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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

ALS等の難病患者に対する意思疎通支援の充実
―コミュニケーション支援事業を通して見えてきた現状と課題を考える―

本間里美

「ここに来ない患者さん、何も伝わらず、参加できずにいる方にも目を向けるのが次の課題でしょうか」。これは、日本ALS協会が2014年度より日本財団の助成で実施している「ALS等のコミュニケーション支援体制の構築事業」のまとめシンポジウム参加者の声である。情報は正しく周知され、それを必要とする人に届き、その人の一歩に繋(つな)がった時、初めてその役割を果たすと再確認できた声だった。

本事業は、一つの地域に事前調査からフォローアップまで計4回支援イベントを行い、地域の当事者と支援者の繋がりを作るところから始めるが、実に多くの意思疎通支援の現状をみることができた。たとえば、入院時コミュニケーション支援事業は、発話によるコミュニケーションが難しいALS等の難病患者にとって、待ちに待った事業であるが、実際は事業そのものを知らない自治体担当者や専門職も少なくなかった。一方、現場の支援者は皆「なんとかしたい」という気持ちを持ち、共有する機会を求めていた。

そうした中、コミュニケーション支援の普及を促進すると明言する第4次計画は、あくまでも団体レベルであり、全国的なものにするにはまだ時間が必要であると感じていた我々にとって大変心強い。計画に即した対応を、自治体はじめ全地域で実施していけるよう、患者会の立場で今後も取り組んでいきたい。

一方、意思疎通困難者への支援方法は集団での対応や遠隔操作でも可能なものから、当事者の体調管理もしながらマンツーマンでの支援が必要な場合など多岐にわたる。たとえば、ALS患者は、介助者を介して「透明文字盤」や「口文字」という方法で瞬時に気持ちを表わすが、このような読み取りができる支援者の必要性については具体的に明示されていない。こうしたことも踏まえ、個別性に対応した支援策が必要ではないかと考える。

札幌市では平成29年12月1日に「障がい者コミュニケーション条例」が施行されるが、障がい特性に応じたコミュニケーション手段として、「盲ろう」の指点字などと「ALS(難病)」の手法として「口文字」「透明文字盤」の方法が具体的に紹介されている。このような実例が多くの自治体に正しく理解され、本当に必要な情報が必要な人に届くことが意思疎通支援の拡充に向けた一歩になるのではないかと考える。

(ほんまさとみ (一社)日本ALS協会 コミュニケーション支援委員/理学療法士)