「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年9月号
ひろがれ!AP(Asian&Pacific)ネットワーク
去る7月11日(月)から22日(金)まで、戸山サンライズ及び日本財団において、日本財団アジア太平洋パートナーシップ事業ワークショップが開催された。ワークショップに参加したダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業研修修了生のうち、3人の方に自国での活動を伺った。
モンゴル 当事者運動の取り組みと広がり
チョロンダワ・オンダラフバヤール〔9期生〕
自立生活センターを作る
私は、ユニバーサルプログレスという自立生活センターで活動しています。
2008年にダスキンの研修を終えた時、モンゴルに自立生活センターを作りたいと考えていました。
帰国して初めに取り組んだのは、仲間づくりでした。2010年3月に自立生活センターとしてスタートしました。活動資金は、日本でお世話になった自立生活センターから支援してもらうことになりました。オープニングセレモニーでは、アジア志(こころざし)ネットワークの人たちに障害者運動や人権について話してもらうセミナーを開催しました。セミナーには、初めてモンゴル国内から多くの車いすユーザーや重い障害のある人たちのほか、政府関係者も参加しました。今まで自分は障害者だから悪い、外に出られないのは仕方がないと思っていた人が大勢いました。しかし、社会に問題があって参加できないことが分かりました。このような意味でセミナーはとてもインパクトがありました。
活動内容
団体を立ち上げて行なったことは2つあります。
1つ目は、自立の意味を広めるためのアドボカシー活動です。モンゴルには、「自立生活」という概念がありませんでした。私も日本に来るまで知りませんでした。それをみんなに知ってもらうためにアドボカシー活動から始めました。それにはみんなが集まれる場所が必要で、事務所を作りました。そこでみんなで運動の計画作りなどを話し合いました。
2つ目は、若い学生ボランティアを集める活動です。そのために学校を回り、自分たちの活動を伝えました。
学生ボランティアが事務所に集まって、重い障害のあるスタッフを手伝ってくれます。しかし、問題もあります。ボランティアは責任がないので、好きな時間に来て、好きな時に帰ってしまいます。きちんと手伝ってほしいので、3年前から障害のない人にスタッフとして働いてもらっています。
活動の広がり
3人の仲間たちと始めた団体ですが、現在、10人の有給スタッフが働いています。10人のうち、8人が障害者(脳性マヒや筋ジス、知的障害のある人や精神障害のある人)で、障害のない人が2人です。
今年、モンゴルに障害者権利法ができました。この法律は、障害者権利条約とインチョン戦略に基づいた新しい法律です。2年間かけて作りました。法律には自立生活のことや、ピアカウンセリングなどが盛り込まれています。法律はできましたが、具体的な基準作りなどはこれからです。これまでモンゴルでは、障害者に関する法律を策定する委員会は専門家だけで障害当事者は入っていませんでしたが、最近は、障害当事者が政策作りに参加するようになってきました。私たちも委員として参加する機会があるかもしれません。その時のことを考え、他国のことを勉強したいと考えています。
モンゴルでは現在、国の2つのプロジェクトが始まります。アジア開発銀行のプロジェクトとJICAプロジェクトです。私たちはこの機会を利用して、私たちに必要な制度を作ってほしいと考えていますし、このプロジェクトの中に障害者団体が関わっていきたいと考えています。
現在、モンゴルにはILセンターが6つありますが、これからは、他の団体とネットワークを作り活動したいと思っています。そして将来的には、JILのような組織を作りたいと考えています。
(まとめ 編集部)