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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年10月号

時代を読む84

整肢療護園同窓会創立60周年によせて

整肢療護園は、高木憲次先生の療育の理念の下、日本で最初に創られた肢体不自由児施設で、現在は東京都板橋区の心身障害児総合医療療育センターの一部門としてある。

1956年12月、ここを退園した6人の仲間が1日園に集い、指導職員の方も顔を見せ楽しい時を過ごした。これが私たち療護園同窓会の始まりで、障害をもった人の姿を街で見かけることのほとんどない時代だった。園から戻っても家に籠(こも)りがちであった仲間たちの歓呼の声に迎えられ、会は瞬く間に組織化されていった。この頃は身障者の団体というのも数が少なかった。会則も整えられ、総会や新年会など懇談・会食を楽しむ催しが定例行事として設定された。自分たちの力で企画実行した年に一度のバス旅行は盛況で、2台の大型バスを連ねたこともあった。会の動向を伝える会報ももちろん編集発行された。

個人ごとで恐縮だが、私は園を出て6、7年後に誘われて会の行事に参加した。だいぶ時も経ち、初めてのことでもあり不安もあったが、会場に入るやかつての仲間たちが集まってきて私を取り囲み、久しぶり、元気? よく来たわねと、心からの歓迎を示してくれるのだった。学校と自宅を行き来するだけの平凡な学生だった私なのに、こんなにも皆から喜んでもらえるなんてと感動し、自分という存在が人から認め受け入れてもらえることが人間にとってどんなに嬉(うれ)しいことか、しみじみ感じたのだった。

親睦と相互扶助、これが同窓会の総則に付された目的である。そこには、障害があればこそ人として接し、互いに手を携えていくことが、その人を励まし、人として育み、そして生きることに勇気と希望を与えることになるのだ、とする精神があったと思う。ちなみに、入会は退園者及び会の趣旨に賛同する人の任意で、現在、313人の会員を数える。会員各自の生の歩み、体験を会の財産として共有、記録し、そして発信し、もって誰もが暮らしやすい社会の創造を願い、とする目的も後に加え、会として、福祉の向上を目指す運動への参加もし、他団体との交流も深めた。

障害をもつ私たちが、心置きなく交流・交歓できる場としての同窓会にもいつしか60年という歳月が流れていた。この間に、駅や公共施設などのバリアフリーも進み、会の発足当時は困難だった私たちも自由に街にも出て行けるようになった。会も、HPを開き、ネットでの会員の交流も盛んになるなど、時代とともにその活動も幅を広げている。だが、私たちの人を思いやり支えあおうとする会の精神は、これからも変わることはない。

会の創立60周年を迎え、記念の集いをこの秋に開催することを決定、一同心をあわせ、目下これに邁進中である。

(岩井叡覧(いわいさとみ) 整肢療護園同窓会会長)

○HP:http://neno-net2.com/