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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年2月号

家族からの意見

病む人に希望の灯を

住本知子

スポーツマンの兄が精神分裂病(現在は統合失調症)で入院、ただただ驚愕(きょうがく)でした。夫の提案で東京の医療に望みをかけ、実家は富山から東京へ転居。現在の国立精神・神経医療研究センター病院での長い診療の始まりでした。治癒を信じた結束は強く、私も平成11年に病院家族会「むさしの会」に入会、学習に励みましたが、家族の思いもむなしく兄は新しい医療、自立支援等の希望への道を阻まれ8年前に罹病50年、75歳の生涯を終えました。

現在は、医療→認知行動療法→カリキュラム等社会復帰へのプログラムが組まれ、この支援の流れに乗れた方たちは確実に目的や希望を把握し、デイケアや作業療法室でピアスタッフの方たちとの明るい会話が聞こえます。

退院後のリカバリープログラムも組まれる時代になりました。親御さんも時代の進展を認識し「高EE」で当事者の進捗を阻んではなりません。反面、この理想的な流れに乗れない方も多くいらっしゃいます。そこで繰り返し苦しみが訪れる家族を記します。

当事者(統合失調症)40歳代、両親80歳代(母うつ病)、一昨年、当事者の弟(別世帯)が自死、この悲しみの中、父親が脳出血で倒れ意識のないまま施設に入所。母親とご子息は訪問看護やヘルパーの支援を受けての生活となりました。父親のことがショックでご子息は再発症で入院、母親もうつがひどくなり眠れぬ夜に耐え、朝8時になると「苦しい、淋しい、死にたい」の電話が入ります。涙声は弱々しく危ない感じで、30分あまり一生懸命話を聞きますと声が少し落ち着かれます。このご一家は皆さん、純粋で善良な方です。なぜこの人たちがいつまでも…と涙することしばしばですが、家族会での信頼感、家族だからこそ分かる心の寄り添いや無償の愛がお役に立っているわけで、それだけに温かい心と一層の学習が重要な訳です。英国のメリデン版ファミリーワークのように家族をプロの支援者に育て、四六時中当事者を看(み)ることで早期発見、対応の効果は絶大の由、プロの目線ですから、当事者に巻き込まれることもない賢明な良策に感動しきり、日本でも早く採用されることを切実に願います。

今、子どもの病に親が尽くし続け、気がつけば両親共々高齢と体力の疲弊、抜き差しならぬ病になり、親亡き後の対策等は至難の業、家の中は不安でグレー一色の感。このような実態が多発しています。世界水準の良策があれば取り入れ、どうか「耐えることのみ多かりき」皆無の日本実現を国政にお願いしたく思います。

(すみもとともこ 病院家族会「むさしの会」会長)