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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年4月号

1000字提言

ノーマライゼーションという言葉のいらないまち(2)

戸羽太

ノーマライゼーションを語る時、どうしても私たちが意識をするのは障がい者への配慮ということになると思う。

しかし、我々は全(すべ)ての人が、より幸せを感じられるまちを目指すことがノーマライゼーションであると考えることから、その対象者は『全ての人』ということになる。

障がい者、高齢者、妊婦さん、外国人、LGBT。陸前高田市という田舎の小さな町にもさまざまな方々が一緒に生活されている。

社会的弱者になり得るような人々が過ごしやすいまちができれば、結果として、全ての人にとって過ごしやすいまちということになる。

誰が変われば、何が変われば、理想の形に近づくのか?

そんなことを漠然と思っていた時に出会ったのが、株式会社ミライロの垣内俊哉社長である。

自身が障がい者でもある彼の基本理念は『バリアバリュー・障害を価値に変える』であり、とにかく前向きで明るいそのキャラクターに私は『ひと目ぼれ』したのである。

彼の話を聞いていると、いつも『なるほど』と納得してしまう。

彼は「自分は障がい者ではない」と言う。

そして「自分を障がい者にしてしまうのは周りの環境なのだ」と。

平坦な道を移動する時は、車いすでの移動が可能であるから自分は障がい者であるという意識はない。

ただ、そこに段差や階段が現れた時、自分は障がい者にさせられてしまうのだと。

彼は言う。「そこになぜ階段があるのか?それはほとんどの方が階段を昇れるから。自動販売機のお金の投入口が右側にあるのはなぜか?それは日本人の多くは右利きだから。たったそれだけの理由」だと。

妙に説得力のある話である。

陸前高田市が目指している誰もが笑顔で生活できるまち『ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり』を進める時、私たちはどのような環境をつくっていけばよいのだろうか?

それはお金をかける話ではない。

市民一人ひとりが相手の立場に立って考え、行動すること。

決して同情ではなく、仲間としてお互いの不得意を補い合うこと。

これさえしっかりと意識できたなら、陸前高田市は本当の意味で素晴らしいまちになると私は思っている。


【プロフィール】

とばふとし。陸前高田市長。1965年、神奈川県足柄上郡松田町生まれ。東京都町田市育ち。東京都立町田高卒。会社員を経て1995年4月から陸前高田市議を務め、2007年3月に助役に就任。その後副市長を務める。2011年2月の市長選に初出馬、初当選を果たした。市長就任直後に東日本大震災により壊滅的な被害を受け、復興に向けた新しいまちづくりを進めている。