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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次障害者基本計画は何を目指すのか
―計画の何が変わったのか―

平野方紹

大きな区切りとなる平成30年度の障害者基本計画

平成30年は、天皇退位・改元などで社会が大きく変わる「節目」の年になりそうですが、障害福祉分野でも、平成28年に改正された障害者総合支援法・児童福祉法の施行、障害福祉サービス報酬等の改定、平成23年改正の障害者雇用促進法の完全施行などの制度面だけでなく、障害者施策の基本となる第4次障害者基本計画、障害者福祉施策の指針となる第5期障害福祉計画、今回から策定が義務付けられた第1期障害児福祉計画のいづれも平成30年4月1日からスタートすることから、制度・施策の大きな「節目」の年になります。

平成29年が終わろうとする今、新年度に向けてさまざまな動きが加速しており、その「準備作業」が大詰めに入っています。

この大きなうねりの中心となるのが、第4次障害者基本計画です。障害者基本法を根拠とする障害者基本計画は、福祉だけでなく、医療、教育、労働、交通、通信情報など障害者に関わる諸施策を日本政府として計画的に推進させるために策定が義務付けられており、図のとおり、地方自治体が策定しなければならない都道府県障害者計画・市町村障害者計画の基本となるだけでなく、同じく、地方自治体に策定が義務付けられている障害者総合支援法による障害福祉計画・児童福祉法による障害児計画には、その地方自治体の障害者計画と「調和が保たれたものでなければならない」と規定されており、こうした位置づけからも本来はこの障害者基本計画により、障害者施策全般が統一的に推進されるものとされているからです。

図 障害者関係の行政計画
図 障害者関係の行政計画拡大図・テキスト

第4次障害者基本計画の「立ち位置」と「基本姿勢」

障害者基本法による障害者基本計画は、平成4年策定の「障害者対策に関する新長期計画」(平成5~14年)が第1次障害者基本計画に位置づけられ、第2次は平成15~24年、第3次は平成25~29年を計画期間として策定・推進されました。今回の第4次は平成30~34年を期間としていますが、まず第4次障害者基本計画(以下、4次計画)の立ち位置については次のとおりです。

○3次計画策定(平成25年)は国連障害者権利条約(以下、権利条約)批准前であり、障害者差別解消法などまだ準備段階の制度もあったが、4次計画は権利条約批准後初めての計画であるばかりでなく、制度的にもフルラインナップでスタートする計画となった。

○4次計画の期間中に東京オリンピック・パラリンピックという国際的イベントが開催される。

こうしたことから4次計画の基本は、権利条約の完全実施を目標に掲げ、国際的視野での取り組みを掲げています。その一方で、平成28年の神奈川県相模原市のやまゆり園事件で突きつけられた深刻な障害者差別・偏見の実態に対して、改めて「一人ひとりの命の重さは障害の有無によって少しも変わることはない」という当たり前の価値観を共有する共生社会を目指すことを強調しています。

第4次障害者基本計画の概要と特徴

障害者基本計画は、平成21年改正の障害者基本法の理念の実現が目的ですが、この21年改正の基盤は権利条約であり、この権利条約が批准されたことから、4次計画では、権利条約の理念を反映させ、次のように条約と計画の整合性を確保したものとされています。

○計画の「基本的な考え方」において、その「基本原則」が権利条約の理念にあることを明示した上で、「各分野に共通する横断的視点」として次の点をあげ、権利条約との整合性が図られています。

1.条約の理念の尊重及び整合性の確保

2.社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティの向上

i)社会のあらゆる場面におけるアクセシビリティ向上の視点の採用

ii)アクセシビリティ向上に資する新技術の利活用の推進

3.当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援

4.障害特性等に配慮したきめ細かい支援

5.障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援

6.PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進

○具体的な取り組みを示した計画の「各分野における障害者施策の基本的な方向」は次のとおりですが、それぞれの各項目で権利条約の条文との対応が示され、整合性が明らかにされています。

1.安心・安全な生活環境の整備

2.情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実

3.防災、防犯等の推進

4.差別の解消、権利擁護の推進及び虐待の防止

5.自立した生活の支援・意思決定支援の推進

6.保健・医療の推進

7.行政等における配慮の充実

8.雇用・就業、経済的自立の支援

9.教育の振興

10.文化芸術活動・スポーツ等の振興

11.国際社会での協力・連携の推進

前記の分野の設定は、第3次計画では「教育」と「文化芸術活動・スポーツ」で1分野とされて全体で10分野でしたが、4次計画では、これが分離して11分野に再編されたほか、意思決定支援や意思疎通支援などの当事者性に着目した方向性が盛り込まれています。

さらに分野の取り上げ方も、第3次計画の分野設定が、生活支援や保健・医療など障害者本人の生活や心身などミクロな視点から始められていたのに対し、4次計画は生活環境、アクセシビリティ、防犯・防災、差別解消など社会の側の取り組みから始められるなど計画の視点が大きく転換しています。

第3次障害者基本計画から何を継承するのか

4次計画を議論する上で、先行する第3次計画の達成状況をどう評価し、そこから何を継承し、何を追加するのかは重要です。第3次計画の期限は平成30年3月末です。まだ完了していないので厳密な評価は難しく、4次計画を検討する障害者政策委員会ではさまざまな意見が出されています。

障害者基本法改正を受けて策定された第3次計画は、障害者総合支援法や障害者差別解消法の成立、精神保健福祉法や障害者雇用促進法の改正など障害者をめぐる制度の大々的な改革期であり、制度改革が出揃った4次計画は、この新たな制度が実質的に機能して、障害者の生活や権利を守るものとして「定着」させ、さまざまな障害者施策が障害者や国民の生活向上や社会発展に寄与するものに「実働」化させることにあると言えます。

特に障害者への差別や虐待など、障害者の人権と尊厳に関わる問題は重要です。

第3次計画は障害者の権利擁護を謳(うた)いながらも、これを否定する事件が相次ぎました。4次計画は、この事実を踏まえて、その軸に障害者の人権と尊厳を据えることが求められています。

むすびに

障害者基本計画などの福祉行政計画は、どのような計画内容かも重要ですが、それをどれだけ達成できるかも重要です。「絵に描いた餅」にしないためにも、その内容をしっかりと理解し、チェックすることが求められます。計画は策定されるまでだけでなく、策定された後も大きな関心を持って取り組む必要があります。

(ひらのまさあき 立教大学コミュニティ福祉学部)