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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年9月号

民間の支援活動

相談支援事業所や権利擁護支援センターと弁護士会との連携

福島健太

1 兵庫県における触法障害者の支援と弁護士会との連携

兵庫県では、平成25年度から兵庫県内の地域生活定着支援センターも入口支援を実施することとなったため、弁護士会と地域生活定着支援センターが連携することにし、弁護士会にプロジェクトチームを設置しました。その後、弁護士が当番弁護士や国選弁護士として対応し発覚した触法障害者について、地域生活定着支援センターと連携し、本人のアセスメントを実施し、真に必要な支援につなぐよう、対応しています。

触法障害者の支援においては、単に福祉職につなぐということだけではなく、本人の状態像を適切に把握し、接し方や本当に必要な支援の内容を適切に把握して支援計画を立てていく必要があります。そのために、地域生活定着支援センターの相談員による助言のもと、医療機関などによるアセスメントを実施し、必要な支援につなぐよう心がけています。

2 地域の社会資源との連携

(ア)連携の必要性

ただ、地域生活定着支援センターが中心となり入口支援を実施したとしても、地域生活定着支援センターの相談員の人数に限りがあり、すべての案件を地域生活定着支援センターが主体的に関わっていくということには限界があります。

このため、実際に支援にあたる地域の社会資源と連携し、適切な支援が行えるよう体制を整える必要があります。

そこで、前記プロジェクトチームでは、福祉サービスの実施責任者である行政にも支援の当事者として関わるよう連携を図ることとし、さらに、相談支援事業所や権利擁護支援センターなど、各市町に存在する地域の社会資源と連携し、限りある人的体制の中で適切な支援が実施できるよう活動しています。

具体的には、担当する弁護士において、行政を支援者として関わるようにするため、必ず担当部署へ連絡し、今後の支援会議等への参加を促し、さらに、地域にある相談支援事業所とも連携し、地域生活定着支援センターの助言を受けながら支援を進めていくよう活動をしています。

(イ)相談支援事業所との連携

また、触法障害者の支援には限らないのですが、兵庫県内の市町のうち、尼崎市と豊岡市をモデル市として、市内の相談支援事業所に2か月に1回程度弁護士が出張し(弁護士の日当は日弁連及び弁護士会の負担)、相談を受け付けるなどの対応をしています。

各相談支援事業所では、法的な問題であっても弁護士へ相談してよい内容なのかが分からず、また、費用的なこともあり相談をためらっていたこともあったようですが、費用の心配が無く、弁護士が各事業所まで来て対応するということで、弁護士への相談への敷居が下がり、さまざまな相談がなされており、専(もっぱ)ら好評です。

そして、成年後見制度の申立やその後の受任、債務整理や相続の問題など、弁護士の対応が必要な事案については、相談を担当した弁護士ができる限り受任することとして、各事業者や相談する本人のニーズにも応えるようにしています。なお、受任に際して必要な弁護士費用については、法テラスを利用することにより、本人の負担をできる限り少なくすることが可能です。

(ウ)権利擁護支援センターとの連携

また、兵庫県のうち、芦屋市、西宮市及び宝塚市においては、各市の単独事業として権利擁護支援センターが設置され、触法障害者への支援を含め、高齢者及び障害者の総合的な相談窓口として対応しています。

この権利擁護支援センターの事業として、弁護士による相談が無料で受けられるようにしており、毎月、定期的に福祉職も同席した専門相談会が実施され、弁護士会から前記相談会に対応する弁護士を派遣しています。これにより、相談支援事業所や親族などが抱える触法障害者の問題についても、権利擁護支援センターを窓口として気軽に相談できる環境を整えています。

また、権利擁護支援センターでは、前記の定期的な相談だけではなく、緊急事態への対応など臨時の相談にも応じられるようにしており、さらに、センターへの来所だけでなく、出張による相談も実施できるようにしています。

3 現状と課題

このように、兵庫県では、触法障害者への支援として地域生活定着支援センターを中心に、前記のとおり行政や各市町の相談支援事業所、権利擁護支援センターなどと連携して対応しており、その理解も広がりつつあります。

しかし、いまだ触法行為に及んでしまったということで、他の障害者とは特別視し、支援について拒否的になる場合も散見され、また、触法事案への対応件数が少ないことなどによる支援者の対応の質が不十分であるという問題もあります。

本人のことを心配し、熱心に関わっているものの、本人に対し指導的に接してしまい、本人が窮屈に感じ一定の期間が経過したところで大きな問題が生ずる、といったようなこともあります。このようなことは、支援者の対応によって防ぐことができる問題ともいえます。

そこで、弁護士会としては、これまでに構築した地域の相談支援事業所など福祉関係機関との関係を活かし、触法障害者の支援等に関する研修会の実施など、触法障害者支援への理解を求めたり専門性を高めるための対応をさらに進めていく予定にしています。

(ふくしまけんた 弁護士)