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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年3月号

平成29年度障害保健福祉関係予算(案)について

厚生労働省障害保健福祉部企画課

平成29年度障害保健福祉関係予算案については、対前年度7.0%増の1兆7,486億円を計上している。予算案の主な内容は、次のとおりである。

1 障害福祉サービス等確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 1兆7,260億円(1兆6,098億円)

○障害福祉サービス等の確保、地域生活支援等

(1)良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保

1.障害児・障害者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 1兆2,231億円(1兆1,159億円)
うち障害児支援関係 1,840億円(1,458億円) うち医療関係 63億円(63億円)

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保する。

2.障害福祉人材の処遇改善120億円(再掲)

臨時に障害福祉サービス等報酬改定を行い、福祉・介護職員処遇改善加算について、福祉・介護職員の経験、資格又は評価に応じた昇給の仕組み(キャリアアップの仕組み)を構築した事業者に対し、新たな上乗せ評価を行う加算を創設し、月額平均1万円相当の処遇改善を実施する。

(2)地域生活支援事業等の拡充【一部新規】 488億円(464億円)

意思疎通支援や移動支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、効率化・重点化を図りつつ事業の着実な実施を図る。また、地域生活支援事業に含まれる事業やその他の補助事業のうち、国として促進すべき事業について、「地域生活支援促進事業」として特別枠に位置付け、5割等の補助率を確保し質の高い事業実施を図る。(別紙)

(3)障害福祉サービス提供体制の整備(社会福祉施設等施設整備費) 71億円(70億円)

障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進するとともに、スプリンクラー整備や防犯体制の強化を推進する。

さらに、長期入院精神障害者の地域移行を進める観点からも、グループホームの設置を一層推進する。

(参考)【平成28年度第二次補正予算】

○障害福祉サービス等の基盤の整備推進、防犯対策の強化 118億円

障害者等のグループホームや就労移行支援等を行う事業所の整備に要する費用について、補助を行う。

また、障害者支援施設等の防犯対策を強化するため、非常通報装置・防犯カメラの設置や外構等の設置・修繕などの必要な安全対策に要する費用について、補助を行う。

(4)障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2,309億円(2,301億円)

心身の障害の状態を軽減し、自立した日常生活等を営むために必要な自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供する。

(5)特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1,619億円(1,603億円)

特別児童扶養手当及び特別障害者手当等の支給を行う。

(6)障害児・障害者虐待防止などに関する総合的な施策の推進

1.障害者虐待防止の推進 地域生活支援事業等(488億円)の内数

都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、地域の関係機関の協力体制の整備、家庭訪問、関係機関職員への研修等を実施するとともに、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図る。

2.障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 14百万円(14百万円)

国において、障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修等を実施する。

(7)重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援 11億円(11億円)

重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対する補助事業について、小規模な市町村に重点を置いた財政支援を行う。

(8)強度行動障害を有する者の支援を行う職員の育成 地域生活支援事業等(488億円)の内数

強度行動障害を有する者等に対し、適切な支援を行う職員の人材育成を進めるため、都道府県による強度行動障害支援者養成研修(基礎研修及び実践研修)を実施する。

(9)医療的ケア児に対する支援【新規】 24百万円

障害児通所支援事業所等において医療的ケア児の受け入れを促進し、必要な支援の提供が可能となる体制を整備する。

○障害児・障害者の自立及び社会参加の支援等

(1)芸術文化活動の支援の推進【一部新規】 2.0億円(1.1億円)、地域生活支援事業等(488億円)のうち45百万円(40百万円)ほか

芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)を通した障害者の社会参加を一層推進するため、障害者の芸術文化活動への支援方法、著作権保護、鑑賞支援等に関する相談支援などを全国に展開するための支援等を実施するほか、全国障害者芸術・文化祭開催県にコーディネーターを配置し、各地域でのサテライト開催との連携促進を図る。

(2)障害者自立支援機器の開発の促進【一部新規】 1.6億円(1.6億円)

多様な障害者のニーズを的確にとらえた就労支援機器などの開発(実用的製品化)の促進を図るとともに、開発を行う中小企業に対する補助率のかさ上げを行う。

(3)障害児・障害者の社会参加の促進 26億円(27億円)

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、盲ろう者向け通訳・介助員養成の支援や、電話リレーサービスの実施等により、障害児・障害者の社会参加の促進を図る。

障害福祉サービス等予算の推移
障害福祉サービス等予算の推移拡大図・テキスト

平成29年度障害保健福祉部予算案の概要拡大図・テキスト

2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進 204億円(204億円)(※地域生活支援事業等及び社会福祉施設等施設整備費計上分を除く)

(1)精神障害者の地域移行・地域定着支援の推進【一部新規】 2.3億円(0.5億円)及び地域生活支援事業等(488億円)の内数、社会福祉施設等施設整備費(71億円)の内数

精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、都道府県等と精神科医療機関、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築する。

また、長期入院精神障害者に対する地域移行に向けたグループホームの整備や難治性精神疾患治療におけるネットワークの構築(モデル事業)などの基盤整備を実施する。

(2)精神科救急医療体制の整備 16億円(14億円)

精神疾患のある救急患者や、精神疾患と身体疾患を併発している救急患者が、地域で適切に救急医療を受けられるよう、関係機関(警察、消防、一般救急等)との連携を図りながら、引き続き体制を整備する。

(3)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)体制の整備 地域生活支援事業等(488億円)の内数

精神障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、保健所等において、ひきこもり等の精神障害者を医療へつなげるための支援や関係機関との調整を行うなど、アウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)を円滑に実施するための支援体制を確保する。

