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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

視覚障害者の立場から
~移動と情報支援の整備を~

山口和彦

現在、第4次障害者基本計画の策定が進められている。一口に障害者といってもさまざまな障害があり、社会のなかで安心して生活をするためには、個々の障害特性に配慮した生活環境の整備が必要になる。そこで、視覚障害者の立場から種々の問題の中で、欠かすことのできない点について述べたい。

同行援護制度の充実を

視覚障害者の場合、「移動」と「文字の読み書き」が最大の問題である。最近、視覚障害者のホームからの転落事故が相次いだ。転落事故防止のために、ホームドアの早期設置が求められているが、設置は大がかりの工事になり、時間も工事費も容易ではない。

ハード面の整備だけでなく、視覚障害者の外出を支援するために、平成23年「同行援護制度」が施行された。厚労省調査によると、平成28年度の視覚障害利用者の1か月の平均は24,256人であり、「社会参加」という点から見ると不十分である。

この原因は、視覚障害利用者の給付時間数が少なく、また各地方自治体によって給付時間数の格差が生じている。また、たとえ利用者の給付時間数が確保されたとしても、ガイドヘルパー及びヘルパーを派遣する事業所の不足で利用者のニーズに応えられていない。

ガイドヘルパーを派遣する事業所数は、28年度は6,163か所で、特に地方においては、ガイドヘルパーも事業所も不足している。視覚障害者の場合、高齢化が進んでおり、白杖のみで単独歩行をするにはかなり難しい状況にある。在宅の視覚障害者が安心して社会参加ができるように、同行援護制度と運用面での改善が強く求められる。

コミュニケーション支援の充実を

視覚障害者は「情報障害」といわれるように、情報の収集と発信に困難を生じている。現在、パソコンやスマホなどの機器の改善により音声によるアクセシビリティに配慮した製品が普及してきているが、そうした機器を使えるようになるには、視覚障害利用者に対して指導・訓練が不可欠である。

また、機器の改良に合わせて音声ソフトも刻々と変化する。視覚障害利用者はバージョンアップされた機器や音声ソフトの使用法をその都度学ばなくてはならない。換言すれば、利用者に対して継続的な指導が必要になる。こうした観点から機器の補助や、自宅でも容易に指導訓練が受けられるような対策が講じられることを期待したい。

(やまぐちかずひこ NPO法人TOMO事務局長)