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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年12月号

ユニバーサルデザインに配慮した「人にやさしい」まちづくりに向けた取組
~川崎駅東口駅前広場再編整備~

川崎市まちづくり局総務部企画課

1 はじめに

川崎市は、首都圏の拠点都市(業務核都市)の一つとして、自立性の高い都市機能の形成や隣接都市との連携強化、広域都市機能を支える交通ネットワークの強化等を進めてきた。

また、川崎駅周辺エリアは、川崎市総合計画において「広域拠点」の一つとして位置づけられており、羽田空港や東京・横浜へのアクセスの良さ等、地理的優位性を最大限活かしたまちづくりを進めている。

こうした中、同エリアにおいて、2003年には、川崎駅東口、西口周辺を都市再生緊急整備地域に、2014年には、国家戦略特別区域に指定されるなど、わが国を代表とする国際的なまちづくりをめざし、現在もさまざまなプロジェクトが進行している。

2 川崎駅東口地区の課題

近年、川崎駅西口エリアでは、時代の変化に伴い、大規模商業施設や都市型住宅を中心とした再開発と同時に、道路や西口北バス乗り場などの基盤整備を進めてきた。中でも、川崎の新たなイメージである「音楽のまち・かわさき」を全国に発信する「ミューザ川崎シンフォニーホール」や大規模商業施設である「ラゾーナ川崎プラザ」などの完成により、魅力ある地域として生まれ変わり、大きな賑わいを見せている。

これに対し東口エリアは、昭和61年度に駅前広場が整備されてから、築20年以上が経過して、施設が老朽化していた。また、車と歩行者を地上・地下で分離することで、安全性に配慮した構造となっているものの、駅と市街地の歩行者動線は、交通広場を迂回する必要があることや、バス乗り場が7つの島に分離されており、バスを利用するためには、地下街から階段によりアクセスする必要があるなど、歩行者の回遊性や交通施設を利用する際のバリアフリー化が課題となっていた。

3 川崎駅周辺地区のまちづくりの方向性

川崎駅周辺エリアの回遊性・利便性の向上やバリアフリー化の促進等を図るため、学識者・市民・公共交通事業者及び商業者から構成する「川崎駅周辺総合整備計画策定協議会」を設置し、平成18年4月に、川崎駅周辺地区のめざすべきまちづくりの方向性を示す「川崎駅周辺総合整備計画」を策定した。

本整備計画策定後、10年が経過し、少子高齢化の更なる進展や、東日本大震災の発生など社会状況の変化を踏まえ、平成28年3月に本整備計画を改定した。

改定後のまちづくりの方向性として、1.魅力と活力ある広域拠点の形成、2.地区内を往来しやすいまちづくり、3.安全・安心に過ごせるまちづくり、4.人と環境にやさしく持続可能なまちづくり、5.個性的で賑わいのあるまちづくり、6.市民協働のまちづくり、の6つの基本方針を位置付け、これまでの取組の成果を活(い)かしつつ、新たな課題等に対応したまちづくりを推進している。

4 川崎駅東口駅前広場再編整備計画の整備方針

こうした中、東口駅前広場においては、広場の総合的な課題解決に向けて、平成18年8月より、「川崎駅周辺総合整備計画策定協議会」を再組織した「川崎駅周辺総合整備事業推進会議」において、学識者、市民、公共交通事業者、商業者等との議論を重ね、川崎駅東口駅前広場再編整備計画として、次の4つの整備方針を策定した。

方針1「駅と街を快適に移動できる往来しやすい駅前広場」

駅前広場中央で駅前道路を横断し、地上で駅と街を結ぶ新たな歩行者動線を設置すること、現況の歩道の拡幅や新たな歩行者動線による歩行者交通の分散により、歩行者空間の混雑緩和を図る。

方針2「川崎市の玄関口にふさわしい賑わいとゆとりのある駅前広場」

歩行者が滞留し憩える空間の確保や、玄関口にふさわしい景観形成に有効な空間確保、さらには、地下街の階段上屋を減らすことなどにより、駅前広場の見通しを確保する。

方針3「交通施設がわかりやすく利用しやすい駅前広場」

交通施設へ地上から直接利用できるようにするとともに、乗り場案内などの情報を提供することで、バリアフリー化が図れることやわかりやすい駅前広場にする。

方針4「円滑な交通流機能を持った駅前広場」

各交通施設の機能、役割、特性に応じたゾーニングをもとに円滑な動線形態が可能な施設配置を行う。

5 川崎駅東口駅前広場におけるバリアフリー化の取組

これらの整備方針を踏まえ、また、アーバンデザインとしての「川崎の顔」となる景観にも配慮しながら、「バリアフリー」と「環境配慮」をキーワードに、次のとおり整備を推進した。

1.川崎駅西口の再開発と併せて整備した新たなバスターミナルに、川崎市幸区方面行きのバス停を移すことで、東口駅前広場に空間的な余剰を生み出し、平成21年6月には、川崎駅東口駅前広場再編整備工事に着手した。再編整備にあたっては、まず7つあったバス島を2つに集約し、歩行者が地上を平面で移動できるようにすることで、バリアフリーの問題を改善するとともに、歩行者の回遊とゆとりのある広場空間を生み出した。

2.閉鎖的な地下街への階段の上屋を撤去し、高い位置にガラスの大屋根を設けることで、開放的な空間を確保するとともに周辺への視認性を高めた。

さらに大屋根と連続して、バス島でつながるガラスの回廊を設けることによって、東口からバス島まで車いす利用者等が雨にぬれず移動できる経路を確保した。

3.施設整備にあたっては、身体障害者・聴覚障害者・視覚障害者等を交えた「まち歩き点検」を実施し、改善点や要望等を踏まえ、広場の路面素材は滑りづらく・目地の少ないものを採用したり、車いす使用者に配慮したバス案内板等を設置した。

4.全国初となるユニバーサルデザインタクシー専用の乗り場を整備するとともに、ユニバーサルデザインタクシーの購入にあたり、事業者への補助制度を創設した。

6 おわりに

こうした歩行者、バスを優先する駅前広場の再編整備を進めることで、一般利用者のみならず、障害者・高齢者の移動円滑化にきめ細かく配慮した、「人にやさしい」バリアフリー化の取組に対して、平成27年1月に、国土交通省から高く評価いただき、バリアフリー化推進功労者大臣表彰を受賞した。さらに、この波及効果として、地域をつなぐ拠点としての機能が向上し、まち全体のつながりが生み出された。

今後も、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催や企業のグローバル化等による外国人来訪者の増加を見据え、引き続き、誰もが利用しやすいユニバーサルデザインの取組を推進するとともに、駅東西の回遊性の一層の向上を図るなど、「人にやさしい」まちづくりを進めていく。