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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年12月号

2016私が選んだ今年の5大ニュース

蟻塚亮二(ありつかりょうじ)

1947年生まれ、精神科医。沖縄戦によるPTSDをみつけて診療。2013年から福島県相馬市のメンタルクリニックなごみで、被災者の診療に従事している。著書に『3・11と心の災害』(大月書店)。

1 相模原障害者施設殺傷事件

7月26日未明に相模原市の障害者施設で、19人が殺され多くのけが人。犯人は事前に大島衆院議長に事件をほのめかす手紙を送っていた。「障がい者は殺した方がいい」とする自分の考えを、国も当然承認するものと犯人は思っていたようだ。それは障がい者を排除する国の姿勢を反映したものである。

2 「自業自得の透析患者は殺せ」

元フジテレビアナウンサーのHが9月のブログで、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と書いた。弱いものに対するヘイト。

3 沖縄の市民に「土人呼ばわり」

参院選で沖縄の自民党は全敗した。選挙が明けるなり、政府は沖縄の山岳地帯に、事前にその存在を隠してオスプレイの発着場を作る工事を強行。抗議していた芥川賞作家の目取真俊氏に、大阪の機動隊員が「土人」と呼んで侮蔑。これは沖縄県民に対するヘイトである。

4 障害者総合支援法の質疑に当事者拒否

5月に衆院厚生労働委員会で行われた障害者総合支援法改正案を巡る参考人質疑で、意見を求められていた筋萎縮性側索硬化症男性患者の出席が拒否された。反対した与党側の、障害者に対するヘイト感情が表面化。

5 明治公園の野宿者追い出し

4月、明治公園にテントで暮らす野宿者が強制排除された。オリンピック・パラリンピック施設を作るために、野宿者のことなど虫けらなみだった。「放射能はコントロールされている」と大嘘ついて誘致したオリンピック反対。


市川亨(いちかわとおる)

全国の新聞・テレビなどに記事を配信する共同通信社・生活報道部記者。1972年山梨県生まれ。地方支局や厚労省担当などを経て、2011年から3年間、ロンドン特派員。16年から2度目の厚労省担当キャップ。ダウン症のある子の親でもある。

1 相模原の障害者施設殺傷事件

取材の一端に加わった厚生労働省担当の記者として、知的障害のある子を持つ親として、さまざまなことを考えた。政府の検証は精神科医療に偏っていないか。警察の対応は十分だったか。一方で「犯罪の恐れがあるから」と事前に取り締まるようになったら、警察権力の暴走を招かないか。いずれにしても、容疑者のような差別思想が社会に潜んでいるという現実から、目を背けてはいけないと思う。

2 リオ・パラリンピック

次の東京五輪・パラリンピックを控え、メディアの注目度は格段に高まった。2012年のロンドンでの盛り上がりを実際に目にした者としては、東京大会では物理的なバリアフリーより「心のバリアフリー」が進むことに期待したい。

3 障害年金の判定に新たなガイドライン

手前みそだが、2年前に書いた「障害年金で不支給と判定される人の割合に、都道府県間で最大6倍の差がある」という記事がきっかけとなり、日本年金機構が精神・知的・発達障害を対象に、9月から新たなガイドラインを導入した。ただ、制度の根本的な矛盾は解消されておらず、今後の検証が不可欠だ。

4 障害者差別解消法が施行

改正障害者雇用促進法とともに「合理的配慮」を定めており、4月に施行された。何をすればいいのか、障害者と話し合って柔軟に対応する。それが合理的配慮の本質だと思う。

5 障害者文化芸術推進法案が国会提出へ

優れた作品の発掘や発表の場の確保などを盛り込んだ新しい法律案が、超党派の議員連盟によって国会に提出されることになった。既成の概念にとらわれない作品の魅力が、多くの人に伝わってほしい。


大津留直(おおつるただし)

1947年8月、三重県に生まれる。難産による脳性麻痺で歩行・言語障害。都立光明養護学校小・中学部卒業。早稲田大学文学研究科修士課程終了。チュービンゲン大学で哲学博士号を取得。1996年帰国。関西学院大学・大阪大学で非常勤講師。現在、あけび短歌会選者。しののめ会員。加齢による全身麻痺の重症化にあって、作歌が生きがいとなっている。

