音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

第4次障害者基本計画に向けた政策委員会の意見案
―防災について―

東俊裕

わが国において災害対策の基本をなすのは、災害対策基本法と災害救助法である。このうち、災害対策基本法は、2011年に発生した東日本大震災を受けて改正がなされ、避難行動要支援者名簿の作成が市町村長に義務付けられるとともに、避難所における生活環境の整備等に関する努力義務も課されることになった。この改正は一歩前進ではあった。

しかし、熊本地震では、これらの法律に基づく避難所への誘導支援、避難所(福祉避難所を含む)や応急仮設住宅の提供などの対策は、在宅の障害者にとってほとんど功を奏さず、施行されたはずの差別解消法に基づく行政の合理的配慮の提供義務も超法規的に延期されたような状態で、生活再建に向けた支援も民間ボランティア団体頼みという状況であった。

かかる状況下において、障害者基本計画(第4次)の策定に向けた障害者政策委員会意見(案)は、防災対策の推進については10項目、復興の推進については4項目を掲げるに至った。この14項目は、いずれも一般抽象的には必要な事項である。

しかし、これらの項目のほとんどは平成25年度から29年度までの概(おおむ)ね5年間を対象とした第3次障害者基本計画のコピペであり、わずかに、防災に3項目が追加されたに過ぎない。東日本大震災を踏まえて策定された第3次計画が存在したにもかかわらず、東日本大震災で繰り返された過ちがなぜに熊本地震の際にも同様に繰り返されたのか、その原因の徹底的な究明を踏まえた真摯な議論の上に策定されたものとは到底言いがたい。このままでは、第4次計画も第3次計画同様に画餅に帰すであろう。

災害(Disaster)とは、コントロール不能な自然力による物理現象(Hazard)そのものではなく、社会の脆弱性(vulnerability)と回復力(resilience)という社会の側の要素を通してもたらされる結果であるとされているが、一般の地域社会のもつ脆弱性や回復力と障害者を取り巻く社会のそれとの間には大きな格差があり、この乖離は人権問題として位置づけられるほどのものであるが故に、障害者権利条約は第11条で、締約国に「障害者の保護及び安全を確保するための全ての必要な措置をとる」ことを義務づけているのである。今一度、計画の実効性をどう担保するのか、その実施体制も含めて再考されてしかるべきである。

(ひがしとしひろ 熊本学園大学教授、弁護士)