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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

「自立した生活の支援・意思決定支援の推進」について

岡部耕典

障害者権利条約批准後の最初の障害者基本計画にまず求められるのは、「条約との整合性の確保」であり、「基本計画の実施状況の監視を通じた障害者政策委員会による条約の実施状況の監視の円滑化に資すること」(本計画第1章)である。

自立した生活の支援

権利条約第19条で求められているのは、障害の種別や重度・軽度にかかわらず、すべての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を実現することである。その意味で、人工呼吸器や医療的ケアが必要な重度障害者が地域で生活するために必要な社会的資源の整備が項目化されたことは評価できる。一方、重度知的障害者の地域生活支援としてはグループホームの整備のみが焦点化され、権利条約でも特記されているパーソナルアシスタンスへの言及がない。いまだ地域移行から取り残されている重度知的障害者の地域自立生活の推進を図るために、障害者総合支援法で対象者が拡大された重度訪問介護の積極的な活用も項目化するべきである。

意思決定支援の推進

権利条約第12条は、障害の種別や重度・軽度にかかわらず、すべての障害者が障害のない者と平等な法的能力を享有することを大前提とし、そのために成年後見制度などの法的能力の行使に関連するすべての措置に対してその濫用を防止するための適切かつ効果的なセーフガードをかけることを求めている。しかし、本計画では、後見人が被後見人の法的能力を代理してしまうことを基本とする現行の成年後見制度の見直しには言及せず、あくまで現行制度の「適切な利用の促進」のために意思決定支援を推進することを求めている。権利条約との整合性を確保するために、「利用の促進」ではなく、代理権の廃止を含む「成年後見制度の抜本的な改革」が掲げられるべきである。

なお、委員会の場では現行の成年後見制度を「利用促進」することに対し、委員長を含む複数の委員から条約との整合性を踏まえ疑義が表明されていたが、「委員会意見(案)」には反映されず、その十分な説明も行われていない。

「障害者基本計画の策定又は変更に当たって調査審議や意見具申を行うとともに、計画の実施状況について監視や勧告を行うための機関」(内閣府HP)としての、適正な運営が求められている。

(おかべこうすけ 早稲田大学教授)