見が言いにくくなり、口にしなくなる。黙っている方がエネルギーを使わずにすむ、と。

以前、食事会に「話さないけど友達はほしいと思うので」と家族の方が連れて来られた。話さなかったが、目で喜びは表現された。食事会が終わる頃には、笑い声もあり友人を作って帰られた。交流したいとの思いが肝心なのだ。そして回数を重ねるうちに、30年の病棟の様子も話されるようになった。

こうした経験から私は、本人の気持ちを丁寧に聞く姿勢があれば、できれば同じ目線で相手の気持ちを大切にする姿勢を持って、一度で無理をしないで2回、3回と交通整理をしながら、相手の気持ちの核をキャッチしようとしていれば信頼関係は築かれていくと確信できた。そういう人間関係を地域に増やしていく支援であってほしい。

(やまもとみゆき NPO大阪精神医療人権センター副代表)