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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年9月号

大規模災害に備える「東広島市被災者生活サポートボラネット」の取り組み
~災害にも強い支え合いの地域づくりを目指して~

山原丈佳

取り組みの経緯

近年、日本各地で毎年のように自然災害が発生し、被災地に暮らす方たちに大きな被害をもたらしている。

今日、大規模災害が発生した際は、被災地に災害ボランティアセンター(以下「災害VC」。東広島では「被災者生活サポートボランティアセンター」という名称)が開設され、全国各地からボランティアを受け入れるようになっている。

東広島市社会福祉協議会(以下「社協」)では、実際に災害VCを開設した経験はないが、もしもの時は、当然地元の社協として、被災者の生活を迅速にサポートするための体制づくりを行う必要がある。

そのためには、平常時から災害(被災者)支援を行う関係機関や団体のネットワークづくりが重要であると考え、平成23年度から「東広島市被災者生活サポートボラネット推進事業」(以下「ボラネット」)に取り組んでいる。

東広島市被災者生活サポートボラネットの取り組みイメージ図
東広島市被災者生活サポートボラネットの取り組みイメージ図拡大図・テキスト

取り組みの概要

「ボラネット」では、市内で災害が発生した際に災害VCが迅速に設置・運営できるよう、いざという時の「共助」を培うため、平常時から次の5つの事業項目に取り組んでいる。

(1)顔の見える「関係づくり」~ボラネット推進委員会の開催~

○定期的に推進委員会を開催し、災害時における“必要な役割と動き”を共有

○防災・減災に向けた各機関・団体の取り組み等について情報交換

(2)ボランティア活動の「ルールづくり」~マニュアルの作成~

○災害VC設置・運営のマニュアル整備(「ボラネット協働編」及び「事務局運営編」)

○災害ボランティア登録制度の検討

(3)被災時に求められる「人づくり」~人材の養成・確保~

○避難所運営ゲーム(HUG)の実施【市受託事業】

○活動者向け研修会の開催(活動リーダー向け)

○災害研修会の開催(福祉関係職員向け)

(4)防災・減災への「情報づくり」~情報の収集・発信~

○社協だより、ホームページ等を活用した情報発信

○FM東広島(コミュニティFM)等を活用した情報発信

(5)ボランティア活動の「拠点づくり」~協働体制の整備~

○市総合防災訓練への参加(災害VCの設置・運営、避難所の運営支援等)

○災害用資機材ストックヤードの管理【県社協受託事業】

○赤い羽根支援自動販売機の設置(災害対応型)

取り組みのポイント

ポイント1 関係づくり

推進委員会は、市内の関係機関・団体を中心に25人の委員で構成している。構成団体である東広島ボランティア連絡協議会には、手話・要約筆記・点訳・音訳等のボランティアグループが多く所属しており、障害者との直接的な関わりが深い。

また、市内の44施設(高齢者・障害児者・児童)が加入している施設連絡協議会では、「災害対策委員会」を設置し、要配慮者の受入体制の整備や施設間の連携等について検討されている。

ポイント2 人づくり

今年度から、市の委託事業として「避難所自主運営訓練業務」を行なっている。主に、住民自治協議会や自主防災組織等の地域組織を対象に「避難所運営ゲームHUG」を実施し、住民も避難所運営に主体的に関わるためのきっかけづくりを行なっている。参加者はゲームを通して、要配慮者への対応について考える機会になっている。

また、活動者向けの研修会では、障害のある人から直接話を聞いたり、要配慮者への対応について学んだりしている。

ポイント3 拠点づくり

現在市内に、社協のイメージキャラクターと赤い羽根共同募金のマークが入った自動販売機を5台(社協事務所があるセンター等に4台、施設連絡協議会会員の障害者施設に1台)設置しており、売上金の一部は、社協及び赤い羽根共同募金に寄付され、ボラネット事業の財源になっている。

また、市の指定避難所に設置している3台は、一定規模以上の災害時や当該避難所が開設された場合に、自販機内の飲料水を無償提供できる仕組みになっている。

おわりに

冒頭でも述べたが、自然災害は日本各地で毎年のように発生しており、まさに“いつ”“どこで”起こるか予測できない状況である。そのための備えとして、最も重要なことは、やはり「平常時からの積み重ね」ではないかと考える。

今後も、地域福祉を推進する中核的な役割を担う社協として、「防災・減災」「要配慮者支援」「顔の見える関係づくり」等をキーワードに、災害にも強い支え合いの地域づくりをすすめていきたい。

(やまはらたけよし 社会福祉法人東広島市社会福祉協議会総務課主任主事)