(4)摂食障害治療体制の整備 11百万円(13百万円)

(5)災害時心のケア支援体制の整備【一部新規】 53百万円(31百万円)及び地域生活支援事業等(488億円)の内数

(6)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進【一部新規】 177億円(185億円)

(7)てんかんの地域診療連携体制の整備 8百万円(9百万円)

(8)相談支援事業所等(地域援助事業者)における退院支援体制確保地域生活支援事業等(488億円)の内数

3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 2.1億円(2.0億円)(※地域生活支援事業等計上分を除く)

(1)発達障害児・発達障害者の地域支援機能の強化 地域生活支援事業等(488億円)の内数

乳幼児期から成人期までの一貫した発達障害に係る支援体制の整備や、困難ケースへの対応、適切な医療の提供に資するため、地域の中核である発達障害者支援センター等に発達障害者地域支援マネジャーを配置し、市町村や事業所等への支援、医療機関との連携強化を図る。

また、都道府県等において、ペアレント・プログラム(※1)等を通じた家族支援体制の整備や発達障害特有のアセスメントツール(※2)の導入を促進する研修等を実施する。

さらに、発達障害者支援法の改正を踏まえ支援にあたる関係者等が相互の連絡を図ることにより、地域における発達障害者の支援体制に関する課題について情報を共有し、関係者等の連携の緊密化を図る。

※1 ペアレント・プログラム:親が、自分の子どもの行動を観察して発達障害の特性を理解したり、適切な対応をするための知識や方法を学ぶための簡易なプログラム

※2 アセスメントツール:発達障害を早期発見し、その後の経過を評価するための確認票のこと

(2)発達障害児・発達障害者の支援手法の開発や支援に携わる人材の育成など

1.支援手法の開発、人材の育成【一部拡充】 44百万円(44百万円)及び地域生活支援事業等(488億円)のうち97百万円(89百万円)

発達障害者等を支援するための支援手法の開発、関係する分野との協働による支援、切れ目のない支援等を整備するためのモデル事業を実施する。その際、発達障害者支援法の改正を踏まえ新たに発達障害者の社会生活等の安定を目的として、当事者同士の活動や当事者、その家族、地域住民等が共同で行う活動に対する効果的な支援手法の開発及びライフステージを通じて、切れ目なく発達障害者の支援を効果的に行うため、医療、保健、福祉、教育、労働等の分野間で連携した支援手法の開発を行う。

また、国立障害者リハビリテーションセンター等で、発達障害者の就労移行に関する支援を行うとともに、人材の専門性の向上に取り組む。

さらに、発達障害における早期発見・早期支援の重要性に鑑み、かかりつけ医等の医療従事者に対して、対応力向上研修を実施し、どの地域においても一定水準の発達障害の診療、対応が可能となるようかかりつけ医等の育成に取り組む。

2.発達障害に関する理解の促進 60百万円(53百万円)

国立障害者リハビリテーションセンターに設置されている「発達障害情報・支援センター」で、発達障害に関する各種情報を発信し、支援手法の普及や国民の理解の促進を図るとともに、新たに全国の研究者、有識者及び団体等と連携して、先進的研究やその活用による支援の情報分析及び情報発信を行うことにより、全国の発達障害者支援の質的・量的な向上及び地域差の解消を図る。

また、「世界自閉症啓発デー」(毎年4月2日) などを通じて、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい理解と知識の普及啓発を行う。

(3)発達障害の早期支援 地域生活支援事業等(488億円)の内数

市町村で、発達障害等に関して知識を有する専門員が保育所や放課後児童クラブ等を巡回し、施設のスタッフや親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言等の支援を行う。

4 障害者に対する就労支援の推進 11億円(11億円)

(1)工賃向上等のための取組の推進【一部新規】 地域生活支援事業等(488億円)のうち1.1億円(2.3億円)

一般就労が困難な障害者の自立した生活を支援する観点から、就労継続支援B型事業所などに対し、経営改善や商品開発、市場開拓等に対する支援を行うとともに、在宅障害者に対するICTを活用した就業支援体制の構築に向けたモデル事業を実施する。

また、共同受注窓口における関係者による協議体を設置し、企業等と障害者就労施設等との受発注のマッチングを促進することにより、障害者就労施設等に対する官公需や民需の増進を図る。

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 地域生活支援事業等(488億円)のうち8.2億円(7.5億円)

就業に伴う日常生活の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施する。

また、就労継続支援事業の利用から一般就労への移行や、加齢や重度化による一般就労から就労継続支援事業の利用への移行など障害者の能力に応じた就労の場に移行できるようにするための支援を行う。

(3)農福連携による障害者の就農促進 地域生活支援事業等(488億円)のうち2.0億円(1.1億円)

農業分野での障害者の就労を支援し、障害者の職域拡大や収入拡大を図るとともに、農業の担い手不足解消につなげるため、障害者就労施設へ農業の専門家の派遣による農業技術に係る指導・助言や6次産業化支援、農業に取り組む障害者就労施設によるマルシェの開催等の支援を実施する。

(4)就労支援の充実強化 地域生活支援事業等(488億円)の内数

就労支援を行う事業所のノウハウの充実を図り、企業等での就労を希望する障害者への支援を強化するとともに、企業等で働く障害者のための交流や生活面の相談支援の場の提供等により障害者の就労支援を推進する。

5 アルコール健康障害対策・薬物依存症対策・ギャンブル等依存症対策の推進 5.3億円(1.1億円)

6 東日本大震災や熊本地震からの復旧・復興への支援 22億円(30億円)