音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年10月号

列島縦断ネットワーキング【埼玉】

チャレンジド・ヨガ~視覚障がいの方のヨガクラス~の活動

高平千世

チャレンジド・ヨガをはじめたきっかけ

1人の視覚障がいの方のことば「やってみたいな、ヨガ…」。その言葉をきっかけに、2013年8月、埼玉県所沢市で、「見えない・見えにくい方のチャレンジド・ヨガ~視覚障がいの方のヨガクラス~」を日本初としてスタートしました。

背景には「以前から身体や心に効果があると言われるヨガに興味はあるけれど、一歩が踏み出せないでいるの…」「ヨガクラスに受け入れを何度も断られたの…」。そんな声を実際に聞いていたからです。

4つの目指していること

チャレンジド・ヨガは、以下の4つを目指しています。

1.ヨガを通じて、視覚障がいの方へ定期的、継続的に体を動かす機会の提供

2.障がい者=チャレンジドが社会・自分のために、本来の力を生かせる機会の提供
※チャレンジド(challenged)とは、障がいを前向きに捉える米語

3.ヨガの本来の意味=「Yuj(ユジュ)繋(つな)がる」地域コミュニティ(地域クラス)の創出

4.ヨガを通じて、障がいに対する社会の意識・認識を変化、気づきを促進する活動
(本当の意味での「共に生きる社会」を目指す)

視覚障がいのある方にヨガが適していると考えたわけ

ヨガは、たたみ1畳分のスペースで移動を伴わず、体の隅々まで動かすことが可能であり、人と比べたり競うことなく、運動が苦手な方でも、自分自身のペースで自宅でも気軽に日常的に行うことができるため、視覚障がいの方にも適していると考えました。これは視覚障がいの方に限らず、ヨガが世界中で愛され続けている理由の1つだと思います。

5つの主な活動内容

1.継続的な定期ヨガクラス

2.地域普及のための地域ヨガイベント

3.自主的な地域定期クラスの創出

4.広く知っていただくための取材、研修会、活動発表

5.サポーター勉強会

チャレンジド・ヨガクラスの特徴と工夫

以下、6つの特徴と工夫を紹介します。

1.ゆっくり、安全に、そして楽しく!をモットーに、1つのポーズを3STEP方式で反復練習し、ポーズを理解していく。

STEP1:とにかくまずは自分でやってみる!

STEP2:インストラクター、サポーターと一緒にポーズを練習練習!

STEP3:本日のそれぞれの完成ポーズ!

2.分かりやすい言葉と声が聞きとりやすい環境

障がい者指導経験のあるインストラクターが、分かりやすい言葉を使って、ポーズを説明します。インストラクターやサポーターの声が聞こえる環境を大切にするため、原則として音楽をかけずに進行します。

3.ロービジョン(弱視)の方に見やすい環境

黒のヨガマットを使用し、インストラクターもできるだけコントラストの高い配色のヨガウェアを着用するなど、ロービジョン(弱視)の方の声を聴き、見やすい環境を作っています。

4.世界共通のポーズ

「障がい者向け」にアレンジしたポーズではなく、個人の身体の状態に合わせて、壁や椅子、タオルなど身近なものを活用し・工夫することで、世界共通の正式なヨガポーズをお伝えしていきます。

5.サポーターの動作支援

参加者数人に1人のサポーターを配置し、声かけ・動作支援を行なっています。

6.会場までの送迎

希望者には最寄り駅から会場間の送迎を行なっています。

活動の広がり

クラス数は、2013年埼玉県所沢市で定期ヨガクラスがスタートして以来、毎年3クラスほど増加し、現在では全国10か所で定期ヨガクラスを開催しています(埼玉県2か所、東京都3か所、神奈川県2か所、福島県福島市、宮城県仙台市、兵庫県神戸市)。

各地域クラスの参加者やクラスの形も変化しています。視覚障がいの方以外の参加希望や年代の幅も広がり、さまざまな人が混ざり合い、一緒にヨガをする形へと変化しているクラスが多くなっています。

また、各地域クラスの立ち上げ人・主催者も多種多様に変化しています。東京都江戸川クラスは視覚障がい当事者、神奈川県横須賀クラスは眼科医が立ち上げ人です。埼玉県上尾クラスや宮城県仙台クラスは地域のNPO法人が主催。福島県福島クラスや神奈川県川崎クラスは地域の点字図書館が主催しています。東京都足立クラスは同行援護事業所とチャレンジド・ヨガとの共催など、地域の参加者のニーズや想いを聴きながら、過去の形に捉われることなく一緒に創(つく)っています。

チャレンジド・ヨガでは、地域普及のためのイベントも本当にありがたいことに年々増加しています。2013年は2回。2014年は9回。2015年は12回。2016年は24回。2017年は9月現在で26回となっています。

最近では、パラリンピック準備局主催のスポーツ推進委員対象の「視覚障がい理解を目的としたヨガ研修会」、教育委員会主催の「視覚障がい者と晴眼者が共に学ぶ教養講座~ヨガの歴史と実技~」、NPO法人主催の「心のバリアフリーセミナー」、視覚障がい留学生や視覚障がい児と親を対象とした親子ヨガ、ヘルスキーパー対象研修会、民間デパートや海外ヨガウエアブランド主催の晴眼者対象「アイマスクヨガ」などです。

今後の展開

ヨガの語源はYuj(ユジュ=繋がる)であり、ヨガは精神の成長や社会との適合のために構築された技法ですが、その根底には、人は皆価値ある存在であり「しあわせ(ウェルビーイング)のために繋がる」という考えがあります。これは社会福祉活動の目的となる概念、ソーシャルワークの定義とも一致していると考えています。

4年の活動を続ける中で、ヨガを通して身体を動かしながら、同じ時間を共有し、いっぱい会話し、共にいっぱい笑い、そんな経験を積み重ねることで、障がいの有無も、種類も年齢も性別も国籍も、本当に関係なく、自然に理解し合い、とけ合い、当たり前に助け合う…本当の意味での“共に生きる”姿へと変化する過程を何度も目の当たりにしてきました。

今、チャレンジド・ヨガという小さなコミュニティで、確かに当たり前になっている環境が、社会でも当たり前になっていくことを願いながら、私たちは今後もヨガを通じて、自然な流れ・変化に身をゆだね、本気で悩み・話し合い、やっぱりみんなで楽しみながら、マニュアルになど載っていない新たな地域コミュニティ・クラスを創っていきたいと思っています。

しあわせのために繋がり(Yuj)続けて…。

(たかひらちせ チャレンジド・ヨガ~視覚障がいの方のヨガ~プロジェクトリーダー、社会福祉士&ヨガインストラクター)


・Shanti Shanti Shantih (シャンティ・シャンティ・シャンティヒィ)
“Shanti”とは、インドのサンスクリット語でヨガでよく使われる大切にしている言葉の1つです。意味はしあわせ、感謝、平和、祈り。1回目は自分自身に、2回目は自分の周りに、3回目は取り巻くすべてに対して…。

※詳細は左記ホームページ、SNSなどをご覧ください。ご質問・お問い合わせも左記アドレスへお気軽にご連絡ください。

・チャレンジド・ヨガ公式アクセシビリティホームページ
http://challengedyoga.com/

・チャレンジド・ヨガ公式フェイスブック
https://www.facebook.com/challengedyoga/

・チャレンジド・ヨガ専用メールアドレス
challengedyoga@gmail.com