1 2月21日、NHK短歌で次の拙歌が特選第一席に選ばれる。選者は栗木京子

悔いの鬼妬みの魔女らわが内に飼ひつつもとな渋茶を啜る

また、8月7日には次の拙歌が入選。選者は坂井修一。

オリーブの熟るる実に似る児らの眼か一粒ごとに海を宿せる

2 4月14日に続いて、4月16日、熊本で震度7の地震が発生

5年前の東日本大震災の教訓が生かされず、多くの障害者が困難な生活を強いられた。その地震を詠んで「あけび」6月号に発表した拙歌。

激しくも揺れゐる床にへたへたと坐りてなゐの収まるを待つ

3 5月1日、水俣病の公式確認から60年

いまだに多くの患者たちが病苦と差別のもとで苦しんでいる。次の拙歌は未発表。

水俣の海の上(へ)に照る月かげは病苦を刻む碑(いしぶみ)を抱く

4 7月26日、相模原市の津久井やまゆり園で入所者19人が殺害される戦後最悪の殺人事件が発生

この衝撃的事件について、現代短歌新聞に発表した5首のうちの2首。

刃今首に刺さりて薄れゆく意識のうちになぜと問ひけむ

意思疎通出来ぬ一人とわれもまたその場にをらば刺されゐにけむ

また、次の歌を「あけび」11月号に発表。

脳障害如何に重くも意思疎通出来ぬ子なしとその母ら言ふ

5 11月13日、次の拙歌が八女市短歌会で特選に選ばれた

麻痺われの介護に疲れ眠りたる妻にゐざりて毛布かけやる


黒岩海映(くろいわみはえ)

1999年4月に弁護士登録し、水戸事件(知的障害者虐待事件)弁護団に加わる。2001年から日弁連で障害者差別禁止法制定へ向けた活動に関わり、現在、日弁連の障害者差別禁止法制に関する特別部会の副部会長。

1 障害者差別解消法施行!

4月1日にいよいよ、障害者差別解消法が施行されました。民間事業者の合理的配慮が努力義務にとどまり、司法と国会が対象外で、紛争解決の仕組みが規定されないなど不十分な点はありますが、頑張って育てていきましょう。

2 相模原やまゆり園虐殺事件

差別解消法施行の年に、重度の障がいをもつ19人の方々が殺害されるというあるまじき事件が起き、私自身、心の傷が癒えていないのが正直なところです。これを機にあらためて、大規模入所施設のあり方や幼少期からのインクルージョン(保育・教育)を真剣に考えなければなりません。

3 国連障害者権利委員会の委員に日本人・石川准氏が就任

国連障害者権利条約に基づく障害者権利委員会の委員に、初めて日本人が選出されました。ご活躍に期待します。

4 新潟市と地元・南魚沼市で冬季スペシャルオリンピックス開催

2月、知的障害のある人たちがスポーツを競うスペシャルオリンピックスが私の地元で開催され、初めて観戦しました。一人ひとりが自分の目標に向かって打ち込めるよう工夫の凝らされたイベントで、もっと広まってほしいと思いました。

5 ALS患者が国会参考人招致を拒否される

5月、障害者総合支援法改正の審議のために衆議院厚労委員会に招致されていたALS患者の岡部宏生さんが、「答弁に時間がかかる」として招致を取り消された事件。障害者差別解消法が国会に及んでいないことを問題にしていく必要があります。


小坂育人(こさかいくと)

1969年東京生まれ。関東医療少年院専門官。大学在学中に法務教官として神奈川医療少年院に採用され,その後配置換えとなり現在に至る。障害を抱えた仲間との音楽活動を通じて,人の関わりに障害など関係ないと感じている。

1 相模原市の施設で利用者19人死亡

亡くなられた方はもちろん、他の利用者やそのご家族も、心身ともに安心安全な場が侵され、辛い日々を送っておられると思うと、とても苦しい。職業柄、加害者のことも考える。あのような人を作り出してしまったのは、一体何なのか。多少なりとも警察や医療が関わったという点からも、思うところが多い。

2 バリバラと感動ポルノ

今夏に放映された2つのテレビ局の番組について、一方は「バリバラ」、もう一方は「感動ポルノ」だと評され、ネットで話題になった。「感動ポルノ」を叩く論調が目立っていたが、それを眺めて、どちらがどうでと考えている自分に、はたと気付き、上から目線になっている自分を嫌悪。

3 パラリンピック

過去の大会と…、少なくとも4年前と比較して、格段にテレビ放映の機会が増えたように感じた。「これ僕もやってみたい!」と思う競技がたくさんあり、また趣味が増えてしまいそうである。

