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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年12月号

ユニバーサルデザイン2020中間とりまとめについて

名畑徹

概要

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、共生社会の実現に向けて、日本全体においてハード・ソフト両面のバリアフリー化を促進するため、2016年2月、オリパラ大臣を議長とするユニバーサルデザイン2020関係府省等連絡会議を設置しました。

その後、さまざまな障害者団体や有識者等40~50人の関係者で構成する分科会を計8回開催し、専門的な議論を行なって、8月には、総合的な施策の方向性をとりまとめたところです(中間とりまとめ)。分科会では、有識者、障害当事者団体、関係府省等が混ざり合い、小規模のテーブルを囲んで意見交換が行われ、各施策の内容に加えて、その前提となる考え方についても、多くの議論がなされました。

これを踏まえ、中間とりまとめ冒頭において、まず、すべての施策の前提となる考え方を整理しています。その後に、全国で人々の心にある障壁の除去に向けた取組(「心のバリアフリー」)及び物理的障壁や情報にかかわる障壁の除去に向けた取組(ユニバーサルデザインの街づくり)の2分野にわたって、委員からの指摘を踏まえた具体的な施策を記載しています。

今後、制度面等の詳細について検討を行い、年末を目途に最終とりまとめを行なった上で、今後、これらの施策を推進してまいります。

*ご参考:中間とりまとめ 本文
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/ud2020kaigi/pdf/h280802_matome.pdf

中間とりまとめのポイント

(1)前提となる考え方

・障害のある選手たちが圧倒的なパフォーマンスを見せる2020年パラリンピック競技大会は、共生社会の実現に向けて人々の心の在り方を変える絶好の機会であり、この機を逃さず、国民全体を巻き込んだ取組を展開すべき。

・そのためには、まず、障害者権利条約の理念を踏まえ、すべての人々が、障害のある人に対する差別(不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供)を行わないよう徹底していくことが必須。

・「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという「障害の社会モデル」の考え方を共有し、全国で人々の心にある障壁の除去に向けた取組(「心のバリアフリー」)及び物理的障壁や情報にかかわる障壁の除去に向けた取組(ユニバーサルデザインの街づくり)を進めるべき。

(2)施策の内容

〈心のバリアフリー〉

ユニバーサルデザイン2020で取り組む「心のバリアフリー」とは、さまざまな心身の特性や考え方を持つすべての人々が、相互に理解を深めようとコミュニケーションをとり、支え合うことです。そのためには、一人ひとりが具体的な行動を起こし継続することが必要です。

また、「心のバリアフリー」を実現するための施策は、あらゆる年齢層において継続して取り組まれなければならない課題であるとともに、学校で、職場で、病院などの公共施設で、家庭で、買い物や食事の場で、スポーツ施設や文化施設など地域のあらゆる場において、また、日々の人々の移動においても、切れ目なく実現されなければなりません。そのためには、幅広く国民を巻き込み、各地に根差して取り組んでいく必要があります。

よって、実施すべき取組を、学校、企業、地域及び国民全体、そして障害のある人による取組に分けて検討し、その方向性を示すこととしました。

(具体的施策)

1.学校教育における取組(幼・小・中・高・大)

・学習指導要領改訂を通じ、各教科の教科書に「心のバリアフリー」についての記載を充実 等

2.企業における取組

・経済界協議会と連携し、「心のバリアフリー」社員教育を行うよう幅広い分野の企業へ働きかけ

・交通事業者に向けた全国共通の接遇対応ガイドラインを作成 等

3.地域における取組

・地方自治体、社会福祉協議会等が連携し、地域の人々に「心のバリアフリー」を浸透させる取組を実施 等

4.国民全体に向けた取組

・特別支援学校を拠点としてスポーツ・文化・教育の祭典を実施 等

5.障害のある人による取組

・障害のある人自身がコミュニケーションスキルを身に付けるための取組を進める地方自治体を支援 等

〈ユニバーサルデザインの街づくり〉

わが国において、交通分野、建築・施設分野のバリアフリー化については、平成18年以降、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法)のもと、交通施設、建築物等の種類毎に目標を定め、個々の施設のバリアフリー化と地域における面的なバリアフリー化に全国的に取り組み、一定の水準まで整備が進んできました。東京大会は、こうした取組に加え、世界に誇ることのできるユニバーサルデザインの街づくりを目指して、さらなる取組を行う好機です。

そのためには、まず、大会の競技会場、アクセス経路等においてTokyo2020アクセシビリティ・ガイドラインのもと、より高次元のユニバーサルデザインを実現することが求められています。

さらに、観光先進国を実現するために、障害のある人、高齢者、家族連れや重い荷物をもった人など、すべての旅行者がストレスなく快適に観光を満喫できる環境づくりに向けて、全国各地の観光地や交通機関において、より高い水準のユニバーサルデザインの街づくりを推進すべく、全国各地において高い水準のユニバーサルデザインを推進していくこととしております。

(具体的施策)

1.東京大会に向けた世界水準での重点的なバリアフリー化

・競技会場やその周辺エリアの道路、駅、空港等において東京大会で求められる世界水準のバリアフリー化を実現 等

2.全国各地において高い水準のユニバーサルデザインを推進

・Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン等を踏まえ、交通バリアフリー基準・ガイドラインの改正、建築設計標準の改正

・施設毎のバリアフリー化に加え、大規模駅や地下街等複合施設における連続的かつ面的なバリアフリーを推進

・公共交通機関等のバリアフリー化

・ICTを活用したきめ細かい情報発信・行動支援 等

今後の予定

今後、この中間とりまとめをベースに、制度面等の詳細について、障害者団体や学識経験者等と議論を深めるべく、11月以降、分科会を開催し、年末を目途に最終とりまとめを行う予定です。なお、この最終とりまとめにおいては、各施策の具体化に加え、毎年、これら施策についてどのようにPDCAサイクルをまわしていくかについても盛り込む予定としております。

引き続き、東京大会を契機として、共生社会の実現に向けて関係府省等と連携して、取り組んでまいります。

(なばたとおる 内閣官房 東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局参事官補佐)