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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年4月号

当事者の声

壁は管理会社だった
―車いすで家探し―

岡山祐美

わけあって、今の住居を出て、新しく賃貸物件を探さないといけなくなった。車いすを使用する私だが、障害者に理解ある不動産屋をあたるわけでもなく、最低限の物理的バリアだけ考えて、あとは健常者の頃のように、家賃や交通の便などから選びたいと思った。

不動産屋はだいたい良い感じに対応してくれた。ところが、管理会社のレベルで、車いすを使用しているからと拒絶されることが、5回も続いた。さすがに泣きたくなった。

15歳の頃から、走るのがだんだん遅くなり、20代半ばで完全に歩けなくなった。その頃は実家で親と暮らしていて、このままでは施設入所になると思い、ついに3年前、一人暮らしを始めた。その時の家探しは、たぶん、不動産屋が前もって車いすOKの物件を探し、紹介してくれたのだと思う。今回のような困難にぶつかることはなかった。

今回は、何度も管理会社レベルで断られることが続いて、本当に落ち込み、ああ、みんなこうやって社会からの疎外感を塗り重ねていくのだなと実感した。それで、さすがにこれは何とかしないといけないと思い、苦手なことなのだが、ちょっとでも声をあげようと思った。

京都府には、差別解消法より以前に、差別のない社会づくりのための条例があり、差別事案に関する相談窓口ができていたので、そこに相談することにした。個人的には、あまり直接管理会社とやりあうと、その後暮らす上でしんどいので、ちょっと遠回しに何とかしてもらえないかと聞いてみた。すると、京都市居住支援協議会(住宅セーフティネット法に基づく居住支援協議会)に賃貸住宅関連協会の委員がいるので、そちらへ繋(つな)いで管理会社へ話してもらうこともできるとのことだった。

また、国交省レベルからのアプローチも考えた。差別解消法において、こうした事案は国交省の管轄だ。けれども、ちょっと調べると、差別が禁じられる事業として明記されたのは今のところ宅建業、つまり不動産会社だけで、管理会社や大家・オーナーはそこに含まれていないのだ(国交省対応指針)。これは困った。もうちょっと調べてみると、全国賃貸住宅経営者協会連合会の、国交省協力のガイドブックによれば、主な対象は宅建業だとはいえ、管理業者や家主も同種の差別行為を反復継続すれば、法の対象になりうるという書き方もされている

国交省に問い合わせたところ、法の基本的な考え方としては、今回の件は差別に当たる。しかし国交省としては、管理業者と家主に関する事例を現在集積中であり、これから検討していかなければならない段階との回答だった。また、管理業者と家主は、完全に国交省の管轄内とは言い切れず、経産省の管轄にかかってくる部分もあるので、それも事例を元にこれから要検討とのことだった。

以上、車いすユーザーの私が家探しで直面している現状を書いた。途中経過であり、まだ解決してはいないが、法律をバックボーンに持つ相談窓口があることは、解決への手がかりになるかもしれない。しかし、行政も各種団体も、持っている事案がまだまだ少なく、よって現状把握や有効な解決策の議論もこれからのようだ。つまり、行政、業界団体とも、多くの事例を必要としているので、たくさんの声を届けることが、私たち当事者にできる重要なことだと思う。

今後、差別解消法をみんなが活用しながら、多様な人々の共生がもっと社会全体で共有され、障害があっても住みたいところに気持ちよく住めるようになることを期待する。

(おかやまゆみ 日本自立生活センター)


【宅建業者・管理業者・家主さん向け】障害者ガイドブック https://www.chintai.or.jp/guide/syogai.pdf