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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年9月号

ワールドナウ

国連「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」に参加して

奥平真砂子

はじめに

7月10日から19日にかけて、ニューヨークの国連本部で開催された「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」に、東京家政大学の田中恵美子さんと共に、部分的にではあるが参加したので、ここに報告する。

HLPFとは、2016年から2030年までの国際目標である国連の持続可能な開発目標(SDGs)実施に関し、政治的リーダーシップや指針、提言を提供するために不可欠なグローバルな話し合いの場である。

SDGsを実施に移す行動は、国内、地域、グローバルの各レベルで取り組む必要があり、その主たる責任は各国政府にある。政府や企業、市民社会団体(CSO)などのステークホルダーがアイデアやベストプラクティスを共有し、進捗状況を審査するためのグローバルな拠点として、HLPFは各国が目標達成に向けた歩みを加速させることを目的としている。

SDGsについては、本誌6月号に「権利条約の実現~SDGsが目指す誰も取り残さない社会」と題して特集が組まれたので、ここでの説明は省略する。

参加の目的

当協会では、今年度「障害分野の視点から見るSDGs目標達成に向けての戦略作成のためワークショップ、セミナーの開催」と題した事業を展開している。その目的は、1.日本の障害者団体(障害者関係者、団体)へSDGsについて広く周知すること、及び2.他分野との連携を促進することである。

本事業では、他分野のCSOや企業からも委員をお願いしている関係で、障害関係以外の団体のSDGs達成に向けた取り組みについて知ることができた。そして、その熱心さに驚き、横の連携の広さを知り、「障害関係団体が取り残されないようにしなければならない」、「腰を据えて取り組まなければならない」との考えもあり、今回のHLPF参加は他分野のCSOの活動をより深く知るとともに、関係各所との人脈作りの目的もあった。

日本政府報告

2015年9月に開催された国連総会において、安倍首相がSDGs実施に向けた日本の考えや貢献策などを発信し、2016年5月のG7伊勢志摩サミットでもSDGsについて議論され、議長国として率先して取り組む姿勢を示した。具体的な行動として、首相を本部長とする推進本部を立ち上げ、CSOを含む各方面と議論を重ね、12月には実施指針を策定した。

政府として、実施指針を作るなど体系的に取り組む例はまだないらしく、日本政府の熱心な姿勢を国内外に発信するべく、今回の報告に至ったと聞いた。

SDGsは条約と違い、法的拘束力はなく、従って報告の義務もない。HLPFでの報告は、自発的国別レビュー(Voluntary National Review:VNR)といい、各国がSDGsの進捗状況に関する自主的報告を行う国家主導の定期的レビューである。昨年は、ドイツやフランスなど22か国が、そして、今年は日本を含む43か国が報告を行なった。

サイドイベントを含む全日程は10日~19日であったが、VNRは17日から19日の3日間のみで、各国に与えられた時間は15分間であった。岸田外務大臣(当時)による日本政府の報告は、17日(月)の午後0時半から2時のVNR2に割り当てられていて、インドネシアとモナコの間に挟(はさ)まれていた。

内容は、まず「SDGs達成に向け、誰一人取り残さない多様性と包摂性のある社会の実現である」と日本が掲げるビジョンを示し、「国内的にも国際的にもしっかりと取り組む」との決意表明から始まった。

次に、推進本部の設置や実施指針の策定などの基盤整備をしたこと、そして、ビジョンの実現を目指して大切にしている考え方として、「Public Private Action for Partnership:PPAP」があり、CSOや民間企業を含む各ステークホルダーと連携して進めていくと述べた。そして、水道技術や母子手帳導入による妊産婦支援の国際協力、軽井沢の若者育成の事例を紹介した後、次世代の若者育成や格差是正、女性の活躍など取り組むべき項目を挙げ、最後は「日本SDGsアワード」の創設と、2018年までに10億ドルの支援金を拠出すると締めくくった。

残念なことに、報告の中で「障害」に言及されたのは、ビジョンの部分で「~障害をもって生まれた男の子であっても、誰もが活躍できる~」との1回だけだった。

SDGsは目標17に「パートナーシップ」を掲げ、CSOとの連携を重視しており、それが政府報告に対する質問にも表れている。政府報告の後に、他国政府代表だけでなく、メジャーグループとして登録しているCSOの質問も受ける。CSOは、自分たちの代表者が自分たちの扱う課題について質問することに力を注いでいることが見て取れた。日本政府の報告に対しても、日本若者プラットフォームの代表が質問した。

夜には日本政府主催のレセプションが開かれ、前述のPPAPにひっかけたピコ太郎さんが登場し、多くの出席者の注目を浴び、日本の取り組みをさらにアピールしていた。

さいごに

今回、HLPFへの参加登録は、国連経済社会理事会(ECOSOC)のメジャーグループである国際障害同盟(IDA)を通して行なった。IDAは、障害関連のHLPFへの参加を取りまとめていたようで、事務局からウガンダのろう連の人やインドネシアからの女性障害者を紹介された。事務局スタッフに私と同じ障害をもつ女性がいて、とても親しみを感じた。

しかし、障害者の参加は全体的に少なく、まだまだ存在感は薄いように思った。SDGsは、「誰一人取り残さない社会の実現」を理念としており、障害者に焦点を当てない限り、この実現は成し得ないことを国内はもちろん、国際的な場でもアピールしていかなければならない。そのためにも、SDGsと権利条約の関係を分かりやすく説明したり、両輪として効果的に使うことを具体的に示していくのがよいだろう。

2019年には4年に一度、国連総会に合わせてHLPFが開催される予定なので、2年後にはいろいろな国から多くの障害者が参加して、自国のSDGs実現に向けての取り組みを報告できる場が作れると良いと思う。

(おくひらまさこ (公財)日本障害者リハビリテーション協会国際課)