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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年1月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●余暇を楽しむ~ラフティングを楽しんでいます!、他●

提案者:北村佳那子 イラスト:はんだみちこ

北村佳那子(きたむらかなこ)さん

私は、現在28歳、3年前からグループホームで暮らしています。小学2年から大阪に住み、小・中・高と普通学校に通い、「大学入試センター試験」を4度受験。関西大学(聴講生)に5年通い、自主卒業。「チームかなこ」として、講師の仕事をしています。2016年の春「糸賀一雄記念未来賞」を受賞。レンノックス症候群などがあり、重度心身障害と言われています。

佳那子さんは、日常生活に全介助が必要で、言葉を話すこと書くことはできません。今回の原稿は、佳那子の母、山崎(「チームかなこ」で佳那子さんと共に講演活動、ヘルパー)が文章を書きました。文章を作成する時は、佳那子さんの表情や声で確認しながら文章を作り、読み上げる作業を繰り返しています。


余暇を楽しむ~ラフティングを楽しんでいます!

「何も分からない、何もできない」と医者から言われた娘が、唯一体を動かすことができたのがお風呂。できることが少しでも増えればと思い、1歳からプールに通い始め、小学校ではフロートを着け、ゆっくりですが足を動かし楽しむようになりました。

ラフティングを始めたのは7年前。ガイドさんに障害を伝え工夫をして楽しんでいます。体温調節が難しいため、冷えないようにウエアを重ね、川から上がった後、すぐにお風呂で温まれるよう環境を整えます。後は、一緒に行く仲間を募ってチャレンジ。ボートから川へ一人で飛び込んだり(落としてもらう)、ガイドさんに抱えてもらい一緒に飛び込んだり。昨年の夏はボートをひっくり返して川へ落ちる遊びも。娘の表情・顔色を見ながらチャレンジさせてもらっています。(北村惠子)

外出大好き! 防寒・防雨対策は必須

佳那子さんは外出が大好き!玄関を出る時は笑顔!寒い日も、雨の日ももちろん出かけます。体温調整が難しいので、頭から足先までの防寒をできる限りしています。東日本大震災が起こった頃は、聴講生として大学に通っていて、外出先での避難も考えるようになりました。そんな頃、アウトドア総合メーカーのmont-bell(モンベル)との出合いがあり、防寒・防雨のウエアなどを試作していただけることになりました。

体幹保持のクッション…円柱型のクッションカバーを開けると、マットと寝袋が入っています(これまではバスタオルをぐるぐる巻いて円柱型にして使っていました)。

ダウンジャケット、ズボン…硬直があって長袖は腕が通しにくい佳那子さん。かと言って、大きなサイズにすると隙間ができて防寒の効果が発揮されません。そこで、脇下を伸びる素材にしました。冬用のダウンズボンは脱ぎ着がしやすいよう、腰回りのボタンやファスナーの位置を体の前にしました。

車いす用レインカバー…アウトドアのレインウエア素材を使って、従来のカバーより、軽く、小さく、撥水性があり、持ち運びに便利です!(山崎秀子)


コミュニケーション~おもいを「聴く」ことから

意思疎通はどうしていますか?とよく聞かれますが、「YESの時は○○」といった決め事はありません。話しかけて、佳那子さんのおもい(声)を聴こうとする、その作業の繰り返しです。声、表情、普段との違い…。そして、単に佳那子さんのおもい(声)を聴くだけではなく、佳那子さんが周りとコミュニケーションをとったり、自分のおもいを熟考・決定できるように情報提供をします。

もう一つ重要なサポートが、周りと丁寧につなぐこと。たとえば、出会った人とどう話す、どうつながるか。そんな時に私が何を言いどう動くか。あるいは、何もしない(見守る)のか。支援者の立ち居振る舞いが重要です。

コミュニケーションサポートを持続可能にするには、支援者の限界を自覚し、ヘルパーや家族、友達など、周りとつながる・つなげる共有作業が大事で、時間と労力のかかるこの作業そのものが見えにくい工夫です。

何より、佳那子さんが全身で眼力(めぢから)で伝えています。佳那子さんが「居る」ことから、出会いもつながりも始まります。(山崎秀子)