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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

情報アクセシビリティの向上及び意思疎通支援の充実

中西久美子

1 障害者差別解消法と意思疎通支援事業

「障害者差別解消法」及び「改正障害者雇用促進法」の施行から1年半が経過しました。聴覚障害者にとって、手話通訳・要約筆記等を含めた情報アクセス・コミュニケーション支援が不可欠です。特に合理的配慮の提供に関し、行政及び民間事業者は、聴覚障害者の社会参加を推進し、教育・医療等、あらゆる生活場面において主に本人の求めに応じて手話通訳者等を配置することが必要です。

2 IT支援と意思疎通支援事業

近年、ICT技術の発展、携帯電話・スマートフォンの普及により、文字やテレビ電話を活用した「電話リレーサービス」と「遠隔手話サービス」が生み出されました。

「電話リレーサービス」とは、聴覚障害者が携帯電話・スマートフォン等を介して代わりに電話をしてもらうサービスです。現在、日本財団による電話リレーサービス事業が試行的に実施され、利用者数が増加しています。しかしサービスの24時間体制化や、聞こえる人への理解啓発などの課題も残されており、国における電話リレーサービスの制度化が急務となっています。

「遠隔手話サービス」はタブレット等を介して手話通訳をしてもらうサービスです。現在、自治体では意思疎通支援事業・手話通訳設置事業において導入が可能となっていますが、相談支援、医療や契約行為など人的支援を必要とする場合は遠隔手話サービスでは限界があります。遠隔手話サービスは手話通訳者設置の代替手段ではなく、補完的な役割を担うものであることを周知していく必要があります。

3 私たちが求める法制度

今後は障害者権利条約に基づき、1.聴覚障害者の基本的人権の保障、2.手話の獲得・習得と使用の保障、3.専門的な手話通訳者の配置と身分保障を実現する手話通訳制度の確立、及びこれらを定めた法律、手話言語法と障害者 情報アクセシビリティ・コミュニケーション保障法の制定が必要です。また、情報アクセシビリティの保障は聴覚障害者だけではなく、聴覚障害者と共により良い社会環境を築いていく人たちにとっても必要なものであり、憲法で保障されている「生存権」に値するものです。これらの法律制定と合わせて、音声中心の社会に起因する情報アクセス・コミュニケーションの困難さが解消されることを期待しています。

(なかにしくみこ 一般財団法人全日本ろうあ連盟理事)