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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年7月号

相談支援専門員と介護支援専門員の連携できるシステムづくりを目指して

東美奈子

65歳を迎えるとその人の人生が急に変化するわけでもないし、急に支援が必要になるわけでもないのに、制度上は障害福祉サービスから介護保険優先のサービスに変更することを余儀なくされる。ここで考えなければならないことは、利用者が混乱することなく、いかにスムーズに移行することができるかではないだろうか。そのための取り組みについて述べたい。

1 出雲市の移行システム

出雲市では、障害福祉サービスを受けている利用者が65歳を迎える約2年前に、移行困難者の検討を介護保険担当課と障害福祉担当課で行うことになっている。ここで情報共有がなされ、必要に応じて介護保険の仮認定調査を実施する。その結果も踏まえながら、関係者会議を行い、スムーズな移行に向けての工夫を個別に考えるシステムである。

つまり、65歳の誕生日の2か月前に介護保険の申請を行うときには、介護保険のサービスだけで利用者の望む暮らしが実現できるのか、暮らしに必要な福祉サービスの上乗せは何をどのくらいすればよいのか、必要な部分もインフォーマル支援で補えるのかなどが、ある程度分かった上で、実際の移行ができるシステムになっている。しかし実際に運用してみると、人を含めた環境の変化に対処することが苦手な利用者にとっては、負担が大きく、なかなかスムーズな移行ができないことも多い。

そのような場合は、64歳くらいから少しずつ利用者に介護保険制度の説明を相談支援専門員が行い、必要に応じて介護支援専門員との顔合わせをしながらゆっくりとしたペースで進めていく。そして、65歳からは介護支援専門員が主たるケアマネジャーとして関わり、相談支援専門員がサブ的な立場として関わり続ける。つまり、ダブルケアマネとして利用者に関わることになる。そのとき留意したいことは、あくまでも主は介護支援専門員であるので、相談支援専門員は自分が得た情報を介護支援専門員に情報提供し、両者が情報を共有しながら、介護福祉サービスでは担えない部分を相談支援専門員が担うということである。

たとえば、利用者が「家族や友人のお墓参りに行きたい」と言われれば、そのことが利用者自身にとってどのような意味を持つのかをアセスメントし、利用者と「自分が一人で行ける手立てはないのか、何か工夫できることはないか」等を話し合った上で必要なら同行するといったことである。ここで大切なことは、介護保険のサービスではできないからといって、利用者にとって大切なことをあきらめることがないように関わるとともに、継続できるように工夫することである。

また、利用者が介護支援専門員と信頼関係が構築できないときには、一緒に訪問し話を聴き、利用者と介護支援専門員の関係構築がうまくいくように働きかける。このようなことを丁寧に細やかに繰り返しながら、介護支援専門員にバトンタッチし、相談支援専門員は少しずつフェードアウトしていくことが重要である。

2 相談支援専門員と介護支援専門員が顔の見える関係に

スムーズな移行を目指すためには、基幹相談支援センターや地域包括支援センターが中心となって、合同事例検討会を開催したり、それぞれの法律や仕組み・社会資源等を知るための研修会を実施することである。合同で行うことを通じて、相談支援専門員と介護支援専門員が顔の見える関係になることが重要なことである。

図1 スムーズな移行のための形
図1 スムーズな移行のための形拡大図・テキスト

また、障害福祉と介護福祉の間には共通言語があるようであまりない。同じような言葉を使っているつもりでも意味あいが違ったりすることも多いし、サービスの名前は違うのに同じサービス内容だったり、逆に、名前は同じなのに違うサービスだったりすることもある。共通言語がないことは、共通理解がしにくいことにつながるので、まずは、お互いがお互いのことを知り、共通言語を持つ工夫はすべきである。できれば、小学校区くらいの範囲で一緒に事例検討や研修会を実施すると、より顔の見える関係性になる。

また、ケースを通じて情報共有でつながりながら「こんな見方もあるのか、広がるなぁ」と気づくこともできてくる。ケースでつながれば、一緒に動きながらお互いの特性を知ることもできたり、お互いのできることとできないこと(得意なことと不得意なこと)も見えてくる。そのようなお互いの特性が分かれば、自分が分からないことを相談することでつながることもできる。「介護」「障がい」それぞれの分野の視点で考えたことを相談しながら、行き詰ったときにお互いが工夫できることを提案していくことも可能になるのである。こうして、つながることで視点が広がり工夫できることも増える、つまりは“あきらめない関わり”につながるといえるのである。

制度や仕組みが変わっても変わらず、その人が自分の人生を自分らしく生きることに寄り添い、応援し続ける仕事をしていくために相互理解をしながら協働していきたい。

(あずまみなこ 相談支援事業所Reve、日本相談支援専門員協会副代表)