4 改正少年院法施行から1年半が経過

改正された少年院法が昨年6月1日に施行となり、まもなく1年半が経過する。第146条に「退院者等からの相談」が規定されたことにより、退院者のカンファレンスに参加する機会が増え、「ぶつ切りの支援」から少しずつ「つながりある支援」へシフトしつつある。

5 アジア国際子ども映画祭

当院には、障害を抱えた者が多く在院している。その在院者が創ったショートムービーが、アジア国際子ども映画際に出品された。この号が発刊される頃には、受賞したか否か、結果が出ている。


酒井ひとみ(さかいひとみ)

日本ALS協会理事。東京都出身。2007年6月頃にALSを発症。“ALSはきっといつか治る病気だ”という強い意志をもちながら、ALSの理解を深めるための啓発活動に取り組んでいる。仕事や子育てをしながら、夫と2人の子どもと楽しく生活している。

1 相模原やまゆり園事件

この事件は、普通に何も考えずに過ごしている健常者にとっては、(あったね)というくらいの事件かもしれませんが、この事件は、私たち重度障がい者にとっても、決して他人事では無い出来事でしたので、風化させないために最初にもってきました。

2 障害者総合支援法の改正案国会で成立

これは、私たちALS患者の長年の夢だった入院時コミュニケーションのための24時間介護が、重度訪問介護を利用して使えるようになるという制度が組み込まれることになったものも入っているので、大変喜ばしいニュースです。

3 ALS患者厚労委員会参考人招致の取り消し(衆議院)と実現(参議院)

これは、当協会の会長が拒否されたという大変物議を醸したものでした。この出来事は、重度障がい者の私たちを侮辱しているとしか思えないものでした。

4 某アナウンサー、人工透析の患者に対する差別的発言

このアナウンサーのブログを最初から最後まで読むと、どうしてこのような考えになり、そして今はそういう考えでは無いということが分かると聞きました。しかし、一部の優生思想の持ち主から支持されているのも事実です。このような考えがこの世から消え去ることを願ってやみません。

5 漫画「宇宙兄弟」の作者・小山宙哉さんの公式サイトで、自身のALS人生のエッセイ連載中

5月から連載を始めたエッセイも、もう8回を迎えました。よろしければ、ぜひご一読ください。


土屋葉(つちやよう)

愛知大学教員。専門は障害学、家族社会学。障害のある人と家族の関係について考えてきた。最近の研究テーマは障害のある女性をめぐる差別構造について。著書に『障害者家族を生きる』(勁草書房)、『大震災の生存学』(青弓社、共著)、また障害学研究会中部部会運営委員の一人として『愛知の障害者運動―実践者たちが語る』(現代書館)の刊行に携わった。

1 愛知県手話言語・コミュニケーション条例施行

障害者差別解消推進条例につづき、「手話言語の普及及び障害の特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」が施行。手段として手話、要約筆記、点字、触覚を使った意思疎通、音訳、平易な言葉などが想定されており、手話以外に幅を広げた条例の制定は都道府県では初めてだという。

2 相模原事件への声明が相次ぐ

事件に対し「手をつなぐ育成会連合会」、「DPI日本会議」、「日本障害者協議会」、「障害学会」など多くの団体や学会から声明が出された。いずれも強い怒りと悲しみが表明され、事件の背景にある社会や制度のあり方に再考をせまるものである。長期的に考えていきたい。

3 障害女性をめぐる複合差別への関心が高まる

DPI女性障害者ネットワークは、ジュネーブの国連本部で行われた女性差別撤廃委員会で、日本の障害女性がおかれている差別の現状を伝えるロビーイング活動を行なった。報告会も京都など全国6か所で開催され、この問題に対する認識が徐々に広がりつつある。

4 「感動ポルノ」への異議申し立て

おなじみ「24時間テレビ」の裏で放送され、障害者のドキュメンタリーが「感動ポルノ」として仕立て上げられていると批判した番組、「検証!『障害者×感動』の方程式」(バリバラ)が注目を集めた。これをきっかけとして、障害者の描き方が再考されることを期待。

5 「国家を支える家族」再び?

