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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

時代を読む98

手話サークル活動について

小椋武夫

最初の手話サークル誕生

京都において、1963年(昭和38年)に全国で初めて手話サークル(みみずく)を設立してから今年で54年目になります。現在、正確な数字は不明ですが、1800以上のサークルがあると言われております。当時、勤労学生であった京都第二日赤病院の看護婦さんが、自分の受け持ちの聴覚障害をもつ入院患者のためにより良い看護をしなければならないと考え、彼女が通っていた同志社高校の仲間を集めて、集団で手話を学習する活動を始めました。設立された時代は、ろう者に対する偏見が根強くありました。「みみずく」は手話を学習しながら、ろう者の権利擁護のための手話通訳活動を始め、ろう者の社会参加支援を行なってきました。

1970年(昭和45年)に、国(当時は厚生省)は、手話奉仕員養成事業を開始しました。これを契機に全国に次々と手話サークルが誕生し、ろう者が聞こえる人との対等な関わりを持ち、地域で手話とろう者の差別問題を知ってもらうために、手話サークルは大きな役割を果たしてきました。

手話通訳者の養成事業が軌道に乗り始め、聴覚障害者の要求ニーズも拡(ひろ)がり、聴覚障害者の生活と権利を守る立場で手話通訳活動に従事する人が増えてきました。このような状況を踏まえて、全日本ろうあ連盟は、手話の学習に努力されている人々の組織的拠点の確固たる位置付けを求めるために、1978年(昭和53年)に「手話サークルに対する基本方針」を公表しました。

手話サークルの役割と現状

手話サークルに対する基本方針の「1.手話学習 2.ろうあ協会とのつながり 3.手話の普及活動」が、手話サークルの重要な役割であり、現在においても変わらぬ使命といえます。しかし、最近では、ろう者の手話サークル離れが進み、聞こえる人だけで活動している手話サークルが増え、サークル会員も平均年齢が高齢化してきており、若い人の加入が減り、次第に活動が停滞してきました。

そのような状況にあっても、全日本ろうあ連盟が創立してから70年を経た今、障害者権利条約や障害者差別解消法などの法律が後押しとなって、全国の自治体のうち、13府県、84市、13町の計108自治体が手話言語条例を制定しております(2017/10/19現在)。手話言語を取り巻く環境が大きく変ってきている中、地域のろう団体と共に歩む手話サークルの役割は、聞こえる人の地域活動の核として今後ますます重要になってくると思われます。また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。手話で「心のバリアフリー」によるおもてなしをもって、海外からの訪問者を迎えることができるように、地域のろうあ団体と手話サークルが一体となって頑張りたいと思います。全日本ろうあ連盟は、全国の手話サークルの仲間たちと手話言語法の制定に向けて取り組んでいきます。

(小椋武夫(おぐらたけお) 一般財団法人全日本ろうあ連盟理事)