「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年6月号
工夫いろいろエンジョイライフ
実用編●“今の状態を維持する”訪問看護・リハビリ、他●
提案者:宮地勝枝 イラスト:はんだみちこ
宮地勝枝(みやちかつえ)さん
多発性硬化症(MS)の難病患者です。脳・脊髄の神経のカバー(髄鞘)が壊れていく脱髄疾患で、下肢不全マヒ、排泄困難、上肢痺れ、脱力、等々たくさんのハンディとともに生きています。3年前より同病さんたちが集える交流会を定期開催しています。MSカフェ主宰。福岡県在住。
“今の状態を維持する”訪問看護・リハビリ
私は、医療費助成制度を利用して、週に一度の訪問看護、週に2回の訪問リハビリを受けています。居住地の市町村での手続き、さらに医師の指示書が必要ですが、有り難い制度です。
私たち難病患者は、現在の医学では完治することは難しい状態です。よって、リハビリで「今の状態をできるだけ維持する」ことは最も大切なことだと考えています。
訪問してもらうので、体調不良や心のモチベーションが下がっていて外出困難な時でも確実に受けることができます。この規則正しい生活は、難病患者にとって、とても重要です。
また、訪問時に理学療法士さんや看護師さんが、体の維持に必要な適切なアドバイスをしてくれます。加えて、世間話や雑談もたくさんします。これは“会話する”という脳のリハビリにもなるのです。
楽しく、日々を暮らしていく…。私にとってその手助けをしてくれるのが訪問看護、訪問リハビリです。
ポストイットで物忘れ防止大作戦!
多発性硬化症には、高次脳機能障害と似た症状の“物忘れ”や“注意障害”が多くみられます。そのため、物事を意識的に進めないと遂行することが困難になります。そんな私のお助けグッズの1つに“ポストイット”があります。
最初に、翌日のスケジュールを確認します。次に、優先順位を確認しながらポストイットに用件を書き込んでいきます。詳細なことまで書き込むため、数枚に及ぶこともあります。
当日はそれに沿って行動開始です。ここで、大切なことは完璧を望まないということです。なぜなら、私たちの疾患は通常の人と比べ、バッテリーが10分の1程度で切れてしまう疾患だからです。
用事が終わったら、それを線で消していきます。用件が多いと、半分しか終わらないこともあります。しかし、書き込んだ用事を消去していくことで“達成感”を感じることができます。
身体の管理とともに、心のコントロールはとても大切です。そんな時に、このポストイット大作戦は満ち足りた気持ちになれるのでお勧めです。
テニスボールでコロコロマッサージ
疾患の症状で脳神経からの伝達が途絶えがちです。そのため、筋肉が痙縮し体がコチコチになるので、日々の暮らしにセルフマッサージやストレッチは欠かせません。それを助けてくれるのが“テニスボール”です。
テニスボールは程よい硬さがあります。ですから、テニスボールでツボを押すと人に押してもらうような感覚で良い刺激が得られます。
まずは、仰向けになってテニスボールを背中に挟(はさ)みコロコロ…。筋肉が張っていると、痛気持ち良い感じでコリをほぐしてくれます。
この方法は、自分で体重移動ができるので、刺激の強さ加減をコントロールすることができます。ちょっと痛すぎる時は、ソファで座ってすると負荷がかかりにくく、ソフトなマッサージとなります。
テニスボールはその他に、足裏マッサージでも活躍します。座って足の裏でコロコロ…。足の裏には全身のツボが集中しています。疲れが出ている時に、テレビを見ながらコロコロ、本を見ながらコロコロと“ながらマッサージ”は、たいへんお勧めの方法です。