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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年12月号

私のファッション哲学

時にはウィンドウショッピングで気分を変えて

中平順子

厚手のコートを身にまとい、ボアの靴で防寒対策し始めた頃、街角を歩いていると、季節感たっぷりに着飾ったマネキンに心を奪われる。もう周りのことなど目に入らず、「今日、ここで会えたのは奇跡」のことのように思い、頭の中はアドレナリンで一杯になります。

さあこれから、後先考えずに衝動買いの始まりです。でも、サイズと色めだけは気にしての即座の服の購入になります。そんな服たちが家中に溢れ、フランス人は7着しか服を持たないなんて、どこの世界のことでしょう。

しかし、車椅子の身には座っていることが大半なので、お腹周りや裾丈の調整が始まります。ファスナー、マジックテープ、各種糸や紐を取り揃えているのはもちろんです。

服へのアレンジの方法は自ら進めるのではなく、手直ししてくれる人との話し合いで、その都度決めていきます。一番大事なのはここで、私の要望を聞いてくれて、さらに提案もしてもらえる方がいることです。もちろん、お裁縫が上手なのは当然です。

随分と贅沢(ぜいたく)な条件ですが、好きな服を着こなすには重要です。その結果として、手慣れた洋裁師さんに、無理難題を言いながらも私の理想の形にしてくれます。

服とは別に、靴も衝動買いの産物になります。ここではマジックテープが活躍します。足を組むことはできても、自らの意思では動いてくれませんので、靴の中で血豆でもできたら大変です。履きやすく、同時に脱ぎやすくが一番です。

福祉カタログの靴は、ファッションよりも機能性で、小・中学生の体育館履きのようなものばかりです。私のわがままを聞いてくれるものが少ないのです。でも、自ら選んだ服が身に合ってこそファッションではないでしょうか。

四季折々に訪れるモードをネットや新聞チラシで確認しつつ、何かと制限があり、壁を作ってしまう人生になってしまった。「~だから」とながら族になりがちですが、365日に色とりどりの四季の花が咲くように、人生のストーリーをファッションで個性豊かに着飾って楽しみましょう。

(なかひらじゅんこ ヒューマンケア協会)