自民党は来年「家庭教育支援法案」(仮称)を提出予定だという。同党の憲法第24条(家族、婚姻等に関する基本原則)の「改正」草案とあわせ、現行憲法の個人を基礎とし尊重する考え方を覆すものであり、男女や親子の役割が再び固定化されることが危惧される。


西村顕(にしむらあきら)

1978年三重県生まれ。横浜国立大学大学院修了。博士(工学)。一級建築士。2003年より横浜市総合リハビリテーションセンターで障害がある人の住まいに関する相談や調査研究に従事。(一社)日本リハビリテーション工学協会副編集委員長。

1 相模原障害者施設殺傷事件(7月26日)

容疑者の思想や言動、被害者の氏名未公表等、とにかくいろいろな意味で衝撃を受ける。「障害がある人の暮らし」や「人が生きる意味」など、まずは自分自身の頭で真剣に考え、行動しながら探求し続けていきたい。

2 熊本地震(4月14日)

体育館に避難した自閉症の方が「体育館は走り回る場所なのに、どうしてじっとしないといけないの?」と尋ねた報告が印象に残っている。被災地に平穏な日常がはやく戻ってきてほしい。

3 障害者差別解消法施行(4月1日)

当センターでは、全国ビルメンテナンス協同組合連合会と一緒に、冊子「障害のある人たちが活躍できる職場環境を考えよう!知的・発達障害編」を作成。合理的配慮の考え方や具体例を参考にしてほしい。当センターのHPよりダウンロード可。

4 第43回国際福祉機器展(H.C.R.)開催(10月12日~14日)

私は冊子「医療的ケアが必要な子どもの住まいの工夫」をつくり、「子ども広場」ブースで3日間の建築相談に意気込んでいたが、2日目にお腹を下し無念の欠席(3日目は復帰)。冊子はH.C.R.のHPよりダウンロード可。

5 本の出版(8月15日)

『知的障害・発達障害のある子どもの住まいの工夫ガイドブック』を中央法規出版より上梓。改造費用の目安や医師(共著者の本田秀夫氏)からのアドバイスを載せている。新聞に本の内容が紹介され、一時的にオンライン書店(アマ○ン)の分野別ランキング第1位に。感涙。


浜崎倫洋(はまさきのりひろ)

1975年生まれ。鹿児島国際大学社会福祉学科卒業。学生時代のボランティア活動を通じて、麦の芽福祉会に就職。以降、障害者施設、高齢者施設を経験して、現在は、虹のセンターの施設長と関連会社の吉野温泉の店長を兼任。

1 改正社会福祉法は、おかしい

「自助・共助」「我が事・丸ごと」、言葉を巧みに用いて、公的責任を隠そうとしている国の方針! このままでは、福祉がサービスに! 高齢・障害や貧困は自己責任だと責められる日本に変質してしまいます。

2 障害者施設での殺人事件は、他人事ではない

元職員の手により帰らぬ命とされてしまいました。事件もその後の報道も衝撃的でした。障害の有無に限らず命は平等のものです。優劣やいらない命などありません。どんな障害をもっていても家族、地域、社会の中で誰もが認められ安心して生活できる国であってほしいと感じています。弱さを認められ、支えあえる社会の空気が必要です。

3 熊本地震はまだ続いています。東日本大震災もまだ…

障害をもつ方々への支援もまだ続いています。震災前の当たり前の日常をいつになったら取り戻せるのか、不安な日々が続いている人たちが復興に向かっている今でも、悔しい思いをされている人がたくさんいます。国が、我が事として誠実に丸ごとの支援をするべきでは…。

4 被災地熊本で、きょうされん全国大会の成功

2200人を超える参加者を集めての全国大会成功!大会スローガンの「障害者権利条約をこの国の文化に」を参加者はもちろん、当事者たちの手によって、地域・社会に広めることのできた大会でした。障害をもつ人を身近に感じ触れ合う機会を重ねることで、どんな人も認められる社会の空気が広がると信じます。

5 ともに働く障害をもつなかまを“むぎのめ葬”で送る

一緒に全国大会に参加したなかまが自宅で亡くなりました。信じられない突然の死。最期の支援として、葬儀を行いました。たくさんの親族に囲まれ、ともに働き暮らすなかまたちとともに見送ることができました。とても悲しいことでしたが、愛し愛されている人でした。


福井公子(ふくいきみこ)

1950年生まれ。徳島県阿波市在住。自閉症で重い知的障害のある次男(41歳)と暮らす。阿波市手をつなぐ育成会会長。月に一度、「おしゃべり会」を開催し、親同士の自由な語り合いや家族支援ワークショップなどを企画している。著書に『「障害のある子の親である私たち~その解き放ちのために~』(生活書院)。

1 施設に「刺又」

津久井やまゆり園での事件を受け、息子が通う施設に「刺又(さすまた)」と「ネットランチャー」なるものが備えられる。防犯訓練の様子を見て、つくづく思う。支援員さんに「刺又」は似合わない。

2 住民から反対運動!

