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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

当事者からの提案

災害に備えての準備と必要な支援について

小久江寛

私は、頸椎損傷で電動車いすを常用し、週30時間くらい勤務し、1日6.5時間の介助を受けて生活していますが、災害時への備えについては楽観的に考えていました。ところが、東日本大震災の体育館などの避難所の様子をテレビでみて、自宅から避難所への移動、避難所での生活が無理そうだと実感し、関心が高まりました。

実は、勤務先(静岡市障害者協会)の防災事業では、障がいのある人のことを考えて宿泊防災訓練を8年間実施してきましたが、私が実際に宿泊したのは2回で、自宅での停電や断水も経験する訓練もやりました。その経験を踏まえた意見です。

自宅で避難生活を送るための訓練では、当初考えていた避難の方法では難しいことが分かり、改めて対策を見直すことにしました。特に、独(ひと)りの時に車いすやベッドから落ちたら落ちたままになるので、誰かに助けに来てもらえる態勢やそのSOSをどう出すかといった課題が浮き彫りになりました。

体育館での避難所訓練では、校舎やトイレはバリアが多いため自由に移動できず、プライバシーの確保も困難などを体験しました。医療的ケアや排せつ介助ができる小会議室で、室温の調整もできる環境を望みましたが限界がありました。冬の訓練だったので寒さとポジショニングの悪さで痛さを感じるまでになり、褥瘡(じょくそう)になる寸前でした。今は、自分専用の環境になっている自宅での避難生活を真剣に考えています。

本来は、地域の防災訓練に参加すれば良いのですが、今の防災訓練が要援護者の受け入れを前提にしていないことが問題です。ただ障害者をはじめ要援護者が積極的に参加しないことも原因でしょう。実際、地域の方に私の障がいの内容と支援の方法、設備面の配慮などを説明しなければならないのは面倒ですが、進めていこうと思います。

また、訓練そのものが「避難」止まりなので、ぜひ避難所となる体育館に入って避難所を設置する訓練もやっていただきたいです。特に、要援護者の相談窓口や自宅避難の要援護者を支援する班の訓練も盛り込んでほしいです。

結論として、「自宅で避難生活を送ろう」と思いますが、現状だと自宅での避難は孤立しそうです。要援護者名簿に登録してあるので、民生委員や自主防災組織の方の訪問調査をお願いして、その時にいろいろ相談しようと考えています。そのためには日頃から近所の人と挨拶を交わし、顔の見える関係を築こうと思っています。

(こくえひろし 静岡市障害者協会)