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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

当事者からの提案

自然災害と当事者参加
―パーキンソン病(難病)患者からの提案―

平峯寿夫

パーキンソン病は中脳黒質のドパミン性細胞の変性・減少により神経伝達物質であるドパミンが減少し、手足の震え・固縮・動作の緩慢が出て、歩行障害・反射障害と進み車椅子・寝たきりにつながっていく難病です。はっきりした原因も治療法も確立されておらず、減少したドパミンを補充する対症療法が主で、その効果も、副作用も個々人でバラバラであり、その時点での自分に合った薬の種類・量・服薬頻度が求められます。

治療に当たっては、患者は次の「3本の矢」がキーワードとなります。

1.…自分の症状に沿って処方された薬を正しく服用すること。

2.運動…体が固まるだけでなく筋力も落ちるので、ストレッチだけでなく筋トレもやること。

3.こころ…自宅に引きこもって心配ばかりしていると症状の進行は早くなります。前向きな姿勢で積極的に外出し、多くの人と接し語り活動すること。

東日本大震災の時、3つのキーワードはどうなったか。

1.…大量の薬を持って支援に行った医師団が直面したのは、患者が自分が服用している薬を知らない、知っていても量が分からない。一番ひどかった患者は、飲み忘れを防ぐため「一包化」をしていた。病院もカルテも津波で流され確認できない。人任せにしているといざという時、苦しむのは自分。自分が服用している薬の名前くらい覚えておくこと、患者が無理な時は介助者が覚えておくこと。

2.運動、こころ…避難所や仮設住宅では、どうしても寝転がってテレビを見ているだけの生活になりがちで健常者でも体調を壊します。患者は体の硬直、筋力低下が一気に進みます。意識して体を動かすことです。また、こころの面でも自分にふりかかった不幸を嘆くだけでなく「自分だけではない。みんなで頑張ろう」という前向きな気持ちで仲間を作り、共に前に進むことが結果として自分を助けることにつながります。

3.災害発生時に、動作緩慢・歩行障害などがあるので自分の症状に合った適切な避難場所を選定すること。一番近い避難所はどこか。一人で歩いて行けるか、介助や車の便乗を頼むか。家族と立てた避難のシミュレーションどおりに災害が来てくれるはずありません。家族との避難計画も患者の日頃の行動範囲を踏まえたものでなければなりません。

(ひらみねひさお 全国パーキンソン病友の会事務局次長)