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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年11月号

知り隊おしえ隊

京都観光有名どころ東山エリア

小泉浩子

昨年、『ノーマライゼーション』2016年4月号にて、平安神宮や南禅寺を含む「新旧の文化がまじりあう岡崎エリア」を紹介しました。今回は、京都観光の有名どころで、京都駅から割と近い清水寺や三十三間堂などのある東山エリアを紹介したいと思います。

東山エリアは、京都市東部の、きれいに整備された鴨川と威厳のある東山連峰にはさまれており、豊かな自然に恵まれています。そこに、平安、鎌倉、室町、戦国、江戸、近代と続くそれぞれの時代の名残を残す歴史的建造物がたくさんあります。

京都駅からも近く、全国一の観光名所とも言えるのですが、山のふもとにある古くからの街並みであり、車いすではかなり厳しいところも多々あります。また近年は台湾、中国、韓国からの観光客が多数来られており、公共交通機関の混雑ぶりも半端ありません。

そうした条件の中での東山エリアの観光はどんな感じでしょうか。とても魅力的なところですが、車いすではちょっと難しいところもあります。その一端をご紹介します。

国立博物館・三十三間堂

京都駅から三十三間堂や清水寺方面へは、京都市営バスが走っています。しかし、京都駅を降り立ち、京都タワーのある烏丸中央口のバスターミナルに出ると、バス待ちの観光客たちの長蛇の列に出くわします。京都市内の観光地のほとんどは市バスで回ることができ、また一日券も500円(2017年現在)と割安なのですが、バスの路線や時間帯によってはぎゅうぎゅう詰めだったり、待っていてもほとんど来なかったりと、けっこうしんどい目にあうこともあります。京都市交通局も混雑を少しでも和らげるために、臨時便を出したり、バス停に係員を配置したりするなど、いろいろ対策を立てるようになっています。

そのため、京都駅から東山方面に向かう市バスは観光客が一番利用するバスだと思うのですが、係員もいて、本数も多く、また京都駅始発なので、車いすでも割とスムーズに乗車することができます。

まず京都駅から一番手近な、三十三間堂に向かってみます。市バスの100系統が観光地を回るエクスプレスバスになっています。京都駅から二つ目の停留所「博物館・三十三間堂」で降ります。

三十三間堂は、一千体の千手観音像で有名なお寺。その荘厳な様、厳粛な雰囲気は、ここでしか味わうことができないと思います。このお寺は、以前から、車いすの人に配慮した造りをしてきました。さらに、2017年1月末には玄関を新築し、車いすでのアクセスがますます容易になりました。車いすで玄関に向かうと、係の人がタイヤを丁寧に拭いてくださいます。建物内は高低や段差も少なく、またスロープも万全に備えているため、何不自由なく自分の車いすのままで拝観することができます。

このお寺が「三十三間堂」と呼ばれているのは、本堂の柱が三十三本あることからだそうです。本堂には、前後十列の階段状の壇上に一千体の千手観音立像が整然と並んでいます。その中には、必ず会いたい人に似た像があるとも伝えられています。私も、会いたいあの人に似た観音さまを探してみました。

本堂の裏の展示コーナーには、視覚障害者のために手で触れて感じることのできる観音様もおられました。

三十三間堂のお庭も、広々としています。庭には砂利が敷き詰められていますが、「車いすでお回り頂けます」と書いた案内表示があり、でこぼこや隙間(すきま)のない石畳の遊歩道の上を通り、車いすで不自由なく、広いお庭を回り、お寺の外観を眺めながらゆっくり過ごすことができます。

三十三間堂の目の前には、京都国立博物館があります。全国で3か所しかない国立博物館(他は東京、奈良)であり、国宝も数々所蔵し、毎回大勢の人でにぎわう特別展示もとても充実しています。障害者手帳所持者と介護者一人は無料で入場できます。お時間がありましたら、ぜひ足を運び、そのときどきに展示されている文化物を間近で見てください。

今回は、開館120周年記念の「国宝」特別展覧会が開催されていました。展示されているものすべてが国宝であり、教科書でおなじみの品がこれでもかと並んでいました。展示物は、全体的に低い位置に展示されており、比較的見やすかったです。車いすの貸し出しもしており、その中に、座面高可変型の車いすも用意されていました。

清水寺

三十三間堂や博物館を後にして次に、清水寺に向かってみます。ここから清水寺までは市バスでも行けるのですが、かなりの混雑ぶりが予想されるので、徒歩で行くのが無難かもしれません(障害者運動の観点からは、きちんとバスを利用した方がいいのですが)。徒歩でも、参道までは15分程度で行けます。清水寺は「清水の舞台」で有名なように、東山連峰の山の中腹にあります。参拝には坂道を登っていかないといけません。車いす使用者にはかなり過酷な印象もありますが、バリアフリー化はがんばってくれています。

清水寺へは、バス停でいうと「五条坂」、「清水道」のどちらからも行けますが、「清水道」から上がる方が、坂道の傾斜も緩やかで、お土産屋さんの並ぶ有名な「三年坂」もあり、観光気分を味わえます(五条坂から上がると、車いす使用者にはスリル満点の傾斜のきつい坂を上らないといけません…)。