グループホームを開設しようと近隣住民に説明したところ、強い反対に遭い断念したという話を身近で聞く。障害者差別解消法が施行された記念すべき年。しかし、どう活(い)かしていくかはこれからの課題。

3 被害者が増える!「成年後見人制度」

被後見人の預貯金を使い込んだとして社会福祉士の男が逮捕され、近隣の町で5人が被害に。近ごろ増えてきたこの手の事件。後見人制度、何らかの対策が必要では?

4 医療的ケアが必要な子どもの家族に朗報!

課題とされていた、重度の障害や疾病のある子どもを対象にした児童発達支援事業所が県内で初開設、放課後のケアも可能に。最も困難な子育てこそ、最優先で支援されるべきだと思う。

5 働くお母さん、急増!

放課後の支援が充実して、「働きたい!」という親たちの願いは叶った。しかし、親たちの孤立と生きにくさは深まるばかり。「おしゃべり会」の参加者も激減。ほんとうの家族支援とは何なのだろう?


ボーレグレーン松井芳子(まついよしこ)

1962年千葉県生まれ。1993年夏よりスウェーデン在住。ストックホルム大学社会福祉学科卒業。Socionom(社会福祉士及びいくつかの福祉専門職を統合したものに相当)取得。現在、ルンド大学社会福祉学科博士課程在籍。

1 EU障害(福祉)戦略2010―2020、後半期

障害者の権利保障及び社会・経済生活への平等参加を目指す10か年戦略。いくつかの障害団体がまとめた中間報告によると、まだ多くの課題が残る。後半の取り組みに注目したい。

2 養護学校卒業後の進路について全国規模の調査(スウェーデン)

卒業生の大半が日中活動センターを利用していると思われていたが、実態は半数以下。日中活動(就業・就学も含む)に従事していない者は約4分の1を占めた。

3 カール・グルーネワルド氏、逝去

ノーマライゼーション原理提唱者ベングト・ニリエ氏が亡くなられて10年。今年6月、知的障害福祉向上のもう一人の立役者が他界された。ルンド大学名誉教授、また、社会庁の障害福祉及び精神医療分野で専門家として重要ポストを歴任された。

4 ルンドのクラブハウス開設5周年

1940年代末にNYで生まれた精神障害リハビリテーションモデルに基づく活動を展開するクラブハウスは、スウェーデンに現在12か所。ルンドのそれは2番目に新しい。そこではルンド大学と協同でユニークな活動も。精神のバランスを崩し修学が困難な学生たちをサポートしている。利用者の中には外国人留学生もいる。

5 相模原の障害者施設殺傷事件

「少なくとも19人が刃物により殺害」―スウェーデンの多くのマスメディアがこのような見出しで報じた。スウェーデンではどのように受け止められたのだろうか。亡くなられた方々のご冥福をお祈り致します。


渡辺明(わたなべあきら)

1967年東京都生まれ。社会福祉法人日本点字図書館用具事業課長。視覚障害のある人向けの製品販売に携わるかたわら、過去の視覚障害者向け製品の収集、調査などを行なっている。視覚障害リハビリテーション協会会員。

1 駅ホームからの視覚障害者の転落事故相次ぐ

「欄干のない橋」。この表現は40年以上前にあった転落事故での裁判で、視覚障害の支援者がホームの危険性を一般の人に分かりやすく表現した言葉である。時を経て、点字ブロックなどインフラは整備されてきた。しかし転落事故は起きている。周囲の人の手と目を貸してほしいと切に願う。

2 ユニバーサルシアター「シネマ・チュプキ・タバタ」オープン

目や耳が不自由な人のほかどんな人も、安心して映画を楽しめるような配慮がされている。障害特性に応じたサポートがうれしい映画館である。

3 ハイブリッドカー「車両接近通報音」義務化

車の走行音が周辺の環境音より静かであることは環境にやさしいのであるが、音を手掛かりに歩いている視覚障害者にとって危険であるといわれている。2010年にガイドラインができたが、今回はその強化である。

4 「マラケシュ条約」発効

視覚障害のほか学習障害、上肢障害など印刷物を読むことが困難な人に著作物を点字、デイジー図書、大活字などへの変換を認める国際条約である。国内では著作権法ですでに認められている項目もあるが、今後、対象者や提供者の範囲の確定などの法整備と条約の批准が望まれる。

5 障害者差別解消法施行

「合理的配慮」がキーワード。各自治体や業界団体によってガイドラインが作られてきている。特別や過剰ではなく、障害を補う必要なサービスとして社会全体が受け入れることを希望する。