図2 失語症者向け意思疎通支援者養成カリキュラム(案)
失語症者向け意思疎通支援者養成カリキュラム
目標
[必修科目]
養成目標 | 失語症者の日常生活や支援の在り方を理解し、1対1のコミュニケーションを行うための技術を身につける。さらに、日常生活上の外出に同行し意思疎通を支援するための最低限必要な知識及び技術を習得する。 |
到達目標 | 失語症者との1対1の会話を行えるようになり、買い物・役所での手続き等の日常生活上の外出場面において意思疎通の支援を行えるようになる。 |
[選択科目]
養成目標 | 多様なニーズや場面に応じた意思疎通支援を行うために、応用的な知識とコミュニケーション技術を習得するとともに、併発の多い他の障害に関する知識や移動介助技術を身につける。 |
到達目標 | 電車・バスなどの公共交通機関の利用を伴う外出や、複数の方への支援、個別訪問等の場面を想定し、失語症者の多様なニーズに応え、意思疎通の支援を行えるようになる。 |
必修科目(40時間)
形態 | 教科名 | 時間数 | 目的 | 内容 |
---|---|---|---|---|
講義 | 失語症者概論 | 2 | 失語症の原因、症状、コミュニケーション方法の種類、生活状況等を知り、失語症に関する基礎知識を会得する。 | ・原因、症状、タイプ ・類似の障害との差異 ・日常生活、社会生活への影響 ・心理的側面への影響 ・失語症のリハビリテーションの概要 ・コミュニケーション方法 ・地域生活の状況 |
講義 | 失語症者の日常生活とニーズ | 1 | 失語症者の日常生活における困難と、支援ニーズを、具体的に理解する。 | ・失語症者による体験談 -失語症者の生育歴・障害歴 -日常生活における困難 -必要としている支援 -会話の実例(失語症者でも、サポートがあれ会話可能であることを理解してもらう) |
講義 | 会話支援者とは何か | 0.5 | 失語症者の抱える困難や支援ニーズを踏まえ、会話支援者の役割と支援内容を理解する。 | ・対人援助とは何か ・会話支援者の役割 ・基本的な支援内容 |
講義 | 会話支援者の心構えと倫理 | 0.5 | 会話支援者としての失語症者への関わり方を理解する。 | ・心構えと倫理(対等性、自己決定の尊重) ・適切なコミュニケーション態度(受容・共感等) ・守秘義務 |
講義 | コミュニケーション支援技法1 | 4 | 失語症者とコミュニケーションを取るために必要な、基本的な会話技術を理解する。 | ・一対一の会話場面を想定し、以下のような意思疎通支援に係る技術(道具や絵の利用等も含む)を理解・習得する。 -話の要点を書き記す技術 -理解面を補う会話技術 -表出面を補う会話技術 -話の内容を確認する会話技術 -適切な態度によるコミュニケーションの実践 ※会話サロンのような場での実習を想定 |
実習 | コミュニケーション支援実習1 | 18 | 失語症者とコミュニケーションを取るために必要な、基本的な会話技術を習得する。 | |
講義 | 外出同行支援 | 1 | 失語症者が外出先で困難を感じる場面を具体的に想定し、意思疎通を促進するための技術を理解する。 | ・意思疎通支援を行う場面を具体的に想定し、必要な技術を理解・習得する。(買い物、役所での手続き等) |
実習 | 外出同行支援実習 | 8 | 外出時の基本的な意思疎通支援技術を習得する。 | |
講義 | 派遣事業と会話支援者の業務 | 1 | 失語症者向け意思疎通支援者派遣事業の運用の仕組みやルールを理解する。 | ・事業の概要 ・依頼から派遣までの流れ ・トラブル発生時の対応等 |
講義 | 身体介助の方法 | 2 | 外出時に身体介助を安心・安全に行うための基本的な技術を理解する。 | ・外出時に必要な、身体介助(特に片麻痺の方向け)と声の掛け方 ・階段昇降、椅子からの立ち上がり、装具や衣服の着脱、食事や排泄時の介助法等 |
実習 | 身体介助実習 | 2 | 外出時に身体介助を安心・安全に行うための基本的な技術を習得する。 |
選択科目(40時間)
形態 | 教科名 | 時間数 | 目的 | 内容 |
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講義 | 失語症と合併しやすい障害について | 1 | 失語症以外の障害を併せ持つ失語症者の生活における課題と、その支援方法を理解する。 | ・他の障害(高次脳機能障害等)の併発状況 ・原因疾病や合併疾病に対する治療の実際 ・病気や服薬などの医療的状況 ・他の障害を併せ持つ失語症者への支援方法 |
講義 | 福祉制度概論 | 1 | 失語症者が利用する障害者福祉制度や各種事業、地域の社会資源の状況を理解する | ・障害者総合支援法の仕組み ・意思疎通支援者派遣事業について ・障害福祉サービス、医療保険制度、介護保険制度について ・地域の社会資源の状況 |
講義 | コミュニケーション方法の選択法 | 2 | 失語症者の会話能力を判断し、その人に合わせたコミュニケーション方法の選択法を理解する。 | ・音声、文字、絵、身振り、表情の理解が可能か ・音声、文字、絵、身振り、表情で伝達が可能か ・返答できる質問形式は何か ・会話中に、自分のミスに気づくことができるか等 ※会話サロンのような場での実習を想定 |
実習 | コミュニケーション方法の選択法 | 10 | 失語症者の会話能力を判断し、その人に合わせたコミュニケーシヨン方法の選択法を習得する。 | |
講義 | コミュニケーション支援技法2 | 4 | 応用的な会話技術を理解する。 | ・集団の交流場面や個人宅訪問時を想定し、以下の技術を理解・習得する。 -理解面を補う会話技術 -表出面を補う会話技術 -話の内容を確認する会話技術 -適切な態度によるコミュニケーションの実践 ※会話サロンのような場での実習を想定 |
実習 | コミュニケーション支援実習2 | 22 | 応用的な会話技術を習得する。 |
平成27年度障害者支援状況等調査研究事業
「意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方に関する研究」報告書より(平成28(2016)年3月みずほ情報総研株式会社)