坂を上りきると、至るところに車いす使用者のための案内表示があります。何とか、車いす使用者にも来てほしい、そういう思いが伝わってきます。2011年には、国土交通省の「バリアフリー化推進功労者表彰」を寺社では初めて受賞をしています。

案内表示に沿って境内に入っていくと、係の人が本堂の入口へと導いてくれます。障害者手帳所持者と介護者は無料で拝観できます。「清水の舞台」のある本堂内もスロープが行き届き、山の緑に囲まれた舞台の高みから京都市街を一望できます。

車いす用トイレも工夫がされていました。便器の前に折り畳みの机が設置されており、上半身を机に預けながら、車いすから便座への移動が行えるようになっていて、机の使用方法がモニターにて分かるようになっていました。清水寺は、車いす使用者もぜひとも行ってほしい場所になっています。

京都市バスについて

ここで、京都観光に欠かせない京都市バスについて、少しご案内します。主要路線については、現在ではほぼすべて車いす対応のノンステップバスが走っています。以前は車いす使用者に対する接遇があまりよくなく、嫌な思いをすることも多かったのですが、私が所属する日本自立生活センターと話し合いを重ねる中で、4年前から毎年、交通局の新任職員に対して障害当事者による研修を行うようになりました。それによって、車いす使用者に対する必要な配慮の理解がだいぶ深まってきたように思います。車いす使用者本人に向かって丁寧にきちんと話をする、車いす使用者自身の話をきちんと聞く、バスをバス停に正着させる、スロープが急傾斜にならないようにニーリングを徹底する、などを伝えています。

ただ、それでも春や秋のシーズン時の主要路線などは、各国からの大量の観光客で満員となり、車いす使用者の入る隙間(すきま)のない状態になることもあります。それに対しても、交通弱者としての車いす使用者が優先的に乗車できるよう配慮を求めているところです。日本自立生活センターとしても、車いす使用者が快適に京都観光できるよう日々がんばってますので、みなさんも京都に来たら臆せずバスに乗車し、また、何かあったら日本自立生活センターにも相談してください。

「将軍塚・青龍殿」京都東山新名所

東山エリアの市街地には、他にも有名な寺社仏閣がたくさんあるのですが、最近建設され、まだあまり観光客にも知られていない穴場をここでご紹介したいと思います。

平成26年10月に、東山山頂に大護摩堂「将軍塚・青龍殿」が建立されました。将軍塚というのは、桓武天皇がかつてこの東山山頂に上り、京都盆地を一望し、ここに都(平安京)を置くと決めた由来があるところのようです。その由来どおり、京都市内を一望できる大舞台が誕生したということなので私も初めて来てみました。京阪バスが、土日・祭日など、期日限定で運行しています。本数は少ないので、事前確認が必要です。

建立されてまだ間もないので慣れていないのか、バリアフリーや障害者に対する対応は今一つでした。受付を通る必要があるのですが、そこにわずかに段差があり、電動車いすでは、単独では通れませんでした。受付のおじさんは、私が話しかけても、相手にしてくれませんでした。また、入場料には介護者分の割引もなく、障害者のことを分かってないなと思いました。

京都の穴場観光地として、今回紹介したかったので、おじさんの対応にはがっかりしましたが、こうした状況を今後改善してもらえるように、京都府条例相談窓口にも行き、改善を要望していきたいと思います。

運悪く、今回は工事をしており、「青龍殿」の中に入ることはできませんでした。けれども、京都市内を一望できる広々とした大舞台から眺める景色は絶品です。空気もきれいです。車いす使用者や子どもの低い位置からも、木造の柵の間から眺めることができ、京都市内、また大阪のビルまで遠望することができました。これから紅葉のシーズンには、色鮮やかな京都の山々も一望できると思います。車いす使用者にとって、山の上から景色を一望できる機会はまれですので、穴場にも行ってみたいという方はチャレンジされてはどうでしょうか。

「京都タワー」おまけ

「東山エリア」の中心、祇園・八坂神社などはご紹介できませんでしたが、この辺で東山エリアの紹介を終えます。

京都駅と言えば、真っ先に目に入る京都タワーを最後にご紹介します。京都タワーは、東京オリンピックが開催された1964年(私の生まれた年)に開業しました。京都タワーは京都市内では一番高い建物で、展望室からは360度、見渡せます。無料の望遠鏡が設置され、昭和のレトロなイメージがありますが、今年4月に「京都タワーサンド」としてリニューアルされました。

地下1階には、人気の飲食店が19店舗あります。フードコートの形を取っており、中華、お寿司、ステーキ、お酒などの割と本格的な専門店で好きなものを注文し、テーブル席に注文した品を持ちより、楽しむことができます。全体の造りは、レトロな感じを一転して若者向けの感じがしました。店内は、サービスを行う店員さんが配置されており、私も、注文からテーブルまで飲食物を運んでもらい付きっ切りで、店員の方に助けてもらいました。車いすの人が複数名いても席をとりやすいと思うので、お店選びに困った時などにもご利用いただけると思います。

これで、今回の旅は終了です。

これからの京都は、美しい紅葉の季節に入り、混雑が一層激しい季節になります。でも、人ごみに負けず、美しい京都…。

どうぞ京都におこしやす…。

(こいずみひろこ 日本自立生活センター)