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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年9月号

時代を読む83

NHK障害福祉賞51回目へ

NHK厚生文化事業団は、NHKが昭和35年に設立した社会福祉法人です。放送と連携しながらさまざまな福祉事業に取り組んでいます。

その中で、特に力を入れている事業にNHK障害福祉賞があります。この賞は、昭和41年に精神薄弱児(者)福祉実践記録を募集したのが始まりです。知的障害児・者に対する理解を広めようというのがねらいで、第1回の180編の応募作品は、いずれも学校の先生や施設の職員など現場の専門家による実践報告でした。その後、障害の分野を問わない形として、募集の対象を障害のある本人や家族・ボランティアなどに拡大しました。平成9年からは「NHK障害福祉賞」の名称を使い、去年、50回目を迎えました。

応募作品は、初めのうちは100編を超えていましたが、次第に応募数が伸び悩む年が続き、テーマを設定したり、ビデオ映像の記録を募集したりしたこともありました。ところが、平成に入ってから応募が急に増えました。背景にあるのは、日本語ワープロの普及です。障害があるために、それまで文字を使ってコミュニケーションを図ることが難しかった障害者が、ワープロで意思を表現することが容易になったのです。障害のある本人からの応募が多くなったことから、平成2年の25回からは、第1部門を障害のある本人の作品、第2部門を障害のある人とともに生きる人の作品として体験記録を募集しています。その後は、回を重ねるごとに障害者本人からの応募が増え、31回以降は、ほぼ毎回、総数が300編を超えるようになり、現在に至っています。

入選作品は毎年「NHK障害福祉賞入選作品集」としてまとめ、関係の団体や希望者に配布しています。NHKテレビの福祉番組でも取り上げて紹介しています。50回という節目の年になる去年は、障害のある本人の部門の過去の入賞者に「その後、どのように生きてきたのか」を新たに記述していただいて紹介し、記念の事業としました。事務局からのお願いに、多くの入賞者から「その後」が寄せられました。中には「受賞が、その後の人生に大きく影響した」という人が何人もいました。

障害のある人を取り巻く環境は、この間に大きく変わりました。応募作品の「障害」の内容も時代とともに変わってきています。応募作品の総数は、1万編を超えました。NHK障害福祉賞の歴史は、この50年の日本の障害者福祉を反映した記録でもあるのです。

51回目の今年の募集は、7月末で締め切りました。合わせて383編の応募があり、10月の最終選考会に向けて第一次選考の作業を進めています。

(大島勉(おおしまつとむ) NHK厚生文化事業団常務理事)