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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年12月号

ワールドナウ

第2回CBR世界会議報告

上野悦子

はじめに

2016年9月27日から29日まで、マレーシアのクアラルンプールで第2回CBR世界会議が開催された。第1回世界会議は2012年にタージマハールで知られるインドのアグラで行われた。今回の主催者はCBRグローバルネットワークで、協力団体にWHO、CBM(ドイツにある国際NGO)、地元開催団体はCBRマレーシアネットワークなどである。参加者は主催者発表によると約1,100人、うち海外から約600人であった。

概要と主なプログラム

テーマは「CBR:エンパワーして可能にする」で、全体会は3、分科会は19あった。前日の26日には、3つのワークショップが並行して開催された。1つ目のBridgeプロジェクトは、障害者団体がインクルージョンと権利条約とSDGsトレーニングプログラムに関するワークショップ。2つ目は災害リスク削減とCBR、3つ目は適切な車椅子支給に関するプログラムである。

初日の開会式では、マレーシア女性・家族・コミュニティ開発省大臣Rohani Abdul Karim氏が歓迎の挨拶と開会宣言を行なった。開会式には、リオで開催されたパラリンピックメダリスト3人が招かれ、競技の様子がビデオでも紹介されて会場を沸かせた。

基調講演は、Basic Needsというイギリスに本拠地のある精神障害のある人の支援を行うNGOの創設者で代表のChris Underhill氏が発表した。Underhill氏は、権利条約とSDGs(持続可能な開発目標)とCBRのアプローチを比較して、権利条約とSDGsは原則的なことをトップダウンで進めるのに対し、CBRはコミュニティ全体をとらえ、障害のある人、家族、市民が実践に関わり、ボトムアップで行われるという特徴を明らかにした。

準備からの大きな流れ

第2回CBR世界会議の特徴の1つは、大きな流れがCBR世界会議前から作られていたことである。それは、今年6月から7月に、WHOにより行われたCBR意識調査から始まった。CBR世界会議のプレ会議調査というサブタイトルもつけられたこの調査では、WHOは全世界を対象に、大きく分けてCBRに関する3つの設問を行なった。1.CBRに関わる関係当事者と持続発展性、2.CBRの実践、3.CBRの将来について、である。質問は全部で24、回答はオンラインで行うもので個人でも参加できた。

具体的な設問は、(あなたにとって)CBR実施の最大の障壁は何か、グローバルレベルのCBRトレーニングカリキャラムの必要性、CBRという名称を変えたほうがよいかなどである。CBRの名称変更については、約71%が変えないほうがよい、残りの29%が変えたほうがよいで、どう変えたらよいかについては、Community based Inclusive Development, Community based inclusive approach, Community based inclusion, など20もの多彩な提案があった。回答数は256で、全設問に対し50%以下しか回答しなかったのを除くと149が有効回答数。ほかに世界の各地域で、フォーカスグループによるディスカッションが行われ、CBR世界会議で配布されたフィードバックペーパーに紹介されている。

インターアクティブセッション

CBR意識調査の結果が、第2回CBR世界会議のプログラムに反映されていた。インターアクティブセッションが毎日1時間半設けられ、7つの会場で、同じテーマでワークショップ形式で行われた。3日間のテーマは、CBR意識調査の設問の3つの枠と同じに設定された。それぞれ関係当事者と持続発展性、CBRの実践、CBRの将来についてである。

7つの会場にはIDDC(国際障害と開発コンソーシアム)から経験豊富なファシリテーターが配置され、会場内の小グループでの意見交換から会場内で共有という進め方で、さらに終了後、全体会での議論の結果を共有するという企画であった。小グループから全体会まで、まるでコミュニティレベルから国際レベルでの意見交換に3日間参加したような気分を味わえて、発言の機会が一人ひとりに確保されていた。

また、要録集や参加した外国の人に感想を聞いてみた結果、今回の発表ではCBRが医学モデルとしてとらえた発表は影を潜め、CBRを地域社会開発の一環として、インクルージョン達成の戦略とする考えが多く示されたことが読みとれた。また全体的に観念的なことより、実践に基づくインクルージョンの持続発展性の要因を出し合うことが見られた。

閉会式

3日目の閉会式では、2016クアラルンプール宣言が採択された。また次回、2020年に予定される第3回CBR世界会議の候補地は、アフリカのジンバブエとウガンダ及び南米のチリの3か国から今年中に決まるとのことであった。

アジア太平洋地域からはモンゴルから参加していた政府代表者が、2019年の第3回アジア太平洋CBR会議がモンゴルで開かれることを紹介し、参加を呼びかけた。

(うえのえつこ 日本障害者リハビリテーション協会国際課)