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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年11月号

障害者職業総合センター研究部門における調査・研究

障害者職業総合センター研究企画部調整室

はじめに

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の障害者職業総合センター研究部門(以下「研究部門」といいます)では、「障害者の職業リハビリテーションに関する施策の充実及び障害者職業センター等における関係業務の推進に資する」ことを目的として、調査・研究を実施しています。

このため、研究部門での調査・研究は、障害者の雇用の促進等、地域の就労支援に有効なデータを得る活動となっています。

1 調査・研究の紹介

昨年、一昨年に終了した調査・研究のうちのいくつかをご紹介します。

(1) 調査研究報告書No.126「難病の症状の程度に応じた就労困難性の実態及び就労支援のあり方に関する研究(2015)」は、近年、難病の特性を踏まえた就労支援の必要性が高まっていることから、難病患者の方へのアンケート調査(発送数5,789、回答数2,432)を行い、それぞれの難病に特有の多様な症状と程度、機能障害とこれに伴う就労困難性の実態を把握し、必要な職場や地域の就労支援のあり方を明らかにしたものです。

結果として、難病の症状は、病気に応じて固定的な面もありますが、「全身的疲れやすさ等の体調変動」という点が、難病の種類に対し横断的であり、かつ就労困難性の原因として把握されました。このため、難病のある方々にとって、疲労の回復や体調の管理に向けた勤務時間や休日等に関する配慮などが効果的な就労支援と考えられます。この結果を基に、「難病のある人の就労支援のために」というマニュアルを改訂し、2016年6月に第2版を作成しています。

(2) 調査研究報告書No.128「精神障害者の雇用に係る企業側の課題とその解決方策に関する研究(2016)」は、精神障害者雇用を進める上での課題と制約を整理し、その解決方策を探るため、各地域障害者職業センターへのアンケート調査、企業へのアンケート調査(発送数6,991、回答数2,099)、企業及び関係機関へのヒアリング調査を行なっています。

ここでは、企業を障害者採用計画(精神障害者採用可、精神障害者採用否、障害者採用無し)の3区分とメンタルヘルス不調者の職場復帰状況(復帰安定、復帰非安定)の2区分で6群に分類し、企業群の特徴を見ています。

この結果については、「「企業からみた」精神障害者雇用のポイント―メンタルヘルス対策でひらく精神障害者雇用―」というマニュアルに取りまとめています。たとえば、職場復帰状況が安定している企業ほど、精神障害者雇用の配慮に積極的である傾向が見られます。

(3) 調査研究報告書No.132「障害のある労働者の職業サイクルに関する調査研究(第4期)(2016)」は、さまざまな障害のある労働者について、その職業生活を平成20年度から平成35年度(予定)までの16年間を追跡する調査(パネル調査)の中間報告となります。当事者団体等のご協力を得て、約1,200人の方を調査対象(第4期は調査対象数1,149、回答数740)として2年に1度、職業生活に関する状況や意識を調査しています。

第4期の報告では、4期のデータと第1期から第3期までのデータを合わせて分析しており、この結果、職業の満足度や職業上のニーズに対して、障害の種類、性別や年齢、職場環境、職場への障害の説明の程度など、さまざまな要因が関連することが把握されました。本研究はこの後第8期まで予定され、蓄積されたデータを分析していく予定です。

2 研究成果の活用について

調査・研究の成果は関係者の方々に活用いただくこと、あるいは次の研究に繋(つな)げていただくことで、さらに障害のある方の雇用等に効果が得られると考えており、報告書の作成と同時に「調査研究報告書サマリー」と「調査研究の成果―活用のポイントと知見―」というパンフレットを作成しております。これらサマリー、パンフレットは、終了した研究を分かりやすく紹介していますので、是非ご活用ください。

また、すべての研究成果はホームページ(http://www.nivr.jeed.or.jp/)にPDFで登録してあり、どなたでもダウンロードが可能です。冊子等紙媒体でのご提供についても、お気軽にお問い